やっぱり契約破棄していいですか!? 70点
2019年9月23日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:アナイリン・バーナード トム・ウィルキンソン フレイア・メーバー
監督:トム・エドモンズ
嫁さんが、「これを観るんや」と、決めたから、秋分の日は、シネ・リーブルへ
うむ、秋になると一句詠みたくなる。会心の駄作ができた。
あらすじ
小説家を志すウィリアム(アナイリン・バーナード)は、全く芽が出ない自分に嫌気が差し、自殺を試みること幾数度。全て失敗に終わった。ある時、橋から飛び降りようとする時に、殺し屋レスリー(トム・ウィルキンソン)に声をかけられる。飛び降りが失敗に終わったウィリアムはレスリーに自分の殺しを依頼する。だが、出版社のエミリー(フレイア・メーバー)から出版のオファーが入る。ウィリアムスはながらうべきか、死すべきか・・・
ポジティブ・サイド
まず自殺未遂7回というところからして面白い。イギリスの八切止夫である。違うのは、八切はゲイで、ウィリアムはストレートというところ。だが、どちらもペシミストであることに変わりはない。
漫画『 沈黙の艦隊 』でライズ保険のエグゼクティブが「イギリスでは物事を決めるのはランチタイムと決まっている」とクールに言い放つシーンがあるが、本作もその通りに、ウィリアムはランチタイムにレスリーに自身の殺しを依頼する。そのオプションも笑えるし、レスリーが属する殺し屋のギルドの在り方も笑えてしまう。まるで、赤帽か何かの組合のようだ。
いったんレスリーが仕事にかかると、この好々爺は確かに凄腕の殺し屋であることが分かる。そして、殺人という職務に忠実で誇りすら感じているプロフェッショナルであることも分かる。まるで、漫画『 HUNTER×HUNTER 』でコムギを誤爆してしまったゼノのようである。つまり、それぐらい凄みを感じさせるということである。
主演のアナイリン・バーナードは、どこかイライジャ・ウッドを思わせる英国産アクターで、気弱な男よりも悪役が似合いそうに思う。ハリウッドのB級アクション映画で、ブリティッシュ・イングリッシュを喋るヴィランとして出て来て欲しい。
ヒロインのフレイア・メーバーは、絶世の美女というわけではない(失礼!)が、街中で見かけたら、目の保養にしてしまいそうである。シネ・リーブル梅田で上映していた『 モダンライフ・イズ・ラビッシュ ロンドンの泣き虫ギタリスト 』はスルーしてしまったが、DVDはいつかチェックしてみたい。リリー・ジェームズともキーラ・ナイトレイとも違う、正統派英国美女である。
だが、本作で最も光っているのはレスリーの妻だろう。長年連れ添った夫に愛情を注ぎ、夫の退職を甲斐甲斐しく祝おうとし、そして殺し屋の妻としての胆力も兼ね備えている。嫁にするならば、このような女性である。このような妻を持てた男は果報者である。レスリーに幸あれ。そしてウィリアムにも幸あれ。
ネガティブ・サイド
殺し屋ギルドが当初はジョークとして機能していたが、ストーリーが進むにつれて、笑うに笑えない組織になってきた。ビジネスとしての殺しと、ビジネスとは無関係の殺しを峻別するのは、殺し屋本人の葛藤に任せて。組織としては粛々と失敗したものを粛清あるいは強制引退させればよかった。そうでなければ、暗殺者の集団をまとめ上げられないだろう。
ラストシーンに、もう少し捻りを効かせることはできなかったのだろうか。せっかくのコメディックなシーンなのに、笑うに笑えない終わり方である。元々、このシーンはフレイア・メーバー不在だったからである。彼女がその場にいることで、このエンディング・シークエンスがもっと悲劇的に、もしくは喜劇的にならなければならなかった。ただ、彼女がその場にいるだけで終わってしまったのは、何とも anticlimactic だった。
総評
本作はBGMの面でも光っている。エドガー・ライトのように音楽をして語らしめるのが、この監督の手腕なのだろう。秀逸なブラック・コメディであり、ライトなラブロマンスでもあり、お仕事ムービーでもある。ブラック・コメディ好きなら、観ても決して損はしない。保証する。
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
Tell me about it.
直訳すれば、「それについて教えて」であるが、実際の意味は正反対で、「言われなくても知ってるよ」である。ネイティブにしか通じない表現なので、グローバル・イングリッシュを使う人は注意が必要かもしれない。