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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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タグ: 監督:ジャン=リュック・ゴダール

『 気狂いピエロ 』 -古典的な男女の刹那の物語-

Posted on 2020年6月7日 by cool-jupiter

気狂いピエロ 70点
2020年6月5日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ジャン=ポール・ベルモンド アンナ・カリーナ
監督:ジャン=リュック・ゴダール

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200607005255j:plain
 

相も変わらず近所のTSUTAYAは『 ジョーカー 』推しのようである。ひねくれ者のJovianは、ならばと『 パズル 戦慄のゲーム 』を借りて失敗した。というわけで今回は間違いのないようにゴダール作品をチョイス。

 

あらすじ

フェルディナン(ジャン=ポール・ベルモンド)は結婚生活に飽いていた。そんな時にかつての恋人マリアンヌ(アンナ・カリーナ)と出会い、一夜を共にした。だが、翌朝の部屋には謎の男の死体が。そして、その部屋にまた別の男が訪ねてくる。二人は男を始末し、あてのない逃避行に出るが・・・

 

ポジティブ・サイド

とにかくマリアンヌを演じたアンナ・カリーナの魅力的である。Jovianは英会話講師として延べ数百人以上教えてきた中で、最も美人だった女性と髪型と輪郭、なによりも目がよく似ているのである。まさにfem fatalだな、と感じる。男というのは美女に破滅させられてナンボなのかもしれない。それは古今東西に普遍の真理なのかもしれない。

 

逃げていく先々で小さな犯罪を繰り返していくフェルディナンとマリアンヌの姿に、どうしたってハッピーエンドなどはありえない。ならば破滅が訪れるまでに、精一杯に生を謳歌するまで。詩想に欠けた思想の持ち主であるフェルディナンは、とにかく衒学的な言葉ばかりを呟く。対照的にマリアンヌの紡ぎ出す言葉は豊かな感情に彩られていて、運動的であり行動的なものだ。つまり、ゴダールが映し出そうとしたのは、この二人のキャラクターの対比ではなく、男性性と女性性の対比でもあったのだろう。現にフェルディナンは「時が止まってほしい」などどファウストのようなセリフを吐くロマンティストだし、相方のマリアンヌはセンチメンタルでミステリアスでセクシーだ。そして、この物語の主題はマリアンヌに属することは、序盤に登場するサミュエル・フラー監督の言葉、すなわち「 映画=エモーション 」からも明らかだ。

 

本作は物語というよりも芸術作品の性格の方が強いと感じる。フェルディナンとマリアンヌがアパルトマンの最上階で繰り広げる殺人劇と逃走のワンカットは芸術的である。またガソリンスタンドでの疑似ボクシングシーンや、別のガソリンスタンドで車を盗み出すシーンには舞台演劇的な面白おかしさがある。なによりマリアンヌが自らの掌の運命線の短さを面白おかしく嘆きながら歌い、海辺の木々の間を縫うようにフェルディナンと走り抜けていき、語り合い歌い合うシークエンスには、陽気な絶望感がある。マリアンヌは執拗にフェルディナンをピエロ呼ばわりするが、これは非常に象徴的なことだ。『 ジョーカー 』のキャッチフレーズ、“Put on a happy face.”を引用するまでもなく、ピエロの顔は笑っていても、頭は非常に冷静に笑いを狙っているか、もしくは心が怒りや悲しみに支配されているものだからである。そう考えれば、見ようによってはアホな結末にも、それなりに納得がいくものである。物語ではなく場面場面のドラマを楽しむように鑑賞するのが良いのだろう。

 

ネガティブ・サイド

南仏のビーチでアメリカ人観光客を相手にベトナム戦争を茶化して小金を稼ぐシーンは、フランス流の、というよりもゴダール流の反米・反ベトナム戦争宣言なのだろうが、もっと間接的な描写はできなかったのだろうか。『 サッドヒルを掘り返せ 』(最近、Blu-rayを買った)でセルジオ・レオーネは「主義主張を宣言する映画ではなく、人々の語りを促進するような映画を作りたい」という旨を語っていた。Jovianは別に映画人でも何でもないが、レオーネの意見に与する者である。

 

また、この時のベトナム人女性の化粧や衣装が、VCに川上貞奴を足して2で割ったようなものに映った。貞奴をご存じない方は伝説の踊り手ロイ・フラーを描いた『 ザ・ダンサー 』を鑑賞されたい。

 

全体的にロングのワンカットのシーンは印象的だが、フェルディナンが風呂場で水責めされるシーンだけはちゃちいと感じた。それこそ息ができないというところまで追い込んでも良かったはず。線路に座り込ませたり、結構高いところからジャンプさせたりという演出をしているのだから、水責めシーンにもっと注力できたはずだ。

 

総評

なにやら『 太陽がいっぱい 』と『 ファム・ファタール 』と『 テルマ&ルイーズ 』と『 俺たちに明日はない 』のごった煮を観たよう気分である。ということは、それだけ古典的なキャラクター造形や物語構成になっているわけで、見ようによっては新しいとも古いとも言える。ただ一つだけ確かなのは、去年の暮れに亡くなったアンナ・カリーナと再会するのであれば、本作はそのベストな一作だろうということだ。

 

Jovian先生のワンポイント仏語レッスン

À la recherche du temps perdu

In search of lost time = 失われた時を求めて、の意。言わずと知れたマルセル・プルーストの大部の労作、『 失われた時を求めて 』である。Temps=Timeである。これがtempoにそっくりだということが分かれば、temporaryやcontemporaryといった語の意味を把握しやくなるだろう。

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 1960年代, B Rank, アンナ・カリーナ, ジャン=ポール・ベルモンド, ヒューマンドラマ, フランス, 監督:ジャン=リュック・ゴダール, 配給会社:オンリー・ハーツLeave a Comment on 『 気狂いピエロ 』 -古典的な男女の刹那の物語-

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