オズ はじまりの戦い 60点
2020年8月15日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ジェームズ・フランコ ミラ・クニス レイチェル・ワイズ ミシェル・ウィリアムズ
監督:サム・ライミ
『 オズの魔法使 』の前日譚。オズがいかにして大魔法使いとして、エメラルド・シティーに君臨するようになったのかを描いている。色々と不満な点もあるが、前日譚としては及第点である。
あらすじ
「偉大なる男」になることを夢見るカンザスの手品師オズ(ジェームズ・フランコ)は、気球事竜巻に飛ばされてオズの国へとたどり着く。そこではオズという名の魔法使いの到来が予言されていた。大魔法使いだと勘違いされたオズは、東の魔女エヴァノラ(ミラ・クニス)に、邪悪な魔女を倒してほしいと頼まれてしまい・・・
ポジティブ・サイド
あちらこちらに『 オズの魔法使 』へのオマージュが見られる。カンザスはモノトーン、オズの国はカラーというのもそうであるし、カンザスにいる人物、たとえばオズの助手の男性が、オズでは従者の猿になり、車イスの少女が、脚の壊れた陶器の少女になるところもそうだ。ブリキ男やかかし、ライオンにもつながる伏線もある。サム・ライミ監督によるこうしたリスペクト溢れる演出を歓迎したい。
ジェームズ・フランコは『 スプリング・ブレイカーズ 』でも感じたことだが、ダメ男や詐欺師を演じることで本領を発揮できるのではないか。はっきり言って序盤から中盤にかけてのオズは全くいけ好かない男なのであるが、それが徐々に変わっていき、なおかつダメさ加減も適度に残す終盤のオズは、なかなか演じられる役者はいないだろう。
ミラ・クニスも西の魔女を怪演。口角の上げ下げや眉間にしわをキープする顔面の演技がマーガレット・ハミルトンへのリスペクトであることは明らか。細長い顔のハミルトンと丸っこい顔をクニスでは、そもそもミスキャストだったのではないかと思うが、それを乗り越える熱演を見せる。あのキンキン響く笑い声にも、ノスタルジアを感じた。
終盤のオズと西の悪い魔女セオドラとの対決シーンは一大スペクタクルである。オリジナル作品へのリスペクトと、20世紀初頭という時代背景、そして映画という媒体のすべてを一つにまとめた圧巻のクライマックスである。江戸川乱歩が『 魔人ゴング 』で描いた空中に浮かぶ巨大な顔と笑い声というのは、きっとこういうものなのだろう。大乱歩は英語にも堪能だったので、原作の児童文学を読んで、魔人ゴングを構想したのではないかとすら思えた。この巨大な映像と音響に圧倒される魔女や民衆の姿は、そのまま映画という技術に圧倒的な感動を覚えた20世紀前半の人類の姿であり、映画ファンの原型=archetypeなのではあるまいか。
全編通じて『 オズの魔法使 』へのオマージュとリスペクトが溢れる作品である。
ネガティブ・サイド
細かい部分の粗が目立つ作品である。竜巻の中で気球のゴンドラには鋭利な破片が次々と突き刺さる。だが、オズの国の川に不時着したゴンドラには水が一切浸水しない。また、川の妖精にしこたま噛みつかれたオズのズボンに、ほつれ一つないのは何故なのか。CG処理による弊害が如実に出ている。
そのCGの濫用が随所で目立つ。グリンダのシャボン玉はまだ許せる。だが、遠景ならともかく、1~2メートル先の背景すらCGで描いてしまうのはどうなのか。オズの国が実在するのか、それともすべてはドロシーが頭を打った拍子に見た夢なのか。これは今でも議論になるところである。Jovianは夢派であるが、だからといってオズの国の実在は否定しない。エジプトに行ったことがない人間でも、伝聞を基にエジプトの夢を見ることは可能だからだ。本作はオズの国を実在するものとして描いている。であるならば、もっとオーガニックに、オズの国をあれやこれやを実際に手で触れることができるものとして描いて欲しかった。『 シンデレラ 』や『 美女と野獣 』と違い、カンザスやオズという固有名詞で土地を描くからには、その土地の実在性や迫真性をしっかりと担保せねばならないと思う。そして、その手段はCGであるべきではない。クライマックスこそ、ある意味ではCGの先駆的な表現形態であり、そこに至るまでにふんだんにCGを使ってしまうのは逆効果であると感じる。
総評
ミュージカルの『 ウィキッド 』とは一味違う解釈で西の悪い魔女の誕生を描いている点が、賛否の分かれるところかもしれない。だが、本作の解釈と描写もそれなりに納得ができるものであるし、終盤のカタルシスも悪くない。レンタルや配信で視聴する前に『 オズの魔法使 』の事前・復習鑑賞は忘れずに。
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
(all) rolled into one
センテンスの最後にくっつけて、「すべてが一つにまとまった物/人である」という意味になる。使い方は以下のようになる。
He is a lawyer and an entrepreneur rolled into one.
彼は弁護士かつ起業家でもある人物だ。
She is a singer, a composer and an actress all rolled into one.
彼女は歌手、作曲家、そして女優をも兼ね備えた人物だ。
Learning a foreign language is a pastime, an education, an investment, and an adventure all rolled into one.
外国語を学ぶことは、気晴らし、教育、投資、冒険のすべてが一つになったことである。
列挙する事柄が3つ以上になったら、allをつけるようにしよう。