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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 監督:キム・ヨンファ

『 THE MOON 』 -韓国産の国威発揚映画-

Posted on 2024年7月9日2024年7月9日 by cool-jupiter

THE MOON 60点
2024年7月6日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ド・ギョンス ソル・ギョング
監督:キム・ヨンファ

 

怪作『 ミスターGO! 』の監督で、傑作『 モガディシュ 脱出までの14日間 』の製作を務めたキム・ヨンファが監督/脚本を努めた作品ということでチケット購入。

あらすじ

韓国のロケット「ウリ号」は米国に次ぐ月面有人探査を実行するため、3人のクルーを乗せて月軌道を目指していた。しかし太陽風の影響で通信が途絶、修理のためEVAに従事していたクルー2名も命を落としてしまう。ひとり残されたソヌ(ド・ギョンス)を救出するため、前ミッションのフライト・ディレクターだったジェグク(ソル・ギョング)が呼び戻されるが・・・

ポジティブ・サイド

『 アポロ13 』や『 ゼロ・グラビティ 』、『 ライトスタッフ 』、『 オデッセイ 』などの先行ハリウッド作品を意識していることが伺える。ハラハラドキドキが最優先。そしてその期待にしっかり応えてくれている。韓国映画の「とにかくエンタメ路線に徹しよう。社会的なメッセージはその後だ」という割り切った姿勢は買いである。

 

地球側ではほぼすべて会話劇、宇宙および月ではほぼすべてアクションと、非常にメリハリが効いている。シリアス一辺倒にならないのは、政治家キャラが韓国特有の selfish な論理を振りかざしまくるから。政治は科学をサポートこそすれ、コントロールしてはならないという製作者の意図は十分に伝わった。

 

月面のCGは『 アド・アストラ 』並みに美麗で、そこで起きる事象のスリルと恐怖は『 アド・アストラ 』の月面上での小競り合いをはるかに超えていた。つくづくハリウッド作品の亜種をうまく作るものだと感心する。

 

名優ソル・ギョングの重厚な存在感と、若きアイドルのド・ギョンスの演出された未熟さが、一挙に逆転する終盤の展開は(その論理的・倫理的な意味合いはともかく)衝撃的だった。

 

中国映画『 ボーン・トゥ・フライ 』でも無人機が登場したが、時代は有人から無人へと移行しつつある。実際に本作でもドローンのマルが good job を見せてくれる(『 インターステラー 』のTARSを意識していたように思う)。それでも人が宇宙に向かうことについて、資源調査以上の意義があることを本作は示している。宇宙からは地球の国境は見えない。そして、宇宙に国境はないのだ。

 

ネガティブ・サイド

普通に考えて強烈な太陽風が吹き付けたり、あるいは流星雨が来ているというタイミングで、友人ロケットは打ち上げないだろうと思う。特に太陽風は普通に地上にも影響を及ぼすし、月に降り注ぐ極小天体もテレビで「月の謎の発光現象」と取り上げられるくらいにはメジャーな現象だ。ここらへんを無視してロケット打ち上げを強行するような背景が無かったのはリアリティの面で大きなマイナス。

 

目指すのが永久影のある月の南極だというのが気になった。月の極は航法的にそう簡単にたどり着ける場所ではない。月周回軌道に乗ってから、月の極を目指すというプロセスが大胆に省かれてしまったのが気になった。事細かに描写する必要はないが、月の極に着地できる軌道までどのように移動するのかについて言及だけはしてほしかった。

 

また、最終盤に驚きの告白が主要キャラクターによって連続でなされるが、これは普通に警察や検察が捜査して、事実ならば逮捕されるような内容。韓国の警察は無能だが、検察は有能。ポリティカル・ドラマの一面も有する作品だけに、この点も大いに気になった。

 

総評

『 ボーン・トゥ・フライ 』に続く、アジア発の国威発揚映画。日本もハヤブサが帰って来た時には立て続けに関連映画が3本公開されていたが、もはやそういう映画は作れないのだろうか。最後に流れる Fly Me to the Moon がハリウッドの『 フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン 』の壮大なCMソングに聞こえた。韓国映画は良くも悪くもハリウッド映画の亜種というか後追いなのだ。単なる後追いではなく、いつか追い越してやるという気概が感じられる。そこは素直に凄いと思う。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンベ

先輩の意。過去にも書いたと思うが、韓国は日本と同じく役職や肩書を非常に重視し、それで相手に呼びかける文化を持っている。軍隊では当たり前のことだが、これは世界的にはかなり珍しい文化なのではないだろうか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 THIS IS LIFE スマホから見る中国人の人生 』
『 クワイエット・プレイス:DAY 1 』
『 朽ちないサクラ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, SF, ソル・ギョング, ド・ギョンス, ヒューマンドラマ, 監督:キム・ヨンファ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 THE MOON 』 -韓国産の国威発揚映画-

『 ミスターGO! 』 -頭を空っぽにしたい時に-

Posted on 2022年1月8日 by cool-jupiter

ミスターGO! 60点
2022年1月5日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:シュー・チャオ ソン・ドンイル オダギリジョー
監督:キム・ヨンファ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20220108142841j:plain

観終わって身も心も消耗するタイプの映画ばかりを立て続けに観たので、a change of pace が必要だと思い、近所のTSUTAYAで本作をピックアウト。リフレッシュするにはちょうど良い作品だった。

 

あらすじ

四川省の大地震で祖父を亡くしたウェイウェイ(シュー・チャオ)は、雑技団メンバーと野球の打撃を特技とするゴリラのリンリン、そして支払いきれない借金を託されてしまった。途方に暮れるウェイウェイだったが、韓国の万年再建中のプロ野球団ベアーズがリンリンと契約したいと言い・・・

 

ポジティブ・サイド

よくまあ、こんな奇想天外な設定を思いついたものだと感心するやら呆れるやら。日本でも『 ミスター・ルーキー 』という珍作があり、確かに「覆面をしてプレーをしてはならない」とは野球協約には書いていないらしい。同じく、性別を理由にプロへの門戸が閉ざされることがないのはどこの国でも同じなようで、『 野球少女 』ではプロ野球選手を目指す女子の姿を描いた。しかし、ゴリラをプロでプレーさせようとは・・・ ところがこのCGゴリラ、相当な凝りようだ。中国の『 空海−KU-KAI− 美しき王妃の謎 』のCG猫はひどい有様だったが、このゴリラは『 ライオンキング 』とは言わないまでも、かなり真に迫っている。

 

無垢な中国の少女をなかば騙すかのような形で強引に契約を結んでしまうベアーズのエージェント・ソンが韓国映画お得意の悪徳商売人・・・と見せかけて終盤に思わぬ感動を呼んでくれる。

 

ゴリラ使いのウェイウェイの操るウッホウッホなゴリラ語(?)も、照れなどは全くなく、むしろ外連味たっぷりで笑わせてくれる。指令を受けるゴリラのリンリンも規格外のホームランを連発し、それに対抗する他チームの投手陣は、あの手この手で打たせまいとしてくるが、それらを全て弾き飛ばすリンリンの打撃がとにかく痛快だ。

 

途中で読売と中日のオーナーがやって来るが、韓国球界が日本をどう見ているのかが垣間見えて、なかなかに興味深い。2020年5月に以下のようなツイートがなされて、野球ファンの間で結構話題になったのを覚えている人もいることだろう。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20220108143527j:plain

極めて妥当な評価だと思う。韓国球界からすれば、スターを日本に高く売りつけるのは、NPBがスターをメジャーにポスティングするようなものだろう。韓国や台湾で活躍した選手が日本で苦労するのは李承燁や王柏融など、打者では枚挙にいとまがない。投手は結構成功している印象で、日本の打者もメジャーではさっぱりだが、投手はなぜか成功することが多いのとよく似ている。

 

閑話休題。リンリン以外の野球シーンも結構本格的で、ダブルプレーを独特なカメラアングルで捉えたりするなど、工夫のほどがうかがえる。終盤にはリンリンの対とも言うべき、ゴリラの投手レイティが現われ、200km/hの剛速球を投げる。当然、人間に打てるはずもなく、畢竟、物語はリンリンとレイティのゴリラ対決につながっていく。その結末は見届けてもらうほかないが、よくこんなことを考えたなと感心させられた。序盤に野球協約がゴリラのプレーを禁じていないことに言及したことで、野球のルールのちょっとした盲点になっているところを上手く突きつつ、そこに説得力を与えている。

 

韓国の俳優たちが結構な量の日本語を割と流ちょうに操っているので、そうしたシーンを楽しむのもいいだろう。頭を空っぽにして楽しめるし、あるいは日韓比較スポーツ文化論の材料にもなりうるだろう。

 

ネガティブ・サイド

ウェイウェイとエージェント・ソンのヒューマンドラマは不要だったかな。もっと「ゴリラが野球をする」という部分にフォーカスをしていれば、コメディとしてもっと突き抜けることができただろう。また、ウェイウェイの演技が going overboard =大げさだったと感じる。感情を爆発させるお国柄ではあるが、その部分にもう少しメリハリが必要だった。

 

リンリンが打撃専門となるまでの描写も必要だったように思う。CG製作に時間も金もかかるというのなら、ベアーズの首脳陣がミーティングをする場面でもよい。リンリンが一塁手だったら、または捕手だったら・・・と誰でも想像するだろう。打撃でWARを積み上げるが守備でそれを帳消し、あるいはチーム構成上守備は困難という、野球にもっとフォーカスした場面が欲しかった。

 

最終盤のチェイスとアクションは完全に蛇足。乱闘が野球の華だったのは平成の中頃まで。それは韓国でもアメリカでも同じだろう。

 

総評

スポーツコメディとしてまずまずの出来。ソンが日本語で罵詈雑言をがなり立てるシーンはかなり笑える。野球はしばしば人間ドラマや人生の縮図に還元されるが、それをゴリラを使って実行してしまえという構想力には感心すると同時に呆れてもしまう。重苦しい映画を立て続けに観たことによる心身の重さはこれにて回復。天候やコロナのせいで出歩けないという終末に、頭をリセットするにはちょうど良い作品ではないだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

The Doosan Bears

斗山ベアーズの英語名である。スポーツチーム名は、それが複数形である場合、まず間違いなく頭に定冠詞 the がつく。

僕はニューヨークメッツの一員になりたい。
I want to be a New York Met.

彼はかつてシカゴブルズの一員だった。
He used to be a Chicago Bull.

のように言えるが、a Bull や a Met の集団が、The Bulls や The Metsになる。ここでザ・シンプソンズを思い浮かべた人は good である。これは、「シンプソンという人の集団」=「シンプソン一家」ということである。ここまでくれば、The United States や The Philipines、The Bahamas、The Maldivesといった国の名前に the がつく理由も見えてくるだろう。州や島の連合体が一つにまとまっているということである。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, オダギリジョー, コメディ, シュー・チャオ, スポーツ, ソン・ドンイル, 中国, 監督:キム・ヨンファ, 配給会社:ギャガ, 韓国Leave a Comment on 『 ミスターGO! 』 -頭を空っぽにしたい時に-

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