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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 監督:ジョーダン・ピール

『 NOPE / ノープ 』 -ジョーダン・ピール世界へようこそ-

Posted on 2022年8月28日 by cool-jupiter

NOPE  / ノープ 70点
2022年8月27日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ダニエル・カルーヤ キキ・パーマー スティーブン・ユアン ブランドン・ペレア
監督:ジョーダン・ピール

Jovianは矢追純一世代だったので、UFOには一時期かなりハマっていた。そのUFOをジョーダン・ピールが料理するというのだから、観ないわけにはいかない。

 

あらすじ

馬の飼育と調教を生業にするヘイウッド家の父が、謎の死を遂げる。長男OJ(ダニエル・カルーヤ)は、父の死と空に一瞬見えた謎の飛行物体が関連していると確信。妹のエム(キキ・パーマー)と共に、謎の物体をカメラに収めようと考えるが・・・

ポジティブ・サイド

予告や内容紹介の段階では、M・ナイト・シャマランの『 サイン 』のようなストーリーなのかと思った人は多くいそう。実際に似ているところもあったし、そうでないところもあった。いずれにせよ確実なのは、ジョーダン・ピールがまたしても非常にオリジナル作品を送り出してくれたことだ。

 

オープニングのTVショーはまったくもって意味不明。また映画の各段階で馬の名前が画面に大々的に表示される。これもこの段階では意図が見えない。しかし、後々これらが本作のテーマとダイレクトにつながっていることが分かる。

 

ハリウッドのはずれのはずれにある広大な馬の飼育場、その上空の雲の中に得体の知れない存在がいる。そして、それはどうやら人や馬を襲う。この正体不明の存在との闘争・・・ではなく、とにかくこいつを写真や映像にしてビッグになってやろう、というところが現代風で面白い。また、その奇妙なモチベーションに対しても、歴史的な説明が付け加えられているのが興味深い。

 

主人公OJを演じるダニエル・カルーヤは、『 ゲット・アウト 』とはガラリと異なる寡黙な男。しかし馬および野生動物に対する造詣が深く、そのことが物語上で大きな意味を持っている。また馬の調教師であるというバックグラウンドに対しても、歴史的な説明が付け加えられているのは興味深い。映画産業の初期の初期から現代に至るまで、我々は物語(往々にしてそれは事件)をカメラという媒体で撮られ、スクリーンという媒体に映写されるものだと思ってきた。しかし、本当の事件が自分の身にリアルに起きた時、人はどう対応するのか。これが本作の裏テーマなのではないかと思う。

 

徐々に正体を現すUFOと、それをカメラに収めようとするOJとMの兄妹や、奇妙な協力者エンジェル、自身の経験が裏目に出て被害に遭ってしまうジュープなど、それぞれの登場人物が物語に意味と味わいを与えている。個人的に最も印象に残るのは、後半に登場する老カメラマン。常にPCモニターで「あるもの」を見ているのだが、本作ではそれは痛烈な皮肉に見えてくる。UFOで始まり、ハリウッドの新たな神話の誕生で終わる。何を言っているのか分からない?だったら劇場で観るべし。

以下、マイナーなネタバレあり

 

ネガティブ・サイド

序盤から中盤にかけての展開がスリリングだったのに対して、終盤にかけての展開は少しテンポが落ちたと感じる。「あれは何だ?」、「もっとちゃんと見せろ」という中盤までのテンションが、後半にまで持ち越されていない。謎の存在をカメラに収めるというミッションに、途中で別キャラが入り込んでくるからだろう。もしも牧場の倉庫に主導のフィルムカメラが眠っていて「ひいひいひいお爺ちゃん、ありがとう!」という展開であれば、また異なる印象を受けたと思う。

 

これはトレーラーの罪なのだろうが、Mがしきりに “Don’t look, don’t look.” と言いながら歩くシーンは盛大なネタバレだった。

 

UFOが『 ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒 』的な変形を見せるのはちょっといただけない。もっと無機質なままで良かったのにと思う。写真に収めるべきは馬に乗ったOJであるべきだったと思う。

 

総評

『 ゲット・アウト 』のような意表を突いたSF的な要素もありながら、常に社会批判も盛り込んでくるのがジョーダン・ピール流。今作でも伝統的な映画業界やパパラッチ、YouTuber を皮肉る一方で、エンターテイメントとしての面白さもしっかり追求できている。ジャンルとしてはSF+ホラーになるのだろうが、このホラー映画は観る人を選ばない。ある意味で、『 ゲット・アウト 』や『 アス 』よりも、本作の方がジョーダン・ピール世界への入門編としては適しているかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Nope

No のくだけた言い方。No をクイックに歯切れよく発音すると、語尾に p の音がついてくる。同じことは Yes にも言える。これをインフォーマルに言うと Yep となる。いずれの表現もかなりカジュアルな表現なので、ビジネスの場では使わないようにしたい。

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, B Rank, SF, アメリカ, キキ・パーマー, スティーブン・ユアン, ダニエル・カルーヤ, ブランドン・ペレア, ホラー, 監督:ジョーダン・ピール, 配給会社:東宝東和Leave a Comment on 『 NOPE / ノープ 』 -ジョーダン・ピール世界へようこそ-

『 アス 』 -我々の敵とは誰か-

Posted on 2019年9月22日2020年4月11日 by cool-jupiter

アス 75点
2019年9月19日 東宝シネマズ梅田にて鑑賞
出演:ルピタ・ニョンゴ
監督:ジョーダン・ピール

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190922015435j:plain 

ジョーダン・ピール監督の『 ゲット・アウト 』は、一部意味不明な描写があったものの、全体的にはギャグとホラーの両方をハイレベルに融合させた傑作だった。ピール監督の意識の根底に人種差別の問題があるのは間違いない。そして、その問題意識は本作にも貫かれているし、この作品はそのように観られるべきだろう。だが、Jovianは直感的には少々異なる見方、分析および考察をした。

 

以下、ネタばれに類する記述あり

 

あらすじ

アデレード(ルピタ・ニョンゴ)は、幼少期に自らの分身を目撃したショックから失語症になってしまった。月日は流れ、彼女は夫と娘と息子と共にカリフォルニアにバカンスにやってきた。しかし、彼女はそこで過去のトラウマがまたしても自分の身に迫っていると予感し、恐怖に怯える。果たして、深夜、家の外に自分たちそっくりの一家が現れて・・・

 

ポジティブ・サイド

冒頭のウサギは異世界への案内人代わりか。『 マトリックス 』でもそうだったが、J・ピール監督は、どのような世界に我々を誘ってくれるのか。

 

ドッペルゲンガーと遭遇する物語で近年の白眉と言えばドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『 複製された男 』だろうか。アデレードたちのもとに現れたアス=私たちは、普通に考えれば地下世界のクローンなのだが、Jovianは彼ら彼女らはインターネット世界のアバター=自分の分身を体現したものなのかと感じた。たいていの人はインターネット上では意見が過激になるし、他者に対して攻撃的な態度に出てしまいがちだ。そして、そんな一部の過激なネット上の声が、現実世界の政治にまで影響を及ぼす。そんなディストピアな世界にまさに我々は住んでいる。同じ国に住まう者が、同じ国に住まう者を攻撃する。アジア系のアメリカ人、ヒスパニック系のアメリカ人、様々なアメリカ人が存在する。『 ボヘミアン・ラプソディ 』でフレディ・マーキュリーを演じたラミ・マレックはエジプト系のfirst generation Americanであると、自身がオスカー授与式の際に語っていたことを覚えている映画ファンも多いだろう。一方で『 ブラック・クランズマン 』に見られるように、同じアメリカ人でありながらも、白人か黒人かという違いだけで、一方が他方を攻撃の対象にすることもある。また、人種の別に依らず、価値観、信条などでも一方が他方を攻撃することがある。プロライフ派が人工中絶を行うクリニックを爆破する事件(というか犯罪、またはテロ行為)は今でも行われているのだ。また政治的思想もアメリカの分断の特徴である。共和党主義者と民主党主義者で“分断”されるアメリカ=USA=US=Us=アスを、この映画は象徴しているのだろう。現実世界ではトランプ支持の声は決して大きくなかったものの、実はネットではトランプ支持の声が相当にあったという分析もある。まるで梅田望夫が著書『ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる 』で2005年の郵政解散での小泉勝利を予見したように、ネット上の言説空間での声は時に現実世界にまで影響を及ぼすのである。

 

こうした穿った、明後日の方向の分析をしてしまうのは、Jovianが日本の現状について問題意識を抱いているからだろう。『 判決、ふたつの希望 』で日本のコンビニ店員さんたちがどんどん外国人労働者になってきていることに触れたが、これは外国人による日本への攻撃なのか。つまり虐げられる、弱い立場にあった者たちが力(それは往々にして経済力と政治的な発言力だ)を持ちつつあることを脅威であると感じることなのか。それとも、外国人との共存を模索する契機とすべき変化なのか。レッドが片言の英語を話すのは、現代日本で問題になっている親の片方が外国人である子どものランゲージ・バリアーのモチーフと見るのはさすがに穿ち過ぎか。いや、オーソドックスな分析や考察は他サイト、他ブログに譲ろう。本当に強調すべきは、本作は実に多様な見方を許容する深みのある作品であるということだ。

 

他に特筆すべきことがBGMのクオリティの高さである。『 ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男 』でも重低音の効いた、静かで、それでいて迫力のあるサウンドが魅力的だったが、本作のBGMの重低音は下腹部ではなく背筋に響いてくる感じがする。このサウンドは音響の良い劇場で味わって頂きたいと思う。

 

ルピタ・ニョンゴ渾身の演技。ジョーダン・ピール監督の現実批評とユーモアのセンスのバランス感覚。意表を突くカメラワークもある。決して見逃すことなかれ。

 

ネガティブ・サイド

普通の人間が決して知らない、近づけない地下世界があるという世界観は、既に『 アンダー・ザ・シルバーレイク 』が先行している。また、序盤早々のモグラたたき(Whack ‘em All)は地下に住む存在が顔を出したら、すかさずブッ叩くという世界観の背景を表したものかと思ったが、それを説明または強調する描写や演出はなかった。うーむ・・・

 

アスの長男の撃退が、江戸川乱歩の『 目羅博士の不思議な犯罪 』である。かなり衝撃的なシーンのはずだが、個人的には「おいおい、ここでそのネタかよ」であった。だが、ここは評価が分かれるシーンであろう。たまたまJovianのテイストに合わなかっただけである。

 

父親がユーモラスなのだが、『 ゲット・アウト 』のリル・レル・ハウリーの面白さには到底及ばなかった。同じ監督であっても微妙にトーンの異なる映画であったが、今回の父親はもっと振り切った面白さを表現して欲しかった。アスが家の外で手に手を取っているシーンは、もっとファニーにできただろう。そうすることで、ストーリーの陰陽の反転がもっと鮮やかに感じ取れることができただろう。

 

総評

これは傑作であると言ってよい。『 ゲット・アウト 』とどちらが上かと言われれば、評価は分かれるだろう。一つ言えるのは、ピール監督は、映画でもって現実批評をさせれば、いま最も旬な監督であるということだ。US=アメリカのことだけだと思わずに、この物語現代日本社会に当てはめた時に、どのようなアレゴリーになっているかを考察してみるとよい。きっと様々な仮説が生まれてくることだろう。単なるホラーではない、思考を刺激するホラー映画である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

You gotta be kidding me!

 

マイケル・ルイス著の『 マネーボール:不公平なゲームに勝利する技術 』でビリー・ビーンが他球団のドラフト1位指名を聞いた時に“You fucking gotta be kidding me!”と叫んだとされる。訳書では「ほんとか、おい!」となっている。何か信じがたいこと、冗談だろうと思えるようなことが起きた時に、この台詞を使ってみよう。

 

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