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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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タグ: 山崎まさよし

『 影踏み 』 -演出に課題を残す変則探偵もの-

Posted on 2019年11月19日2020年4月20日 by cool-jupiter

影踏み 55点
2019年11月17日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:山崎まさよし 尾野真千子 北村匠海 滝藤賢一 中村ゆり
監督:篠原哲雄

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ミステリやクライムドラマにおいて事件を解決するのはかつては警察や探偵の仕事だった。時代を経るごとに、その役目を担う存在は変遷し、今では医師や法医学者、看護師、そして弁護士などがそれにあたる。そこへ、泥棒が事件を解決するという物語である。もちろん、『 羊たちの沈黙 』のように犯罪者が犯罪者を推理で追い詰めるような傑作もあるが、泥棒というのはなかなか新鮮だ。漫画『 ドロ刑 』は無念にも打ち切られたが、泥棒が探偵というジャンルを開拓できるか。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20191119011904j:plain

 

あらすじ

ノビカベの異名を持つ凄腕の泥棒、真壁修一(山崎まさよし)は、県議の邸宅に忍び込んだ時、県議の妻の葉子が放火しようとしているのを阻止して御用となった。刑期を終えて出てきた修一は啓二(北村匠海)と共に当時の事件の真相を探るために動き出す。それは修一の過去のトラウマに向き合うことでもあった・・・

 

ポジティブ・サイド

最も印象に残ったのはBGMである。主演の山崎がそのまま音作りにも関わったということで、エドガー・ライトやスコット・スピア、ジェレミー・ジャスパーなど映画を作りつつ、音楽も作れる、あるいは既存の音楽を映像に合わせられる人材がシーンで台頭しつつある。主演俳優が音楽を手掛けるというのは邦画では異例のこと。しかし、(東芝的な意味ではない)チャレンジは素直に歓迎しようではないか。

 

俳優陣で最も印象に残ったのは放火未遂の中村ゆり。『 町田くんの世界 』の関水渚の20年後のようであり、『 記憶にございません! 』の石田ゆりの15年前のようである。つまり、美人であると言いたいわけである。10代、20代の男子に告ぐ。女性というのは25~45歳ぐらいが美のピークである。心しておきたまえ。

 

ノビカベこと修一が過去の事件および現在の殺人事件の真相解明に乗り出していく、その暗さが魅せる。陽の光の当たらない社会の一隅にひっそりと、しかし力強く根付いている地下世界の住人たちとの接点や闇社会の人間関係に怯むことなく進んでいく覇気をも感じさせる執念が、基本的に無表情で、それでいて険のある顔つきをした山崎まさよしによって巧みに体現されている。山崎は、存在感だけならキャスティングの勝利と言える仕事をした。

 

本作は日の当たる世界の住人と闇の世界の住人を必ずしも綺麗に区別しているわけではない。人間には誰しも二面性のようなものがある。善人と悪人がいるのではなく、ある人は時に善人であり、時に悪人であるという世界観を提示している。警察が法を犯し、泥棒が正義と真実を追求する。一部の主要な登場人物たちには、綾辻行人の小説『 殺人鬼 』に仕込まれているトリックと同じ設定がなされている。その事件の解決が、修一自身の抱える闇を晴らすことにもつながっている。この構造は秀逸である。

 

ネガティブ・サイド

大筋では楽しめる作品であるが、残念ながら粗もかなり目に付く。

 

まず修一と啓二の関係がすぐに見えてしまう。『 イソップの思うツボ 』はこの点でかなりアンフェアであったが、『 ブルーアワーにぶっ飛ばす 』はフェアであった。本作も一応フェアである。ただし作りがフェアだからといって、見せ方まで上手いわけではない。冒頭の瞬間から強烈な違和感が漂っている。ちょっと映画を見慣れた人、あるいは倒叙ものの小説をいくらか読んだ経験のある人なら、すぐに気付いてしまうことだろう。やはり『 シックス・センス 』は名作だったと再認識。むしろ、『 シックス・センス 』のおかげですれっからしの映画ファンが増加したのかもしれない。ならばなおのこと、後発作品の監督は知恵を絞らなければならない。

 

大竹しのぶがある人物の首を絞めるシーンも酷い。腕にも手にも力が入っていないのが一目瞭然である。何故こんな中途半端な絵で妥協してしまうのか。篠原哲雄監督は首絞めに何らかのトラウマでも抱えているのか。

 

修一が真相を追う中で、とある通帳を手に入れ、クリーンではないカネのやり取りが明らかになるシーンがあるが、ここもリアリティを欠いている。地下世界、暗黒街の大物のような男が馬鹿正直に自分の名義の口座から送金するだろうか。原作小説の描写がそうなっているのかもしれないが、映画化に際してより現実に即した形に改変することは認められてしかるべきだ。

 

本作最大の弱点は、修一の忍び込みの技術の凄さが全く伝わらないところにある。窓ガラスを如何に音を立てずに割るか。ふすまやドアの開閉時の音を如何に抑えるか。抜き足差し足忍び足を如何に実行するか。そうした伝説のノビ師の仕事人っぷりが画面を通じて伝わってこない。この点は大いに不満が残った。

 

本作のキーとなる概念に「 双子 」が挙げられる。珍しい存在ではあるが、天然記念物ではない。なので尾野真千子の務める園にいても全く不思議はない。いや、むしろいるべきだった。自我が発育しきっていない段階での「 双子 」の関係性を描いておけば、その後の展開により説得力と迫真性が与えられたことだろう。

 

総評

野心的な作品である。それは間違いない。しかし、演出面で数々の課題を残している。高校生ぐらいではプロットを追いかけるのにも難儀するかもしれない。2名ほど、恐ろしく低レベルの演技を見せる役者がいることにも注意したい。主人公やそれを取り巻く人間模様を理解する、あるいは主人公らに共感するのが難しい作品であるが、中村ゆり演じる葉子に狂わされる男の気持ちが分かれば、それはそれで本作を楽しむ一助になる。アラフォーのおっさん映画ファンには自信を持ってお勧めできる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Snap out of it already.

 

「もういい加減に止めろよ」という北村匠海の台詞(うろ覚えだが)。Snap out of it. というのはそれ自体が成句で、習慣をスパッとやめる、気分を入れ替える、という意味がある。この表現は高校一年生の時にRod Stewartの“Sweetheart like you”で学んだことを今でも覚えている。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, D Rank, サスペンス, ミステリ, 中村ゆり, 北村匠海, 尾野真千子, 山崎まさよし, 日本, 滝藤賢一, 監督:篠原哲雄, 配給会社:東京テアトルLeave a Comment on 『 影踏み 』 -演出に課題を残す変則探偵もの-

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