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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 広瀬アリス

『 地獄の花園 』 -アクションをもっと真面目に-

Posted on 2022年7月16日 by cool-jupiter

地獄の花園 50点
2022年7月12日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:永野芽郁 広瀬アリス
監督:関和亮

劇場公開時にはスルーしたが、クーポン使用で近所のTSUTAYAから安く借りてくる。アクションが全体的に中途半端で、メインのキャラも脇役に食われてしまっていた。

 

あらすじ

ごく普通のOLである直子(永野芽郁)の会社では、猛者たちがOL界の覇権を求めて抗争を繰り広げていた。ある日、中途採用された法条蘭(広瀬アリス)と直子はひょんなことから意気投合。しかし、蘭は超武闘派のOLで、あっという間に三富士株式会社のトップに君臨する。以来、周辺企業のトップのOLたちとの抗争が絶えなくなり・・・

 

ポジティブ・サイド

OLの世界には昔も今もお局が存在する。ある意味、男性サラリーマン以上に権謀術数を駆使して権力闘争を繰り広げるのが、OLという生き物である。偏見と言うことなかれ。良くも悪くも、これが日本企業に勤める女性社員のすべてとは言わないまでも、多くに当てはまることなのである(Jovian妻談)。そのOLの生態を一昔前のヤンキー漫画に当てはめて描写したところに本作の面白さがある。

 

菜々緒や大島美幸のOL姿はそれだけで笑ってしまうし、川栄李奈のヤンキーでありながらOL的な気遣いを見せられるというギャップにも、やはり笑ってしまう。このヤンキーOLの仁義なき派閥抗争と、そこに突如現れる新勢力の広瀬アリス、その広瀬アリスの友人となる永野芽郁の掛け合いが物語を動かしていく。

 

他者との抗争=ヤンキー漫画における他校との抗争で、相手の頭を潰せば、そこを丸ごと傘下に加えられるということから、抗争がどんどんと拡大、過激化していく。その途中で出てくるトムソンというのは、やはりサムソンが元ネタだろうか。トヨタですら敵わない財閥にして超巨大企業である。そこの幹部OLを全員男性キャストで固めたのには賛否両論あるだろうが、Jovianはやや賛である。コメディなのだから、これぐらいアホなキャスティングは許容すべきであろう。

 

広瀬アリスの武者修行シーンは笑えるし、最後の最後でこれまでの数々の闘争を、ある意味ですべてなかったことにする価値観の開陳も悪くない。というか、この世界観をそのままに物語を閉じてはいかんだろう。その点で、アホ極まりない物語にも一応の決着がつけられ、話はきれいに閉じていく。頭を空っぽにして観る分には良い映画だろう。

 

ネガティブ・サイド

映画館で観た予告編をうっすらと覚えているが、ハッキリ言ってトレーラーの作り方を間違っている。永野芽郁のアクションシーンは全カットして、広瀬アリスが頂点を目指して闘っていくストーリーだと思わせるようにすべきだった。トレーラーのせいで「実は永野芽郁も強いんでしょ?」と観る側にバラしてしまうのは全く得策ではない。誰がトレーラー作ったの?そして、誰がそれを承認したの?

 

肝心かなめのアクションも迫力不足。ちょっとしたパンチや蹴りのたびにカットして、別アングルから別アクションを映していくカメラワークは、役者の鍛錬不足を何とか目立たないようにしたいという工夫なのだろうが、ここを追求しないことには真の面白さは生まれてこない。『 翔んで埼玉 』がクッソ面白かったのは、埼玉狩りのアクションやGACKTと伊勢谷友介の衝撃のキス、埼玉VS千葉の大軍勢同士の激突など、アホなシーンのリアリティをこれでもかと追求したからである。OL同士の喧嘩でも、もっと役者たちを追い込んでほしかったし、追い込むべきだった。別に『 アジョシ 』や『 悪女 AKUJO 』のようなクオリティは求めていない。ただ、真っ正面から魅せるアクションシーンがひとつぐらいはあってもよかったのではないか。

 

主要キャラであるはずの永野芽郁や広瀬アリスが遠藤憲一に完全に食われていた。もちろん演技合戦の中では『 ボーダーライン 』のベニシオ・デル・トロや『 ジュラシック・パーク 』のジェフ・ゴールドブラムのように、主役を食ってしまう脇役というのは存在する。しかし本作の沿道の悪目立ちは監督の演出力不足によるところが大であると思われる。キャスティングではなくディレクションの問題だろう。

 

総評

日本ならではのアイデアが詰まっているし、日本ならではの弱点も露呈している、何とも評価に困る作品。ということは、一部の人々から高評価を得て、一部の人々からは低評価を得やすい作品ということになる。要は、作り手と観る側の波長が合うかどうかである。男性視点からのOL社会を面白いと思うか、くだらないと思うか。観るかどうかは直感で決めるべし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Stop talking shit, you ugly whore!

「寝言こいてんじゃねーよ、ブス!」の私訳。聞いた瞬間の思いつきだが、実際にプロの翻訳者でも、案外こういう訳に落ち着くのではないかと思う。寝言を言う ≒ 馬鹿なことを言うなので、ここでは talk shit とした。悪口を言う、無礼・不愉快なことを言う、の意味である。ちなみに、こんな英語は実生活では絶対に使ってはならない。

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, D Rank, アクション, コメディ, 広瀬アリス, 日本, 永野芽郁, 監督:関和亮, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 地獄の花園 』 -アクションをもっと真面目に-

『 サイレント・トーキョー 』 -竜頭蛇尾のグダグダのサスペンス-

Posted on 2020年12月9日2020年12月13日 by cool-jupiter
『 サイレント・トーキョー 』 -竜頭蛇尾のグダグダのサスペンス-

サイレント・トーキョー 30点
2020年12月6日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:佐藤浩市 石田ゆり子 西島秀俊 中村倫也 広瀬アリス 井之脇海
監督:波多野貴文

f:id:Jovian-Cinephile1002:20201209180221j:plain
 

トレイラーを観る限りはなかなか面白そうだった。だが本作は地雷であった。『 ドクター・デスの遺産 BLACK FILE 』並みに無能な警察、そして筋の通らない論理で動くテロリスト。邦画サスペンスの珍品である。

 

あらすじ

12月24日、クリスマス・イブ。恵比寿ガーデンプレイスに爆弾が仕掛けられたという通報がテレビ局に入る。アルバイトの来栖(井之脇海)ら向かったところ、山口(石田ゆり子)という主婦が座るベンチに爆弾が仕掛けられていた。すぐに警察を呼ぶが、予告通りに爆発が起こり・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20201209180238j:plain
 

ポジティブ・サイド

渋谷の駅前はなんと作り物のセットだと言う。これには驚いた。ちょっと頑張ればCGでごまかせそうだが、そこにフィジカルな実体を与えるところに波多野貴文監督のこだわりを感じた。

 

セットだけではなく、クリスマスの渋谷らしさもよく描けている。お上がいくら自粛を要請しても、出かける人間は出かけるのである(そう、映画館に向かってしまうJovianのように)。同じく、警察がいくら交通を規制しても、アホなYouTuberや騒ぎたいだけの若者は渋谷という街に集ってくる。そのことは例年のハロウィーンで我々は嫌というほど知っている。そうした群衆の描き方が真に迫っていた。

 

野戦病院と化した渋谷近くの病院も、まるでコロナ患者にひっ迫されている大阪の医療現場のようであると感じられた。不謹慎極まりないが、本当にそのように映った。行ってはいけないとされている場所に、自分のみならず友人を連れて行ってしまった。そこで友人がダメージを負ってしまった。コロナ禍の今という時代と映画の世界が不思議にシンクロして、そこに広瀬アリスの絶望的な表情と悲鳴がスパイスとして効いていた。

 

政治的な主張もあり、単なるエンターテインメント以上の作品を志向したことだけは評価したい。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20201209180256j:plain
 

ネガティブ・サイド

以下、ネタバレに類する情報あり

 

これも『 ドクター・デスの遺産 BLACK FILE 』と同じで、開始5分で真犯人が見えてしまう。30キロの重さがかかっている間は爆発しない爆弾を、誰が、いつ、どこでベンチに取り付けたというのか。そして、あの爆弾の仕掛けられ方で、どのようにベンチの対する荷重を算出しているのか。そして、石田ゆり子その人が座っている時に地面にしっかりと両足をつけてやや前傾姿勢になっていたが、これだとベンチにかかる荷重は下手したら体重の半分くらいになるのでは?石田ゆり子の体重を勝手に55キロ、冬場なので服装で1キロ、手荷物も1キロと考えると57キロ。かなり雑な計算だが、それでもちょっと姿勢を変えただけでも爆発するのでは?という疑念を生むには充分だろう。もうこの時点でストーリーに入っていけなかった。

 

だいたい警察は何をやっているのか。恵比寿ガーデンプレイスの防犯カメラの記録映像を確認すれば、一発で済む話ではないか。犯人が要求する総理大臣との対話まで何時間あったのか。西島秀俊演じる刑事も無能の極み。最初のゴミ箱に仕掛けられた爆弾が真上だけに爆風が向くように行動に計算されていたのを知って、「犯人は誰も傷つけるつもりはなかった」って、アホかーーーーーーーー!!!その瞬間にごみを捨てる人がいたら、金属製のふたが顔面または前頭部に直撃して大怪我するやろ、下手したら死ぬやろ。そんな想像力すら持ち合わせず、なにを腕利き刑事ぶっているのか。この時点で捜査する側のキャラクターを応援する気が失せてしまった。

 

渋谷関連のシーンでもそう。井之脇海演じる来栖など、最重要指名手配になるだろう。パスポート写真や運転免許証写真の情報、それにYouTubeに動画をアップした経路など、あらゆるルートであっという間に身元と居場所(少なくとも動画撮影した部屋)は警察が突き止めるだろう。でなければおかしい。そして、全捜査員がこいつの顔を覚えた上で、出動しているはず。その中で渋谷駅前のビルの屋上に昇ったというのか?マスクや覆面などしていれば、絶対に警察官に呼び止められるはずだが。来栖というキャラの恵比寿から渋谷までの移動に現実味が全くない。製作者は警察をコケにしすぎやろ・・・

 

中村倫也のキャラも全く深掘りがされていないため、物語に何の深みもエッセンスも加えていない。アプリ制作で名を上げただの、叔父叔母と横浜で会うだの、母親と電話で話すだのといったシーンのいずれもが皮相的すぎる。50メートル離れていたから大丈夫って・・・ ハチ公からどちらの方向なのか。なぜ50メートルなのか。仮に50メートルが安全距離だとして、パニックになった群衆が走り出して、それに踏みつぶされてしまうといったことは想像できなかったのか。平和ボケを揶揄していたが、そういう自分も平和ボケした頭であることを露呈した非常に間抜けな瞬間だった。だいたい母親が結婚するから云々と語るぐらいなら、素直に警察に協力せよ。といっても、その警察も超絶無能集団ときては頭を抱えるしかないが・・・

 

最もうすっぺらく感じたのは「これは戦争だ」という戦争観。戦争というのは国家間でやるもの。テロリズムというのは国家ではない存在が対国家に暴力・武力を行使するもの。犯人のトラウマになった事象は、犯人側から見れば戦争の一側面だろう。しかし、もう片方の視点からすれば、それは紛れもないテロリズムである。このあたりを峻別することなく、身勝手なテロ行為に及んでも誰の賛同も得られない。もとよりテロに賛同するも何もないが、それでもテロリストが掲げる理想や大義の元にはせ参じる者が多く存在するのも事実。本作の犯人に共感する者はほとんど存在しないだろう。だいたい「あんな総理大臣を選んだ日本国民に復讐する」という時点で頭がおかしい。総理大臣を選ぶのは国民ではなく国会議員だ。狙うなら渋谷に集まった無辜で無知な民ではなく、それこそ国会議事堂や自民党本部などを狙うべきだった。

 

アホな警察にアホなテロリスト。そのテロリストにアホ扱いされる国民。製作者の描きたいものは分からないでもないが、波多野貴文その他のスタッフはもっと勉強をしなければならない。

 

総評

話の荒唐無稽さ、細部の描写の粗さを考えれば、似たようなテーマとキャストの『 空母いぶき 』よりもさらに下の作品。製作者たちの言わんとしていることは分からないでもないが、物語をプロット重視で進めるのか、キャラクター重視で進めるのか、その場合に求められるリアリティとは何なのかを、もう一度考え直してもらいたい。本作よりもゲームの『 428 〜封鎖された渋谷で〜 』の方が遥かthrillingかつunpredictableで面白い。政治に物申す爆破テロリストの物語ならガイ・フォークスにインスパイアされた『 Vフォー・ヴェンデッタ 』を観るべし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

This is war.

「これは戦争だ」の意。『 ジングル・オール・ザ・ウェイ 』でもシュワちゃんが発していた台詞。冠詞の説明ほど手間のかかるものはないので省略させてもらうが、warにaをつけるかつけないかを正しく判断できれば、英検1級レベルより上である(英検1級合格者でも間違えまくる人は数多くいる)。

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, E Rank, kな徳:波多野貴文, サスペンス, ミステリ, 中村倫也, 井之脇海, 佐藤浩市, 広瀬アリス, 日本, 石田ゆり子, 西島秀俊, 配給会社:東映『 サイレント・トーキョー 』 -竜頭蛇尾のグダグダのサスペンス- への2件のコメント

『 旅猫リポート 』 -クソ映画・オブ・ザ・イヤー級のつまらなさ-

Posted on 2019年8月5日2020年4月11日 by cool-jupiter

旅猫リポート 25点
2019年7月29日 レンタルBlu-rayにて鑑賞
出演:福士蒼汰 高畑充希 広瀬アリス 竹内結子
監督:三木康一郎

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190805014703j:plain

昨年(2018年)、どこの映画館で何の映画を観ても、本作の予告編ばかりをこれでもかと巨大スクリーンで見せつけられたという印象が残っている。はっきり言ってトレイラーだけでストーリーの全体像が見えてしまっている。きっと出来の悪い韓国ドラマよりも、さらに出来が悪いのだろうな・・・。そんな予感を抱いていたが、果たしてそれは正しかった。

 

あらすじ

悟(福士蒼汰)は愛猫のナナ(高畑充希)を里子に出すためにクルマを走らせ、旧友たちを訪れていく。なぜ悟はナナを手放すのか。車中で悟は自分と猫との関わり合いに思いを馳せて・・・

 

ポジティブ・サイド

高畑充希の声が存外に猫に合っていた。猫が喋る作品というと『 銀河鉄道の夜 』や『 ドラえもん 』が想起されるが、高畑の声はどことなく田中真由美や大山のぶ代といった大御所のそれを通じるところがある。

 

あとはナナのあらゆる動きをカメラに収めたcamera operatorの皆さまと撮影監督、そしてそれらを見事に繋ぎ合わせた編集担当者たちに敬意を表したいと思う。

 

ネガティブ・サイド

これは『 コーヒーが冷めないうちに 』に優るとも劣らないクソ映画である。最初から観る人に「どうぞ感動してください!!」と声高にお願いしてしまっている。それで感動できてしまう人は、よほど純粋な心の持ち主か、あるいは最初から涙を流す気満々の人であろう。

 

本作のダメなところ其の壱は、秘密を秘密にしておきたいという製作者の願望が暴走しているところである。はっきり言って両親を事故で失くしてしまった子ども、などというのはあらゆる映像作品でクリシェになってしまっている。にもかかわらず葬儀の場であまりにも不自然な態度をとる大人たち。そして、喫茶店あるいは個室のある店で話せば良いようなことを、当の悟がいるその場で話し合ってしまう無遠慮な大人たち。さらに、悟の家族と親友の家族の不自然なまでのコントラスト。伏線はもう少しさりげなく張って欲しい。

 

本作のダメなところ其の弐は、台本の製作段階でミスがあったとしか思えない変てこな日本語の散見されることである。全てはとうてい思い出せないが、広瀬アリスの言った「お金を貯めて、ちゃんと悲しまないと駄目!」という台詞には、眩暈がした。文脈上、言わんとしていることは分かるが、このセンテンス単体を見た、もしくは聞いた人に意味が伝わるだろうか。これが正しい日本語なのか。撮影中に誰も何も感じなかったというのか。

 

本作のダメなところ其の参は、一部の役者の演技の不味さ、拙さである。悟が富士山麓でペンションを営む高校の同級生夫婦を訪ねた夜、親友はへべれけに酔っぱらっていたが、それがとても酔っ払いを観察したり接した、もしくは自分も酔っぱらってしまったことがあるとは思えない酷い演技だった。そもそも酔うというのは脳のかなりの部分の機能が低下している状態なわけで、もちろん運動能力も低下している。にもかかわらず、悟の肩に担がれた時に、とても悟の側に体重を預けているようには見えなかったし、歩き方もしっかりとしたものだった。その後に、悟との別れ際の妻と悟の思わぬ台詞の応酬に対して見せた混乱と安堵の表情は良かった。顔だけで演技せず、全身を使って演技してもらいたい。

 

その他、細部に腑に落ちない点が多々見受けられた。例えば、竹内結子。なぜ猫が苦手で、テーブルに飛び乗ってしまうほど恐怖心を感じていることを披露した次の瞬間に、ナナを何の抵抗もなく撫で回すのは何故なのか。看護師さんが「巡回行ってきまーす」と言うシーンがあるが、普通は「ラウンド行ってきまーす」だろう。また、医師の死亡確認方法もおかしい。聴診器で心音ぐらい聞け。大昔のことだが、刑事ドラマなどで素人が頸動脈に触れただけで「駄目です、死んでます」などという戯けた死亡確認に激怒した医師会だったか何かの団体がテレビ局に猛抗議したと聞いたことがある。頸動脈で脈が触れなくとも、心臓付近なら微弱な脈がある場合も稀にあるのだ。医療系の団体がテレビ局に抗議する時は医学的なエビデンスがしっかりしていることが多い。サザエさんがピーナッツを空中に投げてパクっとやらなくなったのも、医師の抗議ゆえだった。製作者側は医療業界の事前調査が甘い。また、墓参りのシーンで、虹が出る方向が間違っていた。虹は太陽の反対側に出現する(というか見える)が、墓所の様々なオブジェの影は、虹に対して90~110度右方向にずれていた。つまり、太陽を左手に見ながら悟は虹を見ていたわけで、これは物理的にありえない。

 

ファンタジー映画だから、細かいことはどうでもいいでしょ?という姿勢がありありと伺えるが、その考え方は大間違いである。ファンタジーに説得力を持たせるには、世界の全てをファンタジーに染め上げる(例『 ロード・オブ・ザ・リング 』)か、あるいはファンタジー要素以外のリアリズムを極めるか(例『 シン・ゴジラ 』)のどちらかである。本作は端的に言って失敗作である。

 

総評

まともに鑑賞しようと思ってはいけない。悟に仕込まれた秘密の設定にも驚きはない。猫と人間のドラマチックな関わりを観たいのであれば、NHKで『 地球ドラマチック 』や『 ダーウィンが来た! 』の猫特集をどうぞ。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, E Rank, ファンタジー, 広瀬アリス, 日本, 監督:三木康一郎, 福士蒼汰, 竹内結子, 配給会社:松竹, 高畑充希Leave a Comment on 『 旅猫リポート 』 -クソ映画・オブ・ザ・イヤー級のつまらなさ-

『食べる女』-愛情を表現したくなる、優しさ溢れる作品-

Posted on 2018年9月24日2019年8月22日 by cool-jupiter

食べる女 70点

2018年9月23日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:小泉今日子 鈴木京香 沢尻エリカ 広瀬アリス シャーロット・ケイト・フォックス 前田敦子 壇蜜 ユースケ・サンタマリア 間宮祥太朗
監督:生野慈朗

f:id:Jovian-Cinephile1002:20180924015437j:plain

派手なアクションや手に汗握るスリル、背筋が凍るような恐怖感や息もできなくなりそうなサスペンスを求める向きには全くもってお勧めできない作品である。映画とは、何よりもまず、一般家庭では享受できないような大画面と大音響を楽しむための媒体で、そうした文字どおりの意味でのスペクタクルはこの作品には全く盛り込まれていないからである。だからといって本作には劇場鑑賞する価値が無いのかと言えば、さにあらず。充分にチケット代以上の満足感は得られるだろう。

餅月敦子(小泉今日子)ことトン子は、古本屋と文筆業の二足のわらじを履いている。同居人は猫の“しらたま”である。古本といっても料理に関連するものばかりで、トン子自身もかなりの腕前の持ち主。そんなトン子の編集者の小麦田圭子(沢尻エリカ)ことドド、トン子の親友にして割烹料理屋の女将、鴨舌美冬(鈴木京香)、ドドの飲み友、テレビドラマ制作会社のアシスタントプロデューサー白子多実子(前田敦子)らは、定期的にトン子宅で料理に舌鼓を打ちながら、男や仕事について語り合うのであったが・・・

まずエンドクレジットの特別協力だったか特別協賛だったかの、

 

      sagami original

 

というデカデカとした表示に我あらず笑ってしまった。もちろん、商品そのものは映らないのだが、それを使っているであろうシーン(使ってなさそうなシーンも)しっかり用意されているから、スケベ視聴者はそれなりに期待してよい。最もそういったシーンが期待できるはずの壇蜜     と鈴木京香    にそれがなく、逆にシャーロット    が体を張ってくれたことに個人的に拍手を送りたい。

さて、冒頭に記したようにドラマチックな展開にはいささか欠ける本作であるが、ドラマがないわけではない。実は非常に深いテーマも孕んだドラマがある。それは「人間は変わりうる」ということである。変わると言っても、何も宗教的回心のような、それこそ劇的な体験のことではない。日々の生活の中で得るほんのちょっとした気付きがきっかけになったり、人間関係の変化であったり、経済的な変化であったり、身体的な変化であったりもする。我々は普段、そうした変化があまりにも静かに進む、もしくは起きることが多いために、そうした変化を見過ごしがちである。しかし、古代ギリシャの哲学者ヘラクレイトスの言葉「万物は流転する」を引くまでもなく、変化しないものはない。仏教にも≪諸行無常≫と言うように、人間の本質は古今東西においても変化なのである。そんな変わっていく自分、変わっていく他者に愛情を注ぐことができれば、それは自分という存在そのものを肯定することにもつながる。なぜなら、繰り返しになるが人間存在の本質が変化であるからだ。こんな自分は嫌いだという人は変化を求めれば良いし、こんな自分が好きという人は、そのように変化していく自分をそのまま楽しめば良い。なにやらニーチェの永劫回帰思想やゲーテの『ファウスト』にも通じるものがありそうだ。

印象的なプロットを紹介すると、ドドとタナベの出会いが思い浮かぶ。これなどは正に、“袖振り合うも多生の縁”を地で行くような Story Arc である。もう一つは、あかりの受動から能動への変化である。詳しくは本作を観てもらうべきだろう。一見すると下半身がだらしない女のように見えてしまうが、貞操概念に欠けるのではなく、愛情を注がれることに快楽を見出す女なのだ。それは例えば料理をおいしそうに食べてくれたり、あるいはベッドで自分を愛撫し、動いてくれることだったりする。そうではなく、愛情をストレートに自分から表現しにいくシークエンスは、昨今の少女漫画原作の映画化作品に見られる、ヒロインが走っていくのを横から車で並走しながら撮影していく、アホのような画の再生産ではなく、本当に真正面からのものだった。非常に新鮮で、『巫女っちゃけん。』あたりから既に変化の兆しは見られていたが、広瀬アリスという役者の大いなる成長を目の当たりにしたかのようだった。最後に、シャーロット・ケイト・フォックスである。そそっかしいという自覚のある人は、彼女の Story Arc を決して早合点しないようにしてほしい。ダメな女の成長物語と唐竹割の如く切って捨てるように評するのはたやすい。しかし、そうした見方をしてしまう時、我々は既に自分の中に「ダメな女」像と「できる女」像を抱いてしまっていることを自覚せねばならない。人間というものを変化する主体ではなく、固定されたキャラクターであるかのように見てしまう癖が、どうしても我々にはあるようだ。しかし、古代中国の故事に「士別三日、即更刮目相待」とある。三日で人は変わりうるし、我々も見る目を変えねばならない。割烹料理屋での無音の中でのやりとりに、静かな、それでいて非常に力強いドラマが進行していることを、本作は感じさせてくれた。こここそが本作のハイライトで、凝り固まった頭の男性諸賢は心して観るように。

反面で指摘しなければならない粗もいくつかある。ジャズバーのシーンでは明らかにBGMが編集されたものだったが、ここは店内の雰囲気をもっと濃密に醸し出すために、それこそLPレコード音を背景に撮影するぐらいでも良かった。デジタル全盛の時代ではあるが、古い写真に味わいが出てくるように、レコードにも味わいが出てくるものだ。そういえば古さを賛美する印象的なシーンが『マンマ・ミーア! ヒア・ウィ―・ゴー』で見られた。” Sir, in your case, age becomes you. As it does a tree, a wine… and a cheese.”という、コリン・ファースへの台詞だ。映画の醍醐味には音という要素もあるのだから、ここを生野監督にはもっと追求してほしかった。また、ネコが前半で大活躍するのが、名前がしらたまというのはどうなのだろうか。稲葉そーへーの某漫画を連想したのはJovianだけではあるまい。

弱点、欠点はいくつか抱えているものの、それでも本作は秀逸な作品である。十数年前になるか、某信販会社にいた頃、20~30代女子向けに“自分にご褒美”キャンペーンとして、週末のホテル宿泊を推していたことがあった。おそらく2000年代あたりから、モノの消費から、コトの消費へと個の快楽の追求はシフトし始めていたが、本当にそれが根付き定着したのはごく最近になってからではなかろうか。失われて久しい、皆で卓を囲んでご飯を味わうという体験の歪さと新鮮さを『万引き家族』は我々に見せつけたが、本作の女たちの食事シーンは、ある意味での人間関係の最新形と言える。愛情は男女間だけのものではなく、自分で自分に向けるものでもあるし、ほんのちょっとしたことで知り合う他者にも大いに注いで良いものなのだ。それが実践できれば、愛しいセックスをしている時と同様に、人は暴力や差別から遠ざかることができるのだろう。その先に、“修身斉家治国平天下”があるのだろう。

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2010年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 小泉今日子, 広瀬アリス, 日本, 沢尻エリカ, 監督:生野慈朗, 配給会社:東映, 鈴木京香Leave a Comment on 『食べる女』-愛情を表現したくなる、優しさ溢れる作品-

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