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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 監督:廣木隆一

『 恋に至る病 』-近年まれにみる駄作-

Posted on 2025年10月28日 by cool-jupiter

恋に至る病 15点
2025年10月25日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:山田杏奈 長尾謙杜
監督:廣木隆一

 

『 ミスミソウ 』や『 屍人荘の殺人 』、もしくは『 死刑にいたる病 』のようなテイストを期待していたが、全然違う作品だった。端的に言って残念な出来である。

 

あらすじ

親の転勤のため転校を繰り返してきた望(長尾謙杜)は、隣家の住人で新しい学校のクラスメイトの景(山田杏奈)と出会う。二人の距離は近づいていくが、それを快く思わない人物もいて・・・

ポジティブ・サイド

序盤で景が万物流転やら諸行無常など、理解しているのか怪しい概念を口にするが、サルトルのアンガージュマンの考え方を述べたのにはびっくりした。対象は限られると思うが、哲学専攻の大学生は鑑賞時に耳を澄ましてみよう。

ネガティブ・サイド

キャラクター同士の関係の始まり、その変化や深化がまったくと言っていいほど描けていない。たとえば望がクラスの女子を下の名前で呼んだりする契機を景と絡めて描けば、それも景というキャラの深堀りにつながっただろうに。

 

ブルーモルフォの設定も意味不明。なるほど、ソシャゲでログインボーナスをもらい続けているうちにやめられなくなるということはある。しかし、デイリーミッションをこなしているうちにやめられなくなるというのは、何らかの reward なしには考えられない。そのリワードが何であるのかが暗示すらされないのでは、ブルーモルフォの恐怖が伝わってこない。

 

そのブルーモルフォ絡みの殺人事件でも、クラスメイトばっちりニュース映像に映し出されているのに「クラスターが云々」やら「何でも知ってるね!」やら、アホかな?いや、それが景の人心掌握術だというならいいが、だったらそういうシーンを事前に入れておいてくれ。たとえば額の傷の治りが不安になって、それを女子連中にLineか何かで打ち明けて、取り巻き女子たちも同じような傷を自分でつけて・・・のような描写があれば、クラスが狂っていくスタートとしては悪くなかっただろう。

 

いじめのシーンもえらい中途半端。せっかくのPG12なのだから、もっと陰湿かつ痛みを感じさせる描写が欲しかった。それよりも、根津原の頭が悪すぎて呆れるしかなかった。自分でいじめの証拠を写真にして、それを自分で拡散するとかアホかな。前田敦子演じる刑事も、望に色々尋ねる前に現場(防犯カメラの映像や結婚のような証拠が死ぬほど残っていると思われる)の周辺をくまなく洗え。とことん無能臭を放つ刑事だったな。

 

兎にも角にも望と景の関係の描写があまりにも薄く、足りない。その一方で無駄なシーンが多すぎ。先輩の話とかいらんやろ。その先輩も、あんな小さな凶器であんな凶行は無理。ペーパークラフトではなく、せめて彫刻でも作らせておくべきだった。

 

引きのカメラからのロングのワンカットを多用していて、なにか作劇的な意味があるのかと思ったが特になし。カメラワークには意図を込めるべし。また、イッてしまったキャラは皆、アップで顔を映していたが、そこで瞬きするキャラとしないキャラ、また瞬きしないキャラも耐え切れずに最後に瞬きしてしまうなど、演技・演出の両面で課題を残した。

 

総評

観ていて苦痛を感じるほどつまらなかった。山田杏奈は好きな役者だが、今回はミスキャスト。血なまぐさい役は似合うが、一種のカリスマ性というか、魔性の女としては弱い。望を演じた役者もアイドルか?セリフ回しが拙すぎる。童顔だけで起用されたのだろうか。中高生ならそれなりに楽しめるのかもしれないが、大人にはきつい。チケット購入の前に、よくよく検討のこと。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

morpho

作中では蝶の名前として言及されるが、これはギリシャ語で「形」の意味。蝶といえば卵→幼虫→さなぎ→成虫と形を変える代表選手である。ちなみに英語学習界隈で時折見られる「語源から単語を覚えよう」で言われる語源とは、ほとんどの場合、実は語源ではない。それらはたいてい接頭辞、語幹、接尾辞で、これらは morpheme = 形態素の仲間である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 さよならはスローボールで 』
『 ハウス・オブ・ダイナマイト 』
『 羅小黒戦記2 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, F Rank, サスペンス, 山田杏奈, 日本, 監督:廣木隆一, 配給会社:アスミック・エース, 長尾謙杜Leave a Comment on 『 恋に至る病 』-近年まれにみる駄作-

『 母性 』 -トレーラーを観るなかれ-

Posted on 2022年12月9日 by cool-jupiter

母性 50点
2022年12月4日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:戸田恵梨香 永野芽郁 高畑淳子 大地真央 中村ゆり
監督:廣木隆一

湊かなえ原作ということでチケット購入。原作は未読だが、おそらく脚本家および監督が小説の良さを少しスポイルしてしまったと思われる。トレーラーも misleading すぎる。

 

あらすじ

箱入り娘のルミ子(戸田恵梨香)は、絵描きを趣味にする鉄工所務めの田所と結婚する。娘の清佳(永野芽郁)を授かり、幸せな家庭を築いていた。ルミ子は母からの教え通りに清佳に惜しみなく愛情を注いでいく。しかし、清佳が祖母、つまり自分の母の愛情を受けることにルミ子は内心で激しく嫉妬していて・・・

ポジティブ・サイド

観始めた瞬間から、よく分からない違和感を覚えた。看護師や助産師が戴帽しているシーンを見て「いつの話だ?」と感じた。また、ルミ子の家の電話が固定電話。さらに新居の家のテレビがブラウン管のテレビ。この時点で、これは昭和の物語なのだ、と確信できた。この時点で俄然興味が湧いてきた。Jovianも一応昭和生まれなわけで、アメリカ人の同世代の demographic が1980年代をノスタルジックに思っているように、我々世代も昭和を懐かしむのである。

 

本作がオーディエンスに感じ取ってほしいと思っている点は、タイトルにもなっている母性である。母と女性の違いは何か。それは、母は子どもを産んでいるということ。女は弱し、されは母は強しと言われるが、母性も行き過ぎると鬼子母神になってしまう。我が子は可愛いが、他人の子はどうでもいいということになってしまう。ある意味でその究極形が『 母なる証明 』だった。我が子への愛が狂気の暴走を見せる大傑作だ。その一方で、邦画も『 MOTEHR マザー 』を近年送り出してきている。我が子を愛さず、我が子に自分を愛させるという母親にフォーカスした怪作である。本作はどちらの系譜に属するのか。そのどちらにも属さない。

 

母の愛を一身に受けたルミ子が、自分が母になることでその愛を我が子に向ける・・・ようにならない。逆に、自らが母であるにもかかわらず、敢えて娘であり続けようとするルミ子の姿は異様に映る。戸田恵梨香は長澤まさみに近いレベルの演技を見せたと言える。

 

しかし、本作のタイトルにある母性を最も強烈に体現したのは、ルミ子の母親を演じた大地真央とルミ子の義母を演じた高畑淳子ではないだろうか。命をつなぐこと、その素晴らしさ、それを喜べること。そうした心を持ち、娘も孫も愛する大地真央。対照的に、息子の嫁をいびり倒す義母。この妖怪女優二人が同じ画面に出てくることはないのだが、明らかに二人は演技バトルをしている。この両者の演技対決だけでも鑑賞の価値がある。

 

母性とはことほどさように、女を優しくもするし、また醜くもする。ルミ子と清佳の築く関係の真実は何なのか。「母であること」と「母であろうとすること」は同じものなのか、異なるものなのか。愛憎入り混じる母娘の関係は母性を育むのか、それとも阻害するのか。普通に考えれば愛は母性を育みそうだが、ルミ子と実母の関係はそうではない。一方で、ルミ子と義母の関係は最終的には非常に興味深い形に発展する。そこから考えられるルミ子と清佳の関係、さらにその先をどう想像するべきなのか。本作が我々に問うのはそこである。

 

ネガティブ・サイド

永野芽郁の力不足が顕著だった。『 マイ・ブロークン・マリコ 』で少し殻を破った感があったが、女の友情を体現することはできても、母の愛と憎しみを一身に受け止める役は演じきれなかったという印象を強く受けた。まだ女子校生あるいはOL止まりなのかな。箱入り娘のまま母親になってしまった戸田恵梨香に完全に食われてしまっていた。いや、テーマは母性であって娘性ではないので、抑えた、控え目な演技をしていたと捉えることもできる。であれば、トレーラーで母と娘の対立を煽るべきではない。これは宣伝・広告のマズさが本編の面白さを減じてしまった悪しき例だろう。

 

そもそも予告編は本作をミステリとして売っていたのではなかったか。「母の証言を信じないでください」、「娘の証言を信じないでください」という、立場によって事象の見え方、捉え方が違うというところが本作の肝と言えるほど大きくなかった。というか、女子高生が首を吊ったという事件を冒頭で映しておきながら、同時に教員として働いている永野芽郁を映してしまっては、ミステリとしての面白さ=女子高生は永野芽郁なのか、何が彼女を自死に追い込んだのかという疑問への興味がしぼんでしまう。トレーラーから普通に考えれば、死んだ女子高生は永野芽郁の同級生もしくはクラスメイトだろう。冒頭でいきなり「それは違います」と言われても・・・

 

母性にフォーカスするなら、夫の浮気やら何やらはばっさりカットしてもよかった。あるいは夫の浮気を「男の甲斐性」だと擁護する義母像をもっと強く打ち出すべきだった。2022年は昭和でいえば97年。完全に大昔だ。または甲斐甲斐しく義母を介護するルミ子だが、遺産は一銭も入らないということをもっと強調して、現在は血縁がなくても介護者に遺産が入るような法的根拠が整備されたという情報をサラリと挿入することもできたはず。母性というテーマをルミ子というキャラクター周辺に限定して描くことで、本当に現代に訴えるべきテーマがぼやけてしまったと感じる。

 

総評

トレーラーから『 白ゆき姫殺人事件 』のようなものを想像していたが、これが全然違った。予告編と本編が違うのは別に構わない。ただ、ミステリ要素を前面に出しておきながら、この作りでは納得できるものも納得できない。物語そのものも面白さやインパクトに欠ける。男性と女性で受け取り方が大きく異なる作品だと思うが、Jovian妻もあまり感銘は受けなかったようだ。もしもチケットを購入するのなら、高畑淳子や大地真央といった大ベテランの演技を堪能することに集中されたい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Women are weak, but mothers are strong.

女は弱し、されど母は強しの意。出典はビクトル・ユーゴーの『 ああ無情 』らしいが、読んだのが大昔過ぎて覚えていない。シンプルだが、女も母も複数形にするのがポイント。そういえば数年前にバズった動画がある。ミステリではないが、ドンデン返しなら本作よりこちらの動画の方がインパクトは上だろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 グリーン・ナイト 』
『 MEN 同じ顔の男たち 』
『 ホワイト・ノイズ 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, サスペンス, ミステリ, 中村ゆり, 大地真央, 戸田恵梨香, 日本, 永野芽郁, 監督:廣木隆一, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画, 高畑淳子Leave a Comment on 『 母性 』 -トレーラーを観るなかれ-

『 ここは退屈迎えに来て 』 -青春と現実の光と影のコントラストが映える-

Posted on 2018年10月29日2019年11月4日 by cool-jupiter

ここは退屈迎えに来て 50点
2018年10月25日 梅田ブルク7にて鑑賞
出演:橋本愛 門脇麦 成田凌 渡辺大知
監督:廣木隆一

f:id:Jovian-Cinephile1002:20181029013048j:plain

以下、ネタばれに類する記述および私的考察あり

 

小説でも映画でもゲームでも、まず手に取ってみたくなる、もしくはクリックしてみたくなるのは、そのタイトルが魅力的なものである時だ。タイトルが魅力的というのは、こちらがそのタイトルの意味をもっと深く知りたい、と思わせるような妖しい力を持っているということだ。少年時代に『 ドラゴンクエスト 』や『 ファイナルファンタジー 』と出会った方々ならば、そのタイトルの不可思議さに惹き付けられた記憶、印象が鮮明であると思う。本作はしかし、先行する魅力的なタイトルを持つ映画と同じレベルに達しなかった作品である。

 

あらすじ

私(橋本愛)は東京で過ごすこと10年、「何者」かになることができず地元に帰り、フリーのタウン誌の記者をしている。ある時、友人の誘いで高校時代の憧れの存在だった椎名(成田凌)に会いに行くことになる。一方では、高校時代の椎名の彼女「あたし」(門脇麦)は、地元の冴えない男と付き合いながらも、椎名のことを吹っ切れずにいる。青春の輝き、東京への憧憬、椎名という太陽のような存在。誰もが何かを抱えて生きていく姿を、時系列を変えて、オムニバス的に活写していく作品。

 

ポジティブ・サイド

まず、最も強く印象に残ったのは渡辺大知演じる新保だった。Jovianの気のせいなのかも知れないが、おそらくゲイもしくはバイセクシャル、もしかしたらトランス・ジェンダーなのではなかろうか。本人がそれを自覚できていないのかもしれないが。煙草の吸い方が、男のそれではないように思えて仕方がなかった。また、終盤に新保が原付きで疾走する場面があるのだが、そこでの光の使い方には是非とも注目してほしいと思う。あれは乳房の象徴にしか見えなかった。独特の哲学を持つキャラで、「幸福であるためには、まず何よりも孤独であれ」などとまるでアリストテレス哲学のような思想を披歴してくれる。彼の幸福論および死生観は、Jovianのそれと近く、ある観客によっては非常に強く共感でき、また別の観客によっては嫌悪の対象となろう。どう感じるか気になる方は、劇場へ行くべし。

 

本作は『 桐島、部活やめるってよ 』と同工異曲の青春群像劇である。青春というよりも、モラトリアムと言った方が近いだろうか。椎名という太陽のような存在に照らされていた高校時代が、ある者にとっては神話的な崇高さを帯びているところが、滑稽ではあるがリアリティの源泉にもなっている。程度の差こそあれ、こうした傾向は青春を完全な過去という遠近法で見られる人にならば、ある程度共通してみられるものだ。アメリカのちょっとしたテレビドラマや映画の同窓会シーンでは、アメフトの試合のあのパスが云々、野球の試合のあの補殺が云々、プロムで誰それと誰それが云々・・・ 人は誰もが否応なく成長するが、その成長を拒む人もいるし、個人の内面レベルで成長を拒む部分も存在する。そうした、ある意味では非常にダークな心の領域を本作は見事にあぶり出す。同様のテーマの作品に興味があれば、『ワン・ナイト』(原題は”Ten Years”)をお勧めしたい。

 

この作品の特徴として、閉鎖空間でのロングのワンカットを多用するということが挙げられる。ワンカットと言えば『 カメラを止めるな! 』が近年の白眉だが、こちらは車内、室内、ファミレス内、ラブホ内、ゲーセン内と、とにかく閉鎖空間での撮影にこだわりを見せる。このことが、観る者に否応なしに最も閉鎖された空間=人間の心を意識させる。本作は椎名という太陽に照らされた者たちと、椎名の陽の部分にまったく興味のない者たちとに二分される。そんな彼ら彼女らの紡ぐアンソロジーを、時系列をバラバラに描くのだが、全てが終盤近くのとあるシーンに収斂するにつれて、その意図が見えてくる。製作者が観客を信頼しているということで、私的に評価したい。

 

そうそう、本作はタイトルをスクリーンに映し出すシーンが完璧なのである。『 アメリカン・アサシン 』並みに素晴らしい。これがあるから、色々とケチをつけたくなる箇所があっても、上手くまとまったなという印象を持てるのだ。

 

ネガティブ・サイド

残念ながら、すでに『 勝手にふるえてろ 』で使われたネタである。こうしたトリックというかツイストは、どうやっても最初に使った者/物の勝ちなのである。もしも『 勝手にふるえてろ 』を未見なら、すぐに観よう。

 

渡辺大知と片山友希以外の若手キャストが、全体的に力不足である。特に橋本愛は、役者業は厳しいかもしれない。『 貞子3D 』や『 Another アナザー』のように、あまり喋らない役であれば良いが、基本的に台詞に抑揚が無さ過ぎる。棒読みとまでは言わないが、どんな作品に出ても、結局は「ああ、いつもの橋本愛か」と思えてしまう。これがニコラス・ケイジやトム・クルーズのレベルにまで突き抜けてしまえば良いのだが、日本でそんな俳優はあまり見当たらない。強いて言えば北野武ぐらいか。本人が本人を演じるのが一番うまいというタイプの役者だ。あるいは、どんな役も自分色に染めてしまうという、演技力ではなく素の存在感、カリスマ、オーラ、そういったもので勝負できる力。橋本愛はそのレベルにはいないし、今後も行かないだろう。と書いてきて、もう一人思い当たった。樹木希林である。一癖あるおばあちゃんキャラは全部この人だった。『 万引き家族 』然り、『 海街Diary 』然り、『 我が母の記 』然り。合掌。

 

閑話休題。本作の最大の弱点(になっているかもしれない)ポイントは、東京に住んでいる人間に、果たしてどれだけ響くかということだろう。ここで言う東京とはもちろん東京都のことではない。地理的あるいは行政的な区分での東京は、東京ではない。Jovianも東京のど真ん中(地理的な意味で)に10年半住んでいたことがあるから分かる。我々が東京と言う時、それは往々にして山手線の内側もしくは周辺であったり、吉祥寺、高円寺、中野などのちょっとした離れ、隠れ家的な雰囲気の街までである。立川は決して東京ではない。況や奥多摩をや。実際にJovianの大学のクラスメイト(正確にはセクションメイト)が、「私は浦和(当時はまだ浦和市だった)に住んでるから、池袋まで40分ぐらい。八王子の人は新宿に出るのに50分ぐらいかかるから、その意味では浦和は八王子より東京なんだよ」と言ったのをよく覚えている。また寮の同級生も「木更津は確かに遠いけど、アクアライン通ったら近いんだっつーの」と言っていたのも覚えている。東京には強烈な重力がある。東京までの距離の近さを競うような意識が近隣の県や市町村にあり、それは東京都内でも同じだった。そうした東京の内部にどっぷり浸かっている人は、本作を見て「超楽しい」と言うだろうか。それとも悲憤慷慨するだろうか。おそらくどちらでもない。無関心を装うか、無関心を貫くかだろう。東京に住んだことがある、あるいは東京の空気がどんなものかを知っていなければ、本作のアイロニーが届かないというのは残念なことだ。

 

総評

観る人を相当に選ぶだろうなと思う。高校生以下はおそらく除外されるし、40代以上の男性にとっては精神的にきつい描写がある。ガールズトークが花開くシーンはそれなりに楽しめるので、「私」もしくは「あたし」に近いアラサー女子にこそ観られるべき作品であるのかもしれない。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, D Rank, ヒューマンドラマ, 成田凌, 日本, 橋本愛, 渡辺大知, 監督:廣木隆一, 配給会社:KADOKAWA, 門脇麦Leave a Comment on 『 ここは退屈迎えに来て 』 -青春と現実の光と影のコントラストが映える-

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