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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 監督:鈴木雅之

『 湯道 』 -もっと銭湯そのものにフォーカスを-

Posted on 2023年3月15日 by cool-jupiter

湯道 55点
2023年3月12日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:生田斗真 濱田岳 橋本環奈
監督:鈴木雅之

 

温泉や銭湯の愛好家なら要チェックに見える本作。Jovianも風呂は大好きである。したがってチケット購入。

あらすじ

東京で建築家として働く三浦史朗(生田斗真)だが、仕事が来ない。そんな中、父の訃報が入るが、多忙を理由に帰郷もしなかった。しかし、いよいよ実家の銭湯「まるきん温泉」を畳むべきだと考えた史朗は、実家を訪れる。住み込みで働くいづみ(橋本環奈)と弟・悟朗(濱田岳)と出会った史朗は、なりゆきでしばらく銭湯で働くことになり、個性豊かな常連客たちと触れあっていき・・・

ポジティブ・サイド

生田斗真と濱田岳が兄弟に見える。雰囲気が、というよりも見た目が。ヘアドレッサーやメイクアップ・アーティストの方々が素晴らしい仕事をしたのだろう。トレイラーの時点では「この二人が兄弟?」と感じたが、実際に鑑賞して違和感はゼロだった。

 

昭和は昔になりにけりと思うことが多い令和の時代だが、確かに昔の銭湯は男湯と女湯の距離が近かった。Jovianも小さなころはたまに家族で銭湯に行っていたが、そういう時は親父に「もうそろそろ上がるって、お母さんに言うてきて」と言われて、番台前ののれんをくぐって、女湯に入って、伝言していたなあ。育った地域にもよるだろうが、40代以上の世代なら、子供の頃にそうした経験をしたことがある人が多いのではないだろうか。本作はそうしたノスタルジーも呼び起こしてくれる。

 

常連客も多士済済。寺島進や笹野高史はベテラン夫婦の味わい深いやりとりを披露してくれるし、天童よしみは意外な人物とのデュエットを披露、その美声が健在であることを教えてくれる。

 

こうした愉快で人情味あふれる地元の常連たちとの触れ合いと、銭湯をやめさせたい兄と銭湯を続けたい弟の確執のコントラストがドラマのひとつの軸になっている。そこにいづみが絡むことで、深刻なはずの対立が緩和される。いづみは番台に花を活けているが、いづみ自身がしっかりとまるきん温泉の花になっている。

 

本作の表のテーマをそのまま湯道とするなら、裏のテーマは時代に取り残された遺物をどうすべきか、ということになるのだろう。色々な撮影上の制約もあるのだろうが、本作では銭湯に入ろうとする子どもがいない。客はごく一部を除けば、すべて中高年である。つまり、若い世代は昔ながらの銭湯に魅力を感じていないのだ。そして、高齢者ばかりが銭湯で憩う。そうした現状は憂うべきなのか、それとも理の当然と受け入れるべきなのか。

 

ひとつ確かなのは、風呂は入る人間を幸せにするということだ。そして、幸せとは今まで気づくことがなかった小さなことを喜べることがその本質である。トレイラーに出てきた五右衛門風呂には、Jovianも二度ほど入ったことがある。友人の実家の広島の田舎に五右衛門風呂があったのでそこで入った。さらに、大学生時代に寮の裏庭で先輩や同級生たちとドラム缶を調達してきて、そこで入った。広島では貴重な体験をしたぐらいにしか思わなかったが、大学時代に寮の裏庭で五右衛門風呂に浸かった時は確かに気持ち良かった。ただ、次の瞬間に、まさに生田斗真がポツリと呟く台詞と同じことをJovianも感じた。その後の某キャラの教えも印象的。太陽ほど身近な存在はないが、その光に我々は実はどれほど多くを負っているのか。当たり前のことを当たり前と受け取るのではなく、蛇口をひねれば清潔で安全な水が出るということが、どれほど有難いことなのかを思い起こす必要がある。

ネガティブ・サイド

冒頭から刺青入りのヤクザが登場する。尼崎市民のJovian的には杭瀬あたりの銭湯でかつてよく見た光景だが、映画でやることか?ヤクザがかっこいいなどと思う若者が出てこなければいいが・・・

 

映画の根本を否定するように聞こえてしまうかもしれないが、湯道のパートは必要か?日米首脳会談の裏に湯道があったとか言われても、面白くもなんともないし、寒い親父ギャグの連発にも笑えない。風呂に入る時の所作が云々というのも、それを小日向文世が実際に自宅の風呂やまるきん温泉で実践するシーンを見せてくれないと意味がないのでは?撮影しなかった?それとも編集で削った?いずれにせよ『 湯道 』というタイトルながら湯道パートがまったくもって必要であるとは感じられなかった。

 

源泉かけ流し至上主義というのも意味不明。吉田鋼太郎のキャラ自体、必要か?各家庭に風呂がついていることと公衆浴場が存在することは全く矛盾しない。どの家にもキッチンがあるのだから外食産業は無意味だ、と言っているのに等しい。この温泉評論家の先生は完全なる蛇足に感じられたし、この先生抜きでもまるきん温泉の常連客たちと史朗、悟朗、いづみが一致団結できる展開は描けたはず。

 

全体的にもうちょっと銭湯らしさおよび銭湯愛好家の風情を出してほしかったとも思う。役者も忙しいのだろうが、風呂上りで頭をふきふきしているシーンがいくつかあったが、明らかに濡れていない。というか風呂上がりに見えない。もっと入浴後という心も体も温まっているというシーンを視覚的にアピールすべきだった。風呂場のケンカで二人ともずぶ濡れのはずなのに、次の瞬間には完全に乾いているのには苦笑した。

 

総評

鈴木雅之監督の作品としては『 プリンセス・トヨトミ 』に次いで面白い作品。ただし、風呂そのものへのフォーカスという点では『 テルマエ・ロマエ 』の方が優れている。Jovianは「古き良き」という形容があまり好きではないが、銭湯はスーパー銭湯よりも番台のある昭和型の銭湯の方が好きである。我が尼崎は一時期は150以上の銭湯が営業していたが、今では30と少しらしい。近所の昭和温泉には月一程度で通おうと思う。昭和にノスタルジーを感じる中年以上の世代にお勧めしたい映画。もちろん、若い世代の鑑賞も歓迎である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

retirement money

 

読んで字のごとく退職金の意。retireは定年退職するという動詞で、その名詞はretirement。それにmoneyをつければ、そのまま退職金となる。我々の世代は退職金はもらえるのか?もらえても、アホみたいに課税されるのだろうか?

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 Winny 』
『 シン・仮面ライダー 』
『 シャザム! 神々の怒り 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, コメディ, ヒューマンドラマ, 日本, 橋本環奈, 濱田岳, 生田斗真, 監督:鈴木雅之, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 湯道 』 -もっと銭湯そのものにフォーカスを-

『 マスカレード・ナイト 』 ー人間模様の描写が弱い-

Posted on 2021年9月19日 by cool-jupiter

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210919182748j:plain

 

マスカレード・ナイト 45点
2021年9月19日 MOVIXあまがさきにて鑑賞 
出演:木村拓哉 長澤まさみ 
監督:鈴木雅之

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大学後期の開講ラッシュで仕事が多忙を極めているが、なんとか映画館通いは継続させたい。そこでお気軽に犯人当てでもするかと思い、本作をチョイス。犯人は2択まで絞って、なんとか的中させた。

 

あらすじ

都内アパート暮らしの女性殺人事件を捜査する警察の元に匿名ファックスが届く。その事件の犯人が、大みそかに仮面舞踏会を主催するホテル・コルテシア東京に現れるというのだ。警視庁捜査一課の刑事の新田(木村拓哉)は捜査のため再びフロント係としてホテルに潜入し、腕利きコンシェルジュの山岸尚美(長澤まさみ)と共に事件の解決に乗り出すが・・・

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ポジティブ・サイド

前作『 マスカレードホテル 』に引き続き、豪華キャストをよく揃えたものだと思う。木村拓哉と長澤まさみを当て書きしたかのようにハマっていたが、今作でも他人をどこまでも疑う刑事と他人をどこまでも信じるホテルマンの対比が映える。

 

ホテルのフロントロビーのプロダクションデザインも、やはり見事の一語に尽きる。前作のスタートは拍子抜けするようなホテル外観のCGから始まったが、マスカレード=仮面舞踏会をタイトルに持つ本作は、そんな Establishing Shot は持ってこない。

 

冒頭の殺人事件から、怪しい客が次から次にやって来るシークエンスは確かに引き込まれる力を持っている。そこへ、他人のかぶる仮面を引っぺがしたい新田と他人のかぶる仮面を守りたい山岸のぶつかりあい=漫才的な掛け合いは、ワンパターンではあるが面白い。

 

冒頭の殺人事件の犯人、その密告者、そして犯人と密告者の関係が複雑に絡まりう展開は観る者をぐいぐいと引き込んでくる。謎解き要素を別にすれば、デートムービーにもなりうるだろう。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210919182837j:plain

ネガティブ・サイド

これはミステリに対してどれだけ慣れているかによるが、おそらく密告者が誰であるかは、分かる人はかなり早い段階で分かったのではないか。ズバリこの人物だと指摘できないまでも、こんな「属性」の人物あろうと見当はつく。これから観る人は、映画製作者(小説の作者も)は、新田や山岸を騙そうとしているのはなく、我々を騙そう、ミスリードしてやろうと思っていることを忘れるべからず。同時に、我々に対して結構フェアに伏線を呈示してくれてもいる。だが、今回の新田のファックスの文言への指摘は、あからさまにミスリードすぎるだろう。もう少し見せ方に工夫が必要だった。

 

犯人候補=ホテル客なのだが、ここの見せ方もあからさますぎた。「さあ、この人物は怪しいですよ」という人間を何度も何度も出し入れするが、さすがにここまでやるとすれっからしならずとも犯人候補からは外すだろう。このキャラをもっと怪しく見せる小道具として、とある隠語になっていない隠語(以下白字、Love Affair、情事、不倫、頭文字を取ればLA)をもっと効果的に使えたはずだ。

 

別の犯人候補について言えば、小日向文世が語る捜査情報とあからさまに食い違う情報が呈示された瞬間(以下白字、夫の死亡時期)に「こいつだ!」と思えたが、新田がその矛盾に反応できなかったのは無理がある。また、この犯人候補同士のとあるインタラクションをコンシェルジュである山岸がお膳立てせざるを得ない場面があるが、この展開にはおそらく全世界のホテルマンが頭を抱えることだろう。無理が通れば道理が引っ込むという極めて日本的な悪弊の顔が見える。もちろん、最後には痛快な肘鉄を食らわせるわけだが、この切羽詰まったタイミングでこんな展開を持ってくるか?この無茶苦茶な展開のおかげで「やっぱりあいつが犯人だ」と確信した。もっと純粋に推理をさせてほしかった・・・

 

ホテルのバックヤードに設置された警察の捜査本部は無能の集まり。「なんとしても犯人を見つけろ」の一点張りで、捜査の方向性も論理的な指揮も何もない。元警察官のJovianの義理の父親が見たら、どう感じることか。また、犯人の犯行動機も前作の極めてパーソナルなものから、巨大な相手に対する憎悪になっているが、そんなもんのどこに説得力があるのか。警察の権威を失墜させたいなら、衆人環視の中での犯行を止められなかったという汚名を着せるのではなく、誰も注目していない事件には警察は本腰を入れないということをもっと効果的に満天下に知らせるべきだろう。気宇壮大な犯行動機だが、ここまでくると小説ではなく漫画に思える。

 

総評

ミステリ小説の映画化というよりも、割と上質な2時間ドラマ、テレビ映画、またはドラマの劇場版だと捉えるべきだろう。長澤まさみはキャリアウーマンや母親役として芸域を開拓していくだろう。キムタクはおそらくキムタクのままか。おそらく第三弾も制作されるだろうが、その時はもっともっと純粋ミステリに徹してほしいものである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

the 

冠詞は英文法の中で最も難しいと思っている。ちなみに難しさランク2位は単数・複数の使い分け、3位は前置詞である(あくまで私見)。時々、ホテル名には the をつけるべしと解説する書籍やサイトを見るが、厳密には正しくない。 

ホテル~には the はつかない

~ホテルには the がつく

というのが正しい解説。例を挙げると

〇 The Cortesia Hotel

✖ Cortesia Hotel

〇 Hotel Cortesia

✖  The Hotel Cortesisa

となる。英検1級、TOEFL iBT90点、IELTS7.0を目指す人なら正しく理解しておきたい。

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, D Rank, ミステリ, 日本, 木村拓哉, 監督:鈴木雅之, 配給会社:東宝, 長澤まさみLeave a Comment on 『 マスカレード・ナイト 』 ー人間模様の描写が弱い-

『 マスカレードホテル 』 -トリックとプロモーションに欠陥を抱えた作品-

Posted on 2019年1月23日2019年12月21日 by cool-jupiter

マスカレード・ホテル 40点
2019年1月19日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:木村拓哉 長澤まさみ
監督:鈴木雅之

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190123022400j:plain

これははっきり言って失敗作である。作品として失敗している点と宣伝の面での失敗、その両方の欠点を抱えている。特に後者は深刻で、熱心な映画ファン兼ミステリファンというのは、トレイラーや各種広告媒体から、これでもかと情報を引き出し、事前に推理を組み立てる習性があるものだ。そうしたファンの習性を無視したプロモーションにはどうしても辛口にならざるを得ない。一昔前の2時間サスペンスものなどは、テレビ欄の出演者の2番目もしくは3番目が犯人と相場は決まっていたが、それと同じようなことをまだやっているのかと落胆させられた。

 

あらすじ

都内で不可解な殺人事件が3件発生した。いずれの現場にも、謎の数列が残されていたが、それは次の犯行場所を示すものだった。4件目に指定されたのはホテル・コルテシア東京。捜査1課の刑事新田浩介(木村拓哉)はホテルのフロントクラークとして潜入捜査をするのだが、ぶっきらぼうで愛想の悪い新田は優秀なホテルマンの山岸尚美(長澤まさみ)とことあるごとに衝突をするのだが・・・

 

ポジティブ・サイド

小日向文世の刑事役。『 アウトレイジ 』および『 アウトレイジ ビヨンド 』でのマル暴デカ役では、温和な刑事と腹に一物抱えた刑事の両方を見事に演じ分けていた。それに次ぐ名演技を見せてくれる。味方かと思わせて敵、敵と思わせて味方と硬軟自在に演じ分けるのは熟練の技。この人の存在だけで新田の更なる活躍を描く続編、そして前日譚の製作まで想像できてしまう。素晴らしいスパイスになってくれている。

 

もう一つ称賛に値するのはホテルのフロント部分。すべて大道具と小道具が作ったと言われている。実際にこのようなホテルが存在していても全く違和感のない仕上がりになっている。『 シン・ゴジラ 』における首相官邸と同じく、映画の本道たるリアリティの追求を最も説得力ある形で感じさせてくれたのが、ホテルのフロントおよびロビーラウンジ部分。原作小説は未読なのだが、おそらく作者の東野自身のイマジネーションに忠実に、もしくはそれを超えるようなものを創り出したのではないだろうか。

 

木村拓哉と長澤まさみの演技も及第点。ホテルのフロント側とバックヤードでは表情や歩き方、声の出し方、顔つき、立ち居振る舞いの全般が、しっかりとしたコントラストを生み出していた。演技にメリハリのないタレント俳優が散見される中、この二人ぐらいキャリアがあれば、当たり前ではあるのだが。また、最初はぎこちなかったフロントクラークの新田が徐々にらしさを身につけていく過程は良かった。まさかシーンを順を追って撮影したのではあるまい。編集の勝利だろう。

 

ネガティブ・サイド

劇中で新田が3件のうちの1件のトリックを推理するのだが、いくらなんでも無理があり過ぎる。Jovianの義理の父親は元警察官だが、もしも義父が映画館にいたら、ブチ切れて怒鳴っていたか、失笑してしまっていたことだろう。Jovian自身もあまりの呆れから、思わず妻と見つめ合ってしまった。いやしくも殺人事件を捜査する警察が、関係者の証言だけを信じて、あれほど簡単な裏取りを怠るなど考えられない。リアリティのかけらもないトリックだ。

 

こちらはトリックではないが、最後に犯人が使う道具についても以下、白字で指摘しておきたい。麻薬や向精神薬の類と並んで、筋弛緩剤のような薬剤がどのように管理されているか、原作者、脚本、監督の誰も理解していないのか。それともリサーチもしていないのか。分かった上で、まあ、これぐらいならいいだろう、とリアリティの追求をある程度最初から放棄していたのか。看護学校や医学部では袋に入った注射器が無くなっただけで上を下にの大騒ぎになり、病院で上述の薬品がミリグラム単位で紛失しても警察や保健所、場合によっては都道府県知事に届け出なくてはならないということを分かっているのか。動物病院から使用の痕跡の残らない筋弛緩剤を盗み出してきたというが、そんな与太話があってたまるものか。

 

さらにプロモーションについても一言。

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何故このような販促物を作ってしまうのか。いやしくもミステリを原作にしている映画なのだから、それを観に来るファンにもかなりの割合でミステリファンがいるということが予想できないのか。ミステリファンの生態を理解できないのか。ミステリファンの最大の愉悦の一つは、読む/観る前に犯人を当ててしまうことだ。タイトルを読む、あらすじを読む、そして表紙の挿絵をじっくりと見る。それだけで犯人を割り出せてしまう小説と言うのも、実際に世に送り出されたこともあるのだ。上のイメージだけで犯人が分かるわけではないが、それでも相当数のミステリマニアが登場人物=役者を頭に入れて劇場に来たのは間違いない。そして彼ら彼女らのかなりの割合が、映画のある時点までに消去法で犯人が分かってしまったに違いない。全てはアホなパンフレットやポスターを作ってしまった広報担当の責任である。

 

また熱心な映画ファンであれば、とあるキャラクターが怪しいということもある瞬間に分かったはずだ。以下はかなりきわどいネタになるが、『 セント・オブ・ウーマン / 夢の香り 』や『 ドント・ブリーズ 』を観たことがあるならば、一目見ただけで違和感を覚えるシーンが挿入される。小説ならば叙述で乗り切れるかもしれないが、映画にしてしまうのにはちょっと無理がある設定だったか。さらに演出面で言えば、長澤まさみのとあるルーティンやキムタクのとある所作が余りにもくどすぎた。『 64 』の電話帳ぐらいでよかったのだが。

 

総評

豪華俳優陣をそろえて物語を作るのは良い。また豪華俳優陣をそれぞれチョイ役で用いるというのも『 シン・ゴジラ 』で成功した手法なので許容可能である。問題なのは、ミステリを作るに際して最も大事な犯人とトリックの部分が、あまりにもお座成りになっていることなのだ。ライトな映画ファンにはそれなりのエンターテインメントになるのだろうが、年季の入ったミステリファンや映画マニアを唸らせる出来では決してない。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, D Rank, ミステリ, 日本, 木村拓哉, 監督:鈴木雅之, 配給会社:東宝, 長澤まさみLeave a Comment on 『 マスカレードホテル 』 -トリックとプロモーションに欠陥を抱えた作品-

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