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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: スーザン・サランドン

『 テルマ&ルイーズ 』 -抑圧された女性の絆とロードトリップ-

Posted on 2020年5月24日2020年9月26日 by cool-jupiter

テルマ&ルイーズ 85点
2020年5月23日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:ジーナ・デイビス スーザン・サランドン
監督:リドリー・スコット

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200524004143j:plain
 

確か中学生ぐらいの時に親父がVHSを買っていたように思う。自分では観なかったが。テレビドラマ『 リゾーリ&アイルズ 』のとあるエピソードで、アイルズ先生がリゾーリの自宅に「一緒に観よう」と持ってきたのが本作。そこで興味を持った。自粛ムードを吹っ飛ばすにはちょうど良いと思い、兵庫県から大阪府へ(といっても直線距離で8kmほど)。

 

あらすじ

専業主婦のテルマ(ジーナ・デイビス)とウェイトレスのルイーズ(スーザン・サランドン)は週末の旅行に出かける。日頃、夫によって抑圧されていたテルマは、立ち寄ったバーで男性と意気投合し、酒とダンスに興じる。だが、レイプされそうになったところをルイーズに救われる。ルイーズはしかし、侮辱的な言葉を発する男を射殺してしまう。テルマとルイーズの二人は逃げるしかなくなり・・・

 

ポジティブ・サイド

『 運び屋 』や『 グリーンブック 』、『 ダンス ウィズ ミー 』のように、ロードムービーは定期的に生み出されている。その中でも本作は白眉である。抑圧から解放がある一方で、解放された先に抑圧がある。物語の進行やキャラクターの造形がひと通りではない。

 

シネマグラフィーも素晴らしい。薄暗いダイナー、そして薄暗い室内、そして全体的に日照の少ない街並みから始まって、アメリカ中西部から南西部にかけてロードトリップに出るのだが、ストーリーが進行するほどに画面にどんどんと色が出てくる。だが、ある時からその色が黄色の砂と赤茶けた岩の色に塗りつぶされていく。それはテルマとルイーズの二人のキャラクターが内面的に変化していく様と不思議なコントラストを成している。人間的に成長したくましくなっていく、あるいはクールに見えた人間が狼狽え、取り乱していく。そうしたキャラクターの心情が画面の色使いで伝わってくる。CM監督出身の巨匠リドリー・スコットらしい手腕である。

 

そのリドリー・スコットの投げかけてくるメッセージは明確である。弱者を虐げるな、ということである。テルマもルイーズも悪くない。悪いのは、テルマをレイプしようとしたハーランであるし、彼女の話をまともに聞こうともせず、浮気には精を出す夫である。ルイーズも男には恵まれているように見せて、そうではない。明確には明かされないが、悲しい過去がある。『 ジョーカー 』でも感じたことだが、弱者を踏みつけてはならない。弱者とは持たざる者である。失うものがない者は恐れるものがない。恐れるものがない者は、一線を越えてしまってもおかしくない。リドリー・スコットというと『 エイリアン 』や『 ブレードランナー 』のようにSFのイメージが強い。しかしその実態は、抑圧された環境下での人間の変化だったのではないだろうか。

 

テルマとルイーズが行く先々で罪を犯していく。本来ならば陰鬱な逃避行のはずが、爽快感が感じられるのは何故か。それは人間の本性がむき出しになっていくからだ。ルイーズは恐ろしい剣幕で「テキサスには行くな」とテルマに迫る。テルマはルイーズに「警察と取引したのか」と食ってかかる。共犯として協力し合わなければならない二人の間にすら緊張が走る瞬間がある。それすらも爽快なのだ。なぜそうなのか。それは劇場または自宅で観て、ぜひとも確かめてみてほしい。

 

ネガティブ・サイド

マイケル・マドセン演じるジミーが、とにかく男の中の男である。ルイーズに「警察には何もしゃべらないで」と頼まれて、実際に何もしゃべらなかったと推測されるのだが、そのシーンが欲しかった。テルマの夫のダリルのクソっぷりと対比させることはできなかったのだろうか。数少ない、魅力ある男性キャラだったのだが。

 

二人を追う刑事ハルも味のあるキャラだったが、その描写が少々弱い。ブラピ演じるJDと取調室で二人だけになるシーンでは、連れの刑事の「ヒューッ」という口笛から何らかの惨劇が予想されたが、いくらなんでも生ぬるすぎる。あの程度の責めでブラピが急に語尾に sir をつけて話すようになるとは考えづらい。この叩き上げの刑事をもう少し掘り下げてほしかった。

 

逃避行の発端となった酒場の女性従業員のような、二人の協力者となるような女性サブキャラがもう少しいれば良かったのにとも思う。何らかの事情を察した女性が、テルマとルイーズの逃避行を、陰ながらサポートすると演出もあってよかったのではないか。トランクに閉じ込められた警察官にタバコの煙を吹きかけてやるという演出も悪くはなかったが、より better な演出はもっといくらでもあったはずである。

 

総評

ロードムービーにしてアメリカン・ニューシネマの傑作である。80~90年代のヒットソングでHans Zimmerの音楽と鮮やかな色遣い溢れる画面とが相まって、芸術的とさえ言える美しさも備えている。道なき道を爆走するテルマとルイーズの姿に心を動かされない人がいようか。現代にも通じるメッセージが明確に込められており、そしてそれは未来へもつなげていくべきメッセージである。このような映画こそ、次世代に残していきたいし、映画館でリバイバル上映をもっと盛んに行ってほしいと思う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

figure out

フィギュア・スケートのフィギュアの主な意味は、「形」や「数字」である。つまり、figure outとは、形や数字として出す、という意味である。figure out a mystery=謎を解く、figure out what to do=どうすべきを考える、という具合に使う。

 

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200524004122j:plain

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1990年代, A Rank, アメリカ, クライムドラマ, ジーナ・デイビス, スーザン・サランドン, ブラッド・ピット, 監督:リドリー・スコットLeave a Comment on 『 テルマ&ルイーズ 』 -抑圧された女性の絆とロードトリップ-

『 アバウト・レイ 16歳の決断 』 -Being born into the wrong body-

Posted on 2019年8月1日2020年5月23日 by cool-jupiter

アバウト・レイ 16歳の決断 70点
2019年7月26日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:エル・ファニング ナオミ・ワッツ スーザン・サランドン
監督:ゲイビー・デラル

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LGBTは、おそらく人類誕生の昔から存在していた。“生産性が低い”とどこかの島国のアホな政治家が主張する彼ら彼女らが、歴史を通じて存在してきたのは何故か。それには諸説ある。日本でも、江戸川乱歩の傑作長編『 孤島の鬼 』などは歴史に敵に新しい方で、安土桃山時代の織田信長や、室町初期の足利義満、またはそれ以上にまで遡る歴史がある。近年、LGBTをテーマにした作品が数多く生産されている。メジャーなものでは『 ボヘミアン・ラプソディ 』、マイナーなものでは『 サタデーナイト・チャーチ 夢を歌う場所 』など。本作は諸事情あって公開が延期されるなどした作品であるが、それもまた時代であり世相であろう。

 

あらすじ

レイ(エル・ファニング)はトランスジェンダー。生物学的には女性だが、精神的には男性、そして肉体的にも男性として生きたいと強く願っている。しかし、未成年のレイがホルモン療法を受けるには、両親の同意が必要。母マギー(ナオミ・ワッツ)は悩んだ末に、レイをサポートすることを決断する。そのために、レイの父、自らの元夫の協力と理解を得ようとするが・・・

 

ポジティブ・サイド

エル・ファニングが好演している。おそらく、この撮影前であれば、肉体的な成熟具合が不十分であるため、男性的な肉体を欲するようになる動機が弱くなる。これよりも後のタイミングで撮影するとなると、完全に女性になってしまい、中性さが失われる。つまり、決断の遅さが目立ってしまい、観る側の共感を得ることが困難になる。公開が遅れたことは残念であるが。それゆえに『 孤独なふりした世界で 』との距離感、つまり中性性と女性性の差が際立つ。つまり、ベストタイミングでの撮影だったわけである。とても年頃の女の子とは思えない、大股開きでの座り方。男子との取っ組み合いのけんかの後に、気になる女子に「女を殴るなんて、あいつらサイテー」と言われた時の複雑な表情。胸の膨らみをサラシで隠し、ダボダボの服で身体の曲線を目立たなくさせ、生理が止まると医者に説明を受けた時には心底嬉しそうに笑う。エル・ファニングのキャリア屈指のパフォーマンスではないだろうか。But as for her career, the best is yet to come!

 

女三世代で暮らす中には緊張が走る瞬間や女性特有の人間関係、B’zの『 恋心 ~KOI-GOKORO~ 』が言うところの「女の連帯感」を感じさせる場面もある。祖母ちゃんが立派なゲイで、彼女とパートナーの間には、家族といえども入り込めない空気が存在するのである。だが、そこに冷たさはない。自分の信じる道、生きると決めた道を行く姿勢を見せることが、レイの生き方をexemplifyすることになるからだ。三世代それぞれに異なる女性像を描くことで、単なる家族の物語以上の意味が付与されている。

 

それにしてもナオミ・ワッツの脆さと強さ、健気さと不完全さを同居させる演技はどうだ。日本では篠原涼子、アメリカではジュリア・ロバーツらがタフな母親を演じ、好評を博しているが、それもこれもナオミ・ワッツのようなactressがバランスをとってくれているからだろう。

 

ネガティブ・サイド

ストーリーの一番の肝である、父親からホルモン療法の同意書を得るというミッションをこれ見よがしに引き延ばすのはよろしくない。すれっからしの映画ファンならずとも。この筋道は簡単に読めてしまう。

 

レイが地域や学校で苦悩する姿の描写が足りなかった。例えば、ゲイならばパートナーを見つけることができれば、それが自身の幸福にも相手の幸福にもつながる。しかし、トランスジェンダーというのは、自分自身の身体と精神が折り合えないところに辛さがある。パートナーを見つけることが問題解決になるわけではない。自分が自分を見るように、他人が自分を見れくれない。だからこそ、自分の身体を変えて、新しいコミュニティで新しい生活を始めたいという、レイの切なる気持ちを見る側が素直に共感できるような描写がもっと欲しかったと思う。

 

総評

ライトではなく、しかし、シリアスになりすぎないLGBTの物語、そして家族の別離と再生の物語である。日本で誰かリメイクしてくれないだろうか。こういったストーリーは現代日本にこそ求められているはずだ。その時は行定勲監督で製作してもらいたい。日本映画界でも出来るはずだし、やるべきだろう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アメリカ, エル・ファニング, スーザン・サランドン, ナオミ・ワッツ, ヒューマンドラマ, 監督:ゲイビー・デラル, 配給会社:ファントム・フィルムLeave a Comment on 『 アバウト・レイ 16歳の決断 』 -Being born into the wrong body-

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