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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 青春

『 四畳半タイムマシンブルース 』 -Back to the 四畳半-

Posted on 2022年10月2日 by cool-jupiter

四畳半タイムマシンブルース 75点
2022年10月1日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:浅沼晋太郎 坂本真綾 吉野裕行
監督:夏目真悟

戯曲『 サマータイムマシン・ブルース 』を、そのまま『 四畳半神話大系 』のキャラクターで再構築。見事なスピンオフ作品に仕上がっている。

 

あらすじ

「私」(浅沼晋太郎)のエアコンのリモコンが、悪友・小津(吉野裕行)によって壊されてしまった。これにより部屋は灼熱地獄に。映画サークルの明石さん(坂本真綾)が撮影に邁進するなか、アパートの下鴨幽水荘からどういうわけかタイムマシンが見つかる。これで一日前に戻って、壊れる前のリモコンを持って帰ってくれば、と一同は考えて・・・

ポジティブ・サイド

四畳半主義者および四畳半世界をビジュアル化するにあたって、しっかりと湯浅政明のテイストを受け継いでくれている。奇妙な色彩の使い方と、「私」の青春そのままのようなくすんだ灰色とが織り成すコントラストは、それだけで観る者を癒やす。

 

キャラの中身も恋、いや濃い。10年以上ぶりに浅沼晋太郎が「私」を演じるが、まさに森見登美彦風のダメダメ大学生をそのまま演じている。この「私」のまるで成長していない加減が絶妙で、おっさんは自らの青春時代を回顧せざるを得ない。肉体的な鍛錬や学問的な精進から逃避するのみならず、恋からも逃げまくる。いや、追いかけまくる。この情けなさに笑いと涙の両方が喚起される。

 

悪友・小津と「私」の「セクシャルな営み」も映像化してみると面白いし、それをクールに眺める明石さんも美しい。いつもの四畳半の面々が、ふとしたことから手に入れるタイムマシンを使って、ドタバタ劇を繰り広げる。タイムトラベルものはシリアス路線かコメディ路線に行くのが常で、本作はもちろんコメディ。行き先が一日前なのだから、これほどスケールの小さいタイムトラベルは珍しい。しかし京都市の片隅だけの限られた人間関係の中で過去改変を阻止せねばならないという独自のシチュエーションは、笑いだけではなくハラハラドキドキ感も生み出している。

 

明石さんを追いかける「私」を追いかける「私」と小津という構図にはドキドキしながらも、笑うしかない。これも活字とは異なり映像で観ることで独特のユーモアと緊張感が生まれている。昨日と今日だけのタイムトラベルかと見せかけて、ストーリーは突如大規模に展開していく。そこで序盤からの数々の伏線が鮮やかに回収されていく。タイムトラベルものの王道で、実に清々しい。

 

京大に落ちてICUに行き、木造のボロボロ男子寮(ヴォーリズ建築!)で怠惰な四年間を過ごした身としては、下鴨幽水荘=男子寮に感じられてしまう。タイムマシンはおそらく理論上でしか存在できないが、思い出というタイムカプセルは誰でも持つことができる。未来は自らで切り拓くもの。そしてその未来が、いつか美しい思い出になる。

ネガティブ・サイド

森見登美彦の小説版『 四畳半タイムマシンブルース 』と少々異なるところがいくつかある。序盤で「私」が裸踊りをする直前の明石さんの「本当にやるんですか?」はもっと色っぽい雰囲気だったはず。他にも小説版との違うなと感じられるところがちらほら。まあ、このへんは森見登美彦と上田誠、どちらの波長が自分に近いかということだと思うが。

 

田村の行動が、「私」たちが必死に阻止しようとした過去改変の原理をあっさりと破っているところだけは気になった。これもタイムトラベルもののお約束か。

 

総評

梅田ブルク7は老若男女で9割の入りだった。森見登美彦の fanbase 恐るべし。仮にこれが何の話か分からなくても、ぜひ高校生や大学生にはデートムービーとして劇場鑑賞してほしい。本作から小説やアニメの『 四畳半神話大系 』や『 バック・トゥ・ザ・フューチャー 』を知って、それらにも触れてほしい。究極的にはゲーテの『 ファウスト 』にまでたどり着いてほしいと思う。今目の前にある「時」を誠実に生きること。若い人ほど、それを実践してほしいと思う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

space-time 

「時空」の意。SF小説やSF映画では頻繁に出てくる表現。英語の順番どおりに訳せば空時となるが、これでは少々おさまりが悪い。ちなみに space = 宇宙の意味もあるが、古代中国語では 宇=空間、宙=時間だったとされる。言葉は違っても、概念・観念レベルでは人間はだいたい同じなのかもしれない。 

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, B Rank, アニメ, 吉野裕行, 坂本真綾, 日本, 浅沼晋太郎, 監督:夏目真悟, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:アスミック・エース, 青春Leave a Comment on 『 四畳半タイムマシンブルース 』 -Back to the 四畳半-

『 岸和田少年愚連隊 岸和田少年野球団 』 -Take me out to the ballgame-

Posted on 2022年9月19日 by cool-jupiter

岸和田少年愚連隊 岸和田少年野球団 70点
2022年9月19日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:遠藤章造 長田融季 小野浩史 辻󠄀本賢人
監督:渡辺武

『 岸和田少年愚連隊 望郷 』と主要キャストは同じ。しかし、今度は野球。それもそれで一つの青春の形か。

 

あらすじ

ガス(遠藤章造)は新聞記事で、かつて一緒に野球をした友人・隆二(辻󠄀本賢人)が飛行機事故で死亡したことを知る。ガスは少年時代にやっていた野球を思い出し、思い出の品である青いグローブを手に、隆二と過ごした日々を回想する・・・

 

ポジティブ・サイド

前作で竹中直人演じる親父が出ていったところから始まっている。世界観を共有する作品というものは良いものである。

 

今回の主役はガス。リイチでもユウジでも小鉄でもなく、ガスが主人公。少年時代を演じる小野浩史のガスの再現度が素晴らしく高く、まさに岸和田のガキンチョという感じである。野球が下手くそな演技も堂に入っているし、ケンカのシーンの迫力もある。これはなかなか良かった。前作は『 岸和田少年愚連隊 』や『 岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇 』では中学生あるいはそれ以後を大人の芸人が演じていて、それゆえに極端なケンカのシーンも演じることができた。『 望郷 』はそのあたりの描写が竹中直人以外は弱く、子ども同士のケンカ描写はなし。気付けばリイチの顔面に傷ができているばかりだった。

 

本作のケンカの見せ場は大きく二つ。一つはガスが隆二のグローブを盗んだサダ軍団の一員を叩きのめすシーン。もう一つは、試合中の大乱闘。子ども同士のケンカを俯瞰の映像で捉えたりすると、小競り合いにすらなっていないものも多い。本作はそこをかなり踏み込んで、本当に1970年当時の岸和田の悪ガキどものケンカの光景にリアリティを与えている。

 

今の若い世代には意味不明かもしれないが、カズ山本が小学生役で出てきているのは何度見ても笑ってしまう。近鉄戦士だというところが大阪人にとってはたまらないだろうし、また一つの大きなノスタルジーを感じるポイントにもなっている。

 

また隆二=辻󠄀本賢人で、若い世代はこれまた知らないだろうが、15歳にして阪神タイガースに入団した期待の星だった。当時は結構騒がれていた、少なくとも阪神ファンの間では。Jovianは星野仙一の阪神監督就任でファンを解脱して、ロッテファンになったのだ、もしも辻󠄀本が現在の佐々木朗希のようにロッテに入団していれば、そして吉井理人のような理論派のコーチと出会えていれば・・・と、一瞬だけ想像してしまった。栴檀は双葉より芳し。こんな小さな体で、それなりの球が投げられていたのだから、阪神球団はしっかりと育て上げるべきだった。

 

アホな大人に翻弄される子どもたちの物語だが、そのメッセージは「変わらないでいることが嬉しいこともある」ということ。岸和田少年愚連隊は、作品によって人物やエピソードは違えど、色褪せることのないアホな青春の思い出の物語。ほっぺたに強烈ビンタを食らわされた女子と、何故か付き合っていたりする。フィクションだけれどもリアル。今でも昭和のままな街区が残る尼崎市民は、本シリーズがとても愛おしい。

 

ネガティブ・サイド

さすがに子どもを使っての賭博はないわ。作品自体の瑕疵というより、これを観る自分の視点が大人になってしまったんやろうね。維新のIR構想も気に入らんし。『 岸和田少年愚連隊 』の卒業式で塩見三省がチュンバたちを次から次に張り倒していったのは、教育者としての複雑な思いの表れとしてある程度は共感できたが、子どもを使って大人が金儲けするのはアカンわ。

 

安西ひろこのエセ関西弁も耳障り。鈴木紗理奈みたいなコテコテの大阪人をキャスティングせんかいな。

 

エアガン使うジジイもなあ・・・子どもが拳あるいはバットで戦ってるのに、大人が銃器とは・・・ 悪魔のコスプレもくだらなかった。

 

総評

野球映画は結構たくさん作られてきたが、これはその中でも異色の作品。非常に淡い男の友情が心地よい。小学生や中学生の頃は、友達と過ごす時間が本当にかけがえのないものだった。そのことを思い出させてくれる。変わらないでいてくれることが嬉しい。そう言ってくれる、あるいはそう伝えられる友人が自分には何人いるだろうか。自分は誰かの中で美しい思い出になれているのだろうか。そんなノスタルジックな気持ちにさせてくれる作品だ。

 

Jovian先生のワンポイントラテン語レッスン

Mens sana in corpore sano

(古典ラテン語なら)メーンス・サーナー・イン・コㇽポレ・サーノーと読む。mens = mind、sana = sane または sound、in の後ろの corpore は奪格なので、この in はそのまま英語でも in = 中に、の意。sano は corpora が中性なので、それに合わせて中性・奪格になっている。全体の意味は A healty mind in a healthy body である。健全な肉体に健全な精神が宿れかし、というのが定番の日本語訳。mens = mind から「dementia って、だから認知症なのか?」と思えた人は、英語学習の上級者である。 

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2000年代, B Rank, 小野浩史, 日本, 監督:渡辺武, 辻󠄀本賢人, 遠藤章造, 配給会社:ドラゴン・フィルム=セディックインターナショナル, 長田融季, 青春Leave a Comment on 『 岸和田少年愚連隊 岸和田少年野球団 』 -Take me out to the ballgame-

『 岸和田少年愚連隊 望郷 』 -1969年の日本の片隅-

Posted on 2022年9月18日 by cool-jupiter

岸和田少年愚連隊 望郷 70点
2022年9月16日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:長田融季 竹中直人 烏丸せつこ 高岡早紀 
監督:三池崇史

これもノスタルジーに駆られて再鑑賞。しかし、現代の目で見ると、相当に違和感を覚える描写が多数。時代が確実に移り変わっている。

 

あらすじ

岸和田の少年、リイチ(長田融季)の名前の由来は麻雀のリーチ。粗野で豪放な父・俊夫(竹中直人)がつけたもの。立派な悪童に育ったリイチだが、ある時、父がストリッパーを家に連れて帰ってきてしまい、愛想を尽かした母は家を出てしまう。寄る辺ないリイチは担任の伊藤先生(高岡早紀)のもとを訪ねるが・・・

 

ポジティブ・サイド

今回のリイチは小学生。長田融季が悪童の雰囲気をしっかり醸し出している。第二次性徴期前の少年と男の境目という、この時にしか撮れない作品が撮れたという印象。父に歯向かいたくても歯向かえない。母に甘えたくても甘えられない。そうした難しい年頃の男子を、まさに難しい年頃の男子が演じただけではない。本人の役の理解や監督の演出もあって、岸和田少年リイチとして説得力のあるキャラクター像を打ち出せていた。

 

竹中直人が粗暴で下品な父親役を好演した。関東人のはずなのに、ネイティブ南大阪人と見紛う芝居で、役への没入感が素晴らしかった。このダメ親父自身が、自分の父親、リイチの祖父と絶妙な距離感を保っていて、時を経るごとに変化する父と息子の関係と時を経ても変化しない父と息子の関係を、時にシリアスに、時にユーモラスに見せる。これは脚本と演出の勝利だろう。

 

いつものリョーコに当たる人物が、今回は小学校の担任。それを高岡早紀(若い!)が魅力たっぷりに演じる。この恋とも憧れとも微妙に違う、名状しがたい感情を先生に対して抱く。これも小学生男子あるあるだろう。

 

『 岸和田少年愚連隊 』シリーズは、一つの時代のごく狭い地域に焦点を当てた物語だが、随所に普遍的な要素が挿入されているのが面白い。20世紀半ばの岸和田という狭すぎる範囲の物語にノスタルジーを感じるのは、そこに誰もが共感できる普遍性が認められるからだ。

 

ライバルのサダとの闘いや、友情、思春期、いびつながらも丸く収まり、そしてまた壊れていくことを予感させる家族など、ハチャメチャながらどこか胸を打つ物語。クライマックスではエンニオ・モリコーネを彷彿させるBGMで、時代を際立たせながらも、闘う男の生き様という普遍性を浮かび上がらせた。まさに若き三池崇史の面目躍如の一作。

 

ネガティブ・サイド

ピアノ線が見えてしまうシーンがあるのはVHSではなくDVDだから?いや、画質は関係ないか。映画でいちばん映ってはいけないのはカメラマンだが、その次に映ってはいけないのは、特殊効果や特殊技術。この「部屋からガッシャーン」のシーンは大幅減点である。

 

リイチとサダたちの最後のケンカを真正面から映し出すのは難しかったか。子どもがどつき合う描写は challenging だろうが、だからこそ挑んでほしかった。

 

万博でなんとなく大団円に持っていくのはチープに感じた。これはJovianが維新嫌いだからという私情も入っているか。

 

総評

小学生であってもリイチはリイチ。竹中直人が父親役として大暴れするが、本作で初めてリイチは(文学的な意味での)父親殺しを経験し、同時に和解もする。言葉そのままの意味で「岸和田少年」の物語である。前二作を気に入ったという人は、本作もぜひ鑑賞すべし。リイチというキャラを別角度から見ても、やはりリイチはリイチなのだ。それを確認できるだけで本作は収穫である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

leave home

家出する、の意。home の前に a や the は不要である。父ちゃんも母ちゃんもリイチも、とにかく本作では皆が家出する。変な家族であるが、それもそれで一つの家族像だ。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 1990年代, B Rank, 日本, 烏丸せつこ, 監督:三池崇史, 竹中直人, 配給会社:松竹, 長田融季, 青春, 高岡早紀Leave a Comment on 『 岸和田少年愚連隊 望郷 』 -1969年の日本の片隅-

『 夏へのトンネル、さよならの出口 』 -もう少しオリジナリティを-

Posted on 2022年9月11日 by cool-jupiter

夏へのトンネル、さよならの出口 60点
2022年9月10日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:鈴鹿央士 飯豊まりえ
監督:田口智久

半日出勤の後、昼寝。その後ふらりと近所の映画館に赴き、タイトルだけでチケット購入。素材は良いと感じたが、料理する側のスキルが平々凡々だったという印象。

 

あらすじ

そこに入ると欲しいものが何でも手に入るというウラシマトンネル。しかし、代償として100歳老化してしまうという。過去のある出来事がトラウマになっている塔野カオル(鈴鹿央士)は、自暴自棄になって家を飛び出したある夜に、偶然にもウラシマトンネルを発見する。そこは時間の流れが外界とは全く異なるトンネルだった。カオルは転校生の花城あんず(飯豊まりえ)とトンネルを調査するための共同戦線を結び・・・

ポジティブ・サイド

原作小説は未読だが、ウラシマトンネルという設定は悪くない。時間を一つのテーマにするのはクリストファー・ノーランのような大巨匠も好むところである。本作はタイトルからして『 夏への扉 ーキミのいる未来へー 』のは明らか。原作もラノベらしいので、まず間違いなくボーイ・ミーツ・ガールだろうと予測した(100人いれば97人はそう予測するはず)。

 

アニメーションは美麗である。キャラもゆらゆらと揺れたりしないところは個人的に気に入った。随所に挿入される山や海、そして空の景色の美しさが、鬱屈したカオルとあんずの心象風景とは真逆で、二人がこの世界に馴染めていないことを静かに、しかし確実に印象付けた。

 

ウラシマトンネルを調査するシークエンスは面白かった。通話しながら境界線の位置を測ったり、時間の流れの違いを数値化したり。特に時間の境界線の内側から外側を見た時の視界は、なかなかにSF的だった。ガラケーが重要なアイテムになっていて、懐かしさを感じた。スマホだと、映像を録画したり、それを配信したりできてしまうので、時代設定は適切だった。

 

カオルとあんずのつかず離れずの距離感がもどかしくもありながら、同時に好ましくもあった。水族館でのデートで、ジンベエザメが陰と陽になって混ざり合いそうになり・・・というシーンは、二人の行く末の暗示として上手い演出だったと感じる。『 君の名は 』っぽさがありつつも、『 ナビゲイター 』的な終わり方にも好感が持てた。

ネガティブ・サイド

オリジナリティの無さには感心しない。色々ありすぎて頭が痛いが、「なんじゃこりゃ」とガッカリさせられたのは『 新世紀エヴァンゲリオン 』の綾波レイの「どいてくれる?」のまるパクリ。いや、別に監督の好みでも脚本家の好みでも何でもいい。ただ、このようなオマージュは、やるならやるで徹底的にやるべき。カオルの左手の位置はそこではないだろう。『 インターステラー 』や『 ほしのこえ 』へのオマージュも、やるならもっと徹底的にすべし、だ。

 

あんずの造形および性格が一部の層に媚びすぎている、というのはJovian妻の言。Jovianも同意する。黒髪ロングのクール系美少女がだんだんと打ち解けてくるのは、ステレオタイプでしかない。カオルとあんず、二人とも声に「演技力」がないので、キャラに深みが生まれないのもマイナス要素だ。

 

疑問なのは、単線電車の走る田舎町で、クラスメイトもカオルとあんずがあーだこーだというゴシップに興じるほど情報伝播の速い。にもかかわらず、二人が頻繁に踏切で出会い、線路を歩いていく姿が目撃されなかったのだろうか。

 

総評

時間と漫画を巡る不思議な物語という意味では『 リング・ワンダリング 』のようであり、夏と時間を巡る物語という点では『 永遠の831 』とも共通するところがある。批判すべき点も多いが、90分弱でコンパクトにまとめられていて、非常に観やすい。高校生、大学生のデートムービーにはちょうどいいだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

flip

フィギュアスケートでたまに聞こえる語。意味は「引っくり返す」である。映画では懐かしのガラケーが重要なアイテムになっていたが、これは英語で flip phone と言う。モニター部分がカパッと開いたり閉じたりするところが、flip になっているからである。英検1級受験者なら、二次試験で試験官に “Now, flip over the card and put it down.” と言われたことがあるかもしれない。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, アニメ, ファンタジー, 日本, 監督:田口智久, 配給会社:ポニーキャニオン, 鈴鹿央士, 青春, 飯豊まりえLeave a Comment on 『 夏へのトンネル、さよならの出口 』 -もう少しオリジナリティを-

『 岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇 』 -走ってるんじゃない、止まれないんだ-

Posted on 2022年9月9日 by cool-jupiter

岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇 70点
2022年9月7日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:千原浩史 千原せいじ 鈴木紗理奈 北村一輝
監督:三池崇史

大学の後期開講前という超繁忙期のため簡易レビュー。

 

あらすじ

リイチ(千原浩史)は中学を卒業。岸和田の街でテキヤをして生計を立てていた。しかし、恋人のリョーコ(鈴木紗理奈)と別れ、別の女と付き合い始めたことで、リイチは徐々に自分らしさを失い始めて・・・

 

ポジティブ・サイド

ストーリーは『 岸和田少年愚連隊 』の方が面白いと感じるが、リイチとリョーコというキャラクターの掘り下げに関しては本作の方が上回っている。少々ポップな路線を追うようになってしまう前の三池崇史作品ゆえに、暴力的な描写には結構な迫力がある。

 

千原ジュニアとせいじの二人が岸和田の悪ガキを好演。恋人を捨てて別の女に走る男と、親友の恋人の友達と恋仲になる男という対比が面白い。岸和田少年愚連隊というのは、青春をひとつのテーマにしているが、青春から抜け出せない男と、青春を青春として卒業していく女のコントラストも鮮やかだ。

 

リョーコはやっぱり関西人が演じた方がいい。その意味では鈴木紗理奈は適役。この時点で映画は半分成功したようなもの。

 

関西人キャストでコテコテの関西映画を観るのは、ストレス解消にちょうどいい。ちょっとバイオレンスが過ぎるケンカのシーンと、ショッキングな終盤の展開を除けば、以外に本作の間口は広い。2000年以降生まれの若い世代にも観てほしい。

 

ネガティブ・サイド

フラメンコダンスのシーンは不用。

 

リイチとリョーコの再会のために、重要キャラに退場願うというプロットはちょっと頂けない。前作同様に警察にパクられて・・・は、それはそれで二番煎じか。

 

総評

Jovian妻は大阪の南部出身だが、岸和田駅が高架になる前、つまり本作が映し出す岸和田駅前のような南海沿線の街並みを懐かしく思い出したらしい(ちなみに妻の高校は『 セトウツミ 』の高校)。大阪人なら必見・・・とまでは言わないが、是非見てほしい作品。移ろいゆく人の心と、だんじり祭りに象徴される変わらない岸和田のコントラストを味わってほしい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Don’t be.

Sorry と言われて、誤る必要はないのにと感じたら、Don’t be. と返そう。Don’t be sorry. の略である。ちなみに劇中でリョーコが言う「謝ったらアカン」というのは、Don’t say that. もしくは You can’t say that. だろうと思う。ニュアンスが全然違うので注意のこと。

 

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Posted in 未分類Tagged 2020年代, B Rank, 北村一輝, 千原せいじ, 千原浩史, 日本, 監督:三池崇史, 配給会社:シネマ・ドゥ・シネマ, 鈴木紗理奈, 青春Leave a Comment on 『 岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇 』 -走ってるんじゃない、止まれないんだ-

『 岸和田少年愚連隊 』 -良い子は真似をしないように-

Posted on 2022年9月4日 by cool-jupiter

岸和田少年愚連隊 70点
2022年9月1日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:矢部浩之 岡村隆史 大河内奈々子 秋野暢子
監督:井筒和幸

『 トップガン マーヴェリック 』が “Bang a Gong (Get It on)” が聞こえてきたことで、タイムスリップした気分になった人は多かったはず。そういえば、この曲が印象的に使われている邦画があったなと思い出し、TSUTAYAで本作を借りてきた。 

 

あらすじ

チュンバ(矢部浩之)と小鉄(岡村隆史)は悪ガキ中学生。仲間たちと一緒に岸和田の町で他校の不良とのケンカに明け暮れる毎日を送っていた。ある時、宿敵サダに小鉄が襲撃され、チュンバも焼きを入れられてしまう。しかし、懲りない二人はサダへの復讐に乗り出して・・・

 

ポジティブ・サイド

最初はVHSで観たと記憶している。1970年代の岸和田のことは知らないが、1980年代の尼崎は覚えているJovianからすれば、実にリアリティに溢れる作品である。

 

漫画および映画『 少年時代 』でも生々しく描かれたように、一世代や二世代前の日本は暴力に溢れていた。それをシリアスに描くのか、それともユーモラスに描くのか。後者が許されてしまうのは、大阪の、特に岸和田という独特なコスモロジーが働く地域を描き出したからこそだろう。

 

下手をしたら死ぬぐらいのバイオレンスを振るっているのに、矢部と岡村のお笑い芸人ふたりが主演を張ることでそれが不思議と中和されている。殴っては殴り返され、殴り返されたら、さらに殴り返すという、単純明快なプロットで進んでいくのが心地よい。拳での殴り合いから、石ころ、野球のバットから植木鉢まで、生活感ありありのケンカである。よく死なないなと感心するやら呆れるやら。

 

おかん役の秋野暢子と、恋人役の大河内奈々子演じるリョーコが、それぞれチュンバと絶妙な距離感で接している。少年から男になる。しかし、三つ子の魂百まで。ケンカに明け暮れた日々、仲間との鮮烈な青春の思い出は消せない。アホとしか言えない男どものアホとしか言えない生き様を見て笑うしかないが、命を文字通りに燃やすような日々を送ったことがない普通の人間は、そこにちょっぴり嫉妬してしまう。「そんなわけないやろ?」って?それがそうやねん。

 

ナイナイだけではなく、木下ほうかや宮迫博之など、現代ではアウトに近くなってしまった俳優や芸能人が出ていたり、塩見三省や大杉連などの北野武映画の常連、政治家になった山本太郎など、豪華キャストが脇を固めている。邦画ファンならびに南大阪人はぜひ鑑賞しよう。

 

ネガティブ・サイド

ストーリーの単調さが玉に瑕。他校の不良とのケンカだけでなく、悪友のガイラやサイとの淡い友情や、小鉄とチュンバの家族との絡みなども必要だった。特に小鉄とチュンバの仲たがいの直前の、「あんな家行って何すんねん」という台詞に説得力を持たせるために、小鉄がチュンバの家にいるシーンは一瞬だけでも映すべきだったろう。

 

塩見三省演じる中学教師の熱量と高校の先生の無機質さの対比も欲しかった。韓国映画の描く父親像ほどではないが、チュンバや小鉄の屈折した青春の影響は第一に岸和田の街と時代の空気、第二に家族、特に父親との関係が大いに暗示されている。カオルちゃんなど、年長の男性たちの青少年に与える影響にもう少しフォーカスがあってしかるべきだったと感じる。

 

総評

時代の一側面を(どれぐらい正確であるかはさておき)鮮やかに活写した作品である。元大阪府警で生活安全課に長く務めたJovian義父に、1970年代の大阪、特に南部の風俗習慣について尋ねてみたい。そう思わせるパワフルな作品。令和の若者が本作を観ても意味がサッパリ分からないだろうが、燃えるような青春の熱さだけでも伝われば、本作は十分に時代を超えた役割を果たすのだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

go one’s separate ways

別々の道を行く、の意。チュンバが小鉄に言う「なんや、こっからは別々かい」を私訳するなら、Are we going our separate ways from here? となるだろうか。芸能人カップルなどが離婚するときに「これからは別々の道を歩むことになりました」と聞いたら、They will go their separate ways. と脳内英作文をしてみよう。 

 

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Posted in 未分類Tagged 1990年代, B Rank, 大河内奈々子, 岡村隆史, 日本, 監督:井筒和幸, 矢部浩之, 秋野暢子, 配給会社:松竹, 配給会社:松竹富士, 青春Leave a Comment on 『 岸和田少年愚連隊 』 -良い子は真似をしないように-

『 海がきこえる 』 -転校生と青春の日々-

Posted on 2022年8月11日 by cool-jupiter

海がきこえる 70点
2022年8月10日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:飛田展男 坂本洋子 関俊彦
監督:望月智充

近所のTSUTAYAのアニメコーナーで『 マインド・ゲーム 』を探していたら、本作が目についた。転校生だった自分を思い出して、懐かしさもありレンタルしてきた。

 

あらすじ

東京で大学生をしている杜崎拓(飛田展男)は、吉祥寺駅の向かい側ホームに、高校の同級生・武藤里伽子(坂本洋子)の姿を見かける。親友の松野の片思いの相手だった里伽子の姿に、拓は高校時代の青春の日々を回想し・・・

 

ポジティブ・サイド

Jovian自身も兵庫県尼崎市から岡山県備前市へ転校した経験がある。都市部から田舎へ引っ越したという点では、東京から高知への引っ越しと大差ない。なので里伽子の感じる疎外感に大いに共感できた。別に土佐弁がどうのこうのではなく、方言というのは、それを解さない人間にとっては gibberish なのだ。しかしコミュニケーションのためには意味を取らねばならない。だから聞き返すわけだが、それが相手の気分を害する。良いとか悪いとかではなく、そういうものなのだ。

 

岡山人「やっちねもねえなあ」

Jovian「やっちねもねえって何?」

岡山人「何をやっちもねえこと言いよんなら?」

 

転校当初はこんなやりとりばかりで、ほとほと滅入った。里伽子に共感する気持ちが伝わっただろうか。

 

少々込み入った恋愛・青春ものであるが、この年頃の男子の性的な思考・志向をはずさず、正面から捉えていることに好感が持てる。ハワイで杜崎が金を無心されるところで、里伽子の私服から見える胸の谷間に目が行ってしまうシーンはその好例だろう。幼女・少女趣味あるいは戦闘美少女とは異なるテイストにもジブリが果敢に挑戦していた頃か。

 

この里伽子というキャラが引き起こす人間関係の不協和音を心地よいと感じる人はいないだろう。しかし、里伽子が引き起こす不協和音が青春の一つの在りようであるということに同意しない人もいないだろう。青春は甘酸っぱさよりもほろ苦さの方が遥かに強いはず。そうした苦みがあるからこそ、劇中で語られるように、高知城をひとり見上げるのではなく、誰かとともに見ることに大きな意味が生まれてくる。

 

Jovianは国際基督教大学に通っていたので、吉祥寺は庭同然だった。新しくなる前の総武線や中央線の電車、吉祥寺駅ホームから見えるTakaQやらLONLON直結出口やらには、とても懐かしい思いを抱いた。

 

金星堂が言及されてニヤリ。Jovianは職務上、多くの大学英語教科書を選定するが、金星堂や成美堂、Cengage Learning にはいくら儲けさせているか分からない。

 

ネガティブ・サイド

土佐弁が変。『 県庁おもてなし課 』でもそうだったが、日本の映画はアニメも実写も、もっと方言を忠実に再現することに力を入れるべきである。『 ハルカの陶 』の岡山弁の再現度がひとつの水準になる。

 

杜崎の心情をそのまま言葉にしてしまうのは野暮だろう。小説ならばそうせざるを得ないかもしれないが、これは映画。特に、東京のホテルで里伽子に呼び出された後、気分を害した杜崎が部屋で不貞寝するシーンでの心の中のセリフをそのまま再現してしまうのは親切なようでいて不親切。ここは怒りと落胆で千々に乱れる心情を表情や仕草で表すべきだった。

 

総評

保護者会が父兄会だったり、職員室で教師がタバコを吸っていたり、心療内科が精神科だったりと時代を感じさせる作品。けれど描かれている青春模様や人間関係は極めて普遍的である。10代で鑑賞して、30代以降に再鑑賞する。あるいは、盆や正月に帰省してきた大学生の子どもと一緒に鑑賞してみるのもありだろう。やや毛色は異なるが、これも一つのジブリ作品である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

slap

引っぱたくの意。give someone a slap in the face = 平手打ちをお見舞いする、という形でもよく使われる。Jovianが大学生当時、アメリカ人に聞いたジョークでは、

A: What do you do if the dishwasher stops?

B: Slap her. 

というものがあった。ダブルミーニングだが、そこまで難しくはないだろう。決してJovianが sexist だとは受け取らないでほしい。1990年代にはそういうジョークがあった、というのを本作の描写から思い出しただけである。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 1990年代, B Rank, 坂本洋子, 日本, 監督:望月智充, 配給会社:スタジオジブリ, 関俊彦, 青春, 飛田展男Leave a Comment on 『 海がきこえる 』 -転校生と青春の日々-

『 ラストサマーウォーズ 』 -「映画を作る映画」の佳作-

Posted on 2022年7月13日 by cool-jupiter

ラストサマーウォーズ 70点
2022年7月10日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:阿久津慶人 飯尾夢奏
監督:宮岡太郎

傑作『 成れの果て 』で監督・企画・編集を務めた宮岡太郎が、本作でも監督・企画・編集を務めた。それだけでチケット購入決定。

 

あらすじ

小学6年生の陽太(阿久津慶人)は、同級生の明日香(飯尾夢奏)が夏の終わりに外国に引っ越すことを知り、ショックを受ける。映画好きな陽太は、夏休みの自主研究課題として、明日香をヒロインにした映画を作ろうと思い立つが、肝心のスタッフがいない。陽太は担任に相談するが・・・

ポジティブ・サイド

『 サマーウォーズ 』や『 永遠の831 』、『 ビューティフルドリーマー 』、洋画で言えば『 SUPER8/スーパーエイト 』のような要素がふんだんに盛り込まれた映画である。「夏」、「少年少女」、「家族」、「映画作り」がハッシュタグにつくような作品と言えばいいだろうか。キーコンセプトが分かりやすく、どこに主眼を置いて鑑賞すれば良いのかが明確である。 

 

この映画なら、主人公の陽太に同化して観ればいい。本作は陽太から明日香への不器用なラブレター作りであり、それはすなわち少年のビルドゥングスロマンである。いわゆる陰キャな少年が想いを寄せる同級生の少女相手に映画を作るというプロットに共感できない者などいないだろう。逆にこの時点で「何だこの子?」と感じるのなら、チケットを買ってはダメだ。時間と金を無駄にすること請け合いである。

 

脚本家やプロデューサー、カメラ・オペレーター、照明などをゲットしていく流れもテンポが速くてよい。脚本家がネットに小説をアップしているアマチュア小説家というのも『 私に✖✖しなさい 』のようなウェブ小説プラットフォームを考えれば、それなりに説得力はあるし、スマホのカメラ、あるいは Zoom や Google Meet を使えば、誰でも一応は動画が作れて、なおかつ YouTube にもアップできる時代である。大学生や高校生ではなく、小学生が数人集まって映画を作るというのは、もはやファンタジーではなくなった。実際に本作にインスパイアされて、夏休みの自由研究で映画を作る少年少女が現れても全く不思議ではない。

 

ロケハンから衣装集めなどは、『 鬼ガール!! 』とは異なったアプローチで、このあたりは埼玉と大阪の地域性の違いが見て取れる。撮影が順調に進んできたところで、アクシデントが発生。このあたりから『 ぼくらの七日間戦争 』的な要素が現れ始める。すなわち、大人への反抗である。といっても暴力的なそれではなく、実に微笑ましいもの。子どもの目からは親が抑圧的に見える時が多々あるかもしれないが、それにはちゃんと理由があるのだ。

以下、少々ネタバレあり

 

ネガティブ・サイド

陽太の家族の因果の描写が少々弱い。たとえば陽太の兄をよくよく見ると、歩くシーンばかりだったり、もしくは食卓のシーンで特定の指が使えていなかったりといった、過去に何らかの(軽い)障がいを負ったことを暗示するような描写を入れるべきだった。それがないと陽太の母親の異様な執着が腑に落ちない。

 

担任の先生と陽太、あるいは脚本の女の子が台本を一緒に読む、あるいはロケ地や撮影の順序について話しているシーンも欲しかった。ほんの数秒でもよいから、そうしたシーンがあれば、終盤のとあるシーンで唐突に先生が陽太とその家族の前に現れるシーンの説明がついたはずだ。これがないと、広い入間で先生がどうやってピンポイントで陽太と明日香のところにたどり着けたのか分からない。

 

総評

入間のご当地ムービーでもありながら、主軸は少女への思慕と家族の再発見を通じたひと夏の少年の成長物語である。つまり万人受けするテーマを描いている。映画を作る映画はJovianの好物テーマだが、本作もなかなかの面白さ。80分と非常にコンパクトにまとまっているのもいい。大人と子どもで、本作の見方はかなり異なることだろう。夏休みに、ぜひ家族でどうぞ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

a movie buff

映画マニアの意。別に映画に限らず、何らかの分野の熱狂的なファンは buff と呼ぶ。野球マニアなら a baseball buff、F1マニアなら an F1 buff である。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, 日本, 監督:宮岡太郎, 配給会社:「ラストサマーウオーズ」製作委員会, 阿久津慶人, 青春, 飯尾夢奏Leave a Comment on 『 ラストサマーウォーズ 』 -「映画を作る映画」の佳作-

『 四畳半神話大系(DVD) 』 -原作小説の秀逸な分解・再構成-

Posted on 2022年7月9日 by cool-jupiter

四畳半神話大系 80点

2022年7月4日~7月5日に視聴

出演:浅沼晋太郎 坂本真綾 吉野裕行

監督:湯浅政明

 

本業の大学関連業務で忙殺されているので簡易レビューを。


あらすじ

薔薇色のキャンパスライフを夢見る「私」(浅沼晋太郎)は、大学の様々なサークルから勧誘を受ける。だが、どのサークルに所属しても小津(吉野裕行)という悪友に出会い、黒髪の乙女との交際は遠のいてしまい・・・

 

ポジティブ・サイド

原作小説のテンポの良さはそのままに、浅沼晋太郎が「私」に見事に生命を吹き込んでいる。坂本真綾も、どこか冷笑的だが人間味のある明石さん役を好演。悪童・小津を演じた吉野裕行の愛の込められただみ声も印象深い。

 

小説中の様々なエピソードを見事に膨らませ、様々なサークルに所属しながら無為で無意義な大学生活を繰り返してしまうという原作ストーリーの根幹部分をうまく補強している。

 

オープニングの下鴨幽水荘のループ的な映像演出が素晴らしい出来映えで、各話の冒頭からエンディングまでの流れが一種の様式美にまで昇華している。各キャラクターの動きを最小限に抑えていることが、逆に小説の静的なイメージとも共通していて良い感じ。

 

最終11話の出来が特に秀逸。確かに英訳が The Tatami Galaxy になるのもうなずける。

 

小津の「藪用」が野暮用になっていた。Nice correction.

 

ネガティブ・サイド

天の采配はそのままだった・・・

 

総評

小説『 四畳半神話大系 』のアニメ化で、『 犬王 』の湯浅政明が監督。『 四畳半タイムマシンブルース 』の予習にと再鑑賞したが、全4章の原作を11エピソードのアニメに巧みに分解・再構成している。一つひとつはぶつ切りかつ独自のエピソードだが、順番通りに見ることが大きな意味を持つようになっている。小説を読んだ人は、ぜひ映像でも楽しもうではないか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

maze

「迷宮」の意。『 キラー・メイズ 』でもメイズという言葉が使われているように、入り組んだ構造のことを指す。対照的に、labyrinth = ラビリンスは『 迷宮物語 』のラビリンス*ラビリントスのように、入る(そして出る)箇所が一つに絞られるような迷路を指す。もう一つよく言われるのは、メイズもラビリンスも迷路だが、屋根がないものがメイズ、屋根があればラビリンスだというもの。昔、同僚ネイティブに maze と labyrinth の違いを尋ねたが、彼は呻吟するばかりであった。その後、「癇に障る」と「癪に障る」の違いは何だ?「桁外れ」と「桁違い」の違いは何だ?と反撃された。英語マニアだけが知っていればいい違いと言えるだろう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, A Rank, アニメ, ファンタジー, 吉野裕行, 坂本真綾, 日本, 浅沼晋太郎, 監督:湯浅政明, 青春Leave a Comment on 『 四畳半神話大系(DVD) 』 -原作小説の秀逸な分解・再構成-

『 四畳半神話大系 』 -青春とは何かを知るための必読書-

Posted on 2022年7月2日 by cool-jupiter

四畳半神話大系 90点
2022年6月15日~6月29日にかけて読了
著者:森見登美彦
発行元:角川文庫

『 ペンギン・ハイウェイ 』のレビューで本作を読み返すと誓っていたが、ここまで遅くなってしまった。仕事で京都の某大学の課外講座を受け持つことになり、その期間中に地下鉄烏丸線や叡山電鉄の車内で本書を読むという、ちょっと贅沢な楽しみ方をしてみた。

 

あらすじ

薔薇色のキャンパスライフを夢見ながら2年間を無為に過ごしてしまった私は、その原因をサークル仲間の小津に帰していた。黒髪の乙女との交際を夢想する私は「あの時、違うサークルに入っていれば・・・」と後悔するが・・・

 

ポジティブ・サイド

多分、読み返すのは4度目になるが、何度読んでも文句なしに面白い。その理由は主に3つ。

 

第一に、文体が読ませる。京大卒の小説家と言えば故・石原慎太郎をして「使っている語彙が難しすぎる」と評された平野啓一郎が思い浮かぶが、森見登美彦の文章にはそうした難解さがない。まず地の文が軽妙洒脱でテンポが良い。各章冒頭の「大学三回生の春までの二年間」から「でも、いささか、見るに堪えない」までのプロローグはまさに声に出して読みたい日本語である。

 

第二に、キャラクターが個性的かつ魅力的である。どこからどう見てもイカ京(近年ではほとんど絶滅しているようだが)の「私」の、良い言い方をすれば孤高の生き様、悪い言い方をすれば拗らせた生き方に、共感せずにいられない。言ってみれば中二病=自意識過剰なのだが、そこは腐っても京大生。衒学的な論理を振りかざして、必死に自己正当化する様がおかしくおかしくてたまらない。また、悪友の小津、樋口師匠、黒髪の乙女の明石さんなど、誰もがキャラが立っている。濃いキャラと濃いキャラがぶつかり合って、そこから何故か軽佻浮薄なドラマが再生産されていく。かかるアンバランスさ、不可思議さが本書の大いなる魅力である。よくまあ、こんな珍妙な物語が紡げるものだと感心させられる。

 

第三に、パラレル・ユニバースの面白さがある。流行りの異世界ではなく並行世界を描きつつ、各章ごとに互いが微妙に、しかし時に大きく相互作用しあう組み立ては見事としか言いようがない。今回は電車の中だけで読むと決めていたが、初めて読んだときは文字通りにページを繰る手が止まらなかった。薔薇色のキャンパスライフを求め、黒髪の乙女との交際を希求する「私」の狂おしさがことごとく空回りしていく展開には大いなる笑いと一掬の涙を禁じ得ない。「私」と自分を重ね合わせながら、あの時の自分がああしていれば、それともこうしていれば・・・と後悔先に立たず。今ここにある自分の総決算を自ら引き受けるしかないのである。

 

四畳半の神話的迷宮から脱出した「私」がたどり着いた境地とは何か。読むたびに世界の奥深さと人生のやるせなさ、そして気付かぬところに存在する矮小な、しかし確かに存在する愛の切なさを痛切に味わわせてくれる本書は、SFとしても青春ものとしても、珠玉の逸品である。

 

ネガティブ・サイド

ケチをつけるところがほとんどない作品だが、言葉の誤用が見られるのが残念なところ。藪用は「野暮用」の誤用だし、天の采配も「天の配剤」の誤用である。

 

総評

Jovianは現役時に京都大学を受験し、見事に不合格であった。それから四半世紀になんなんとする今でも、時々「あの時、京大に合格できていれば・・・」などと夢想することがある。アホである。Silly meである。だからこそ、あり得たかもしれない自分の姿を思う存分「私」に投影してしまう。常に変わらぬ青春がそこにある。下鴨幽水荘≒吉田寮≒国際基督教大学第一男子寮である。アホな男子の巣窟で青春の4年間を過ごした自分が「私」とシンクロしないでいらりょうか。複雑玄妙な青春を送った、送りつつある、そしてこれから送るであろうすべての人に読んで頂きたい逸品である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

sidekick

親友、相棒の意。「私」にとって小津は腐れ縁の悪友だが、客観的に見ると親友だろう。best friend や close friend という言い方もあるが、小津のような男は sidekick と呼ぶのがふさわしい。英語の中級者なら、sidekick という語は知っておきたい。

 

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Posted in 国内, 書籍Tagged 2000年代, S Rank, SF, ファンタジー, 日本, 発行元:角川文庫, 著者:森見登美彦, 青春Leave a Comment on 『 四畳半神話大系 』 -青春とは何かを知るための必読書-

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