ツイスター 70点
2024年8月11日 Amazon Primeにて鑑賞
出演:ヘレン・ハント ビル・パクストン フィリップ・シーモア・ホフマン
監督:ヤン・デ・ボン
これは多分、高1の夏休みに父親と一緒に(旧)岡山メルパで観たような記憶がある。が、話の中身はほとんど忘れていたので『 ツイスターズ 』の前に復習鑑賞。
あらすじ
竜巻チェイサーのジョー(ヘレン・ハント)は、元夫のビル(ビル・パクストン)に離婚届けに直ちにサインしてくれと頼まれる。だがジョーに竜巻観測機のドロシーを見せられたジョーは、一日だけ彼女の竜巻観測に付き添うことになり・・・
ポジティブ・サイド
かつて大谷の所属チーム・LAエンゼルスの主砲、マイク・トラウトの趣味が気象観測、特に竜巻観測であることを知っている野球ファンは多いことと思う。本作はそうした竜巻チェイサーの物語。単なる好事家ではなく、竜巻を現地で直に観測し、いち早く注意報や警報を出すという使命感で動く人々のストーリーでもある。
竜巻の内側から観測するセンサーの名前がドロシーという点にニヤリ。言わずと知れた『 オズの魔法使 』へのオマージュ。それを飛ばしてデータを受け取るというアイデアは、パソコンや携帯電話が爆発的に普及し始める時代の前夜の脚本としては非常に先見の明があったと言える。
とにかく行く先々で竜巻が発生し、ジョーとビルとその仲間たちが狂喜乱舞して突っ込んでいく。あるいは必死に地下に逃げ込む。その繰り返し。常識人のメリッサの ”You are all crazy, and she is the craziest of all!” という悲痛な叫びは決して届かない。『 エイリアン 』のキャッチコピー、”In space, no one hears you scream” ならぬ “In tornadoes, no one hears you scream” である。
車にトラックに牛までが飛ばされるが、そうしたCGも迫力満点。本物らしくないという批判はまっとうだが、竜巻を間近で観たことがある人がどれほどいるのか。これこそ作家の想像力がものを言うところ。現代(2020年代)でも『 デス・ストーム 』のように竜巻ものは製作されているが、そうした作品のCGと比べてもまったく見劣りはしていない(『 デス・ストーム 』が人間ドラマに寄せすぎなのもあるが)。
劇中での『 シャイニング 』の使い方も絶妙だ。同作で最も有名なシーンであるジャック・ニコルソンが斧で扉を破壊するシーンは、まさに迫りくる竜巻そのもの。こんな怪物に立ち向かっても仕方ない。しかし観測はできる。人に可能な範囲で最善を尽くそうとするジョーとビルの奮闘っぷりには素直に頭が下がる。1990年代は『 アルマゲドン 』や『 ボルケーノ 』のように、天変地異に立ち向かうヒーロー映画が多かったが、本作もそうした系譜に連なる映画。一般人でもヒーローになれるという幻想を与えてくれる、良くも悪くも9.11以前の映画だった。
ネガティブ・サイド
ベトナム戦争やら湾岸戦争を経て、PTSDに対する社会的な理解も浸透していたはずの1990年代とは思えない言動をビルがジョーに対して繰り返す様には正直辟易した。フェミニズムがハリウッドに浸透していない時代とはいえ、トラウマに対して「忘れろ!」は禁句だろう。
ドロシーを飛ばす手順がめちゃくちゃ。JovianもICT系の部署に異動になり、外部の業者との連携や情報共有が生じるようになったが、エンジニアという人種は作ることばかり考えて、運用することを考えない。そうした日々のちょっとしたフラストレーションが本作を観て増幅してしまった。ドロシーを本当に飛ばしたいなら凧、あるいは風船を使え。
最後の最後のシーンも、うーむ。普通にデブリが飛んできて負傷の一つや二つは負わないと不自然だが・・・
総評
色々と突っ込みどころはありつつも、テンポの良いストーリーとシンプルな人間関係で魅せる。日本でも竜巻が発生するようになってしまったが、その注意報や警報は誰かが出してくれている、誰かの発明品によって支えられているということを頭の片隅に置いておこう。なにかと叩かれる本邦の気象庁であるが、本当はもっとリスペクトされるべき団体であると思う。本作を観てそう感じた次第である。
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
bite one’s head off
(人に)食ってかかる、の意。夫婦喧嘩は犬も食わぬと言うが、それは往々にして一方が他方に、あるいは互いが互いに食ってかかるからに違いない。あまり自分から使う表現ではないが、これを使えるということは英語ネイティブの親友もしくは配偶者がいるということだろう。
次に劇場鑑賞したい映画
『 ツイスターズ 』
『 先生の白い嘘 』
『 新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる! 』
現在、【英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー】に徐々に引っ越し中です。こちらのサイトの更新をストップすることは当面はありません。
I am now slowly phasing over to https://jovianreviews.com. This site will continue to be updated on a regular basis for the time being.