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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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タグ: 又吉直樹

『 タバコイ タバコで始まる恋物語 』 -本音と建て前と男と女-

Posted on 2020年6月27日 by cool-jupiter

タバコイ タバコで始まる恋物語 50点
2020年6月26日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:又吉直樹
監督:中川通成

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200627224818j:plain
 

煙草に対する風当たりが強くなって久しい。『 風立ちぬ 』ですら喫煙シーンの多さで叩かれる時代である。Jovianも2012年7月23日にタバコをやめて今に至る。ある意味、2020年代では作れない映画なのかもしれない。

 

あらすじ

宮内正(又吉直樹)は馬鹿がつくほど正直な男。他人の言葉は全て鵜呑みにするし、嘘をついたこともない。おかげで合コンでは失敗続き。だが、ある日、馴染みの中華そば屋の主人からタバコをもらう。そのタバコを吸ってみると、宮内はどういうわけけ他人の本音が目に見えるようになり・・・

 

ポジティブ・サイド

色々なところで芸が細かい。又吉のタバコのくわえ方、火のつけ方、たばこの持ち方、火の消し方、全てが素人っぽい。実際に喫煙者ではないのだろう。もしくは喫煙者だったとしても、見事に非喫煙者になりきった。煙の吐き出し方も、肺まで吸い込んで吐き出している時と、単にふかしているだけの時があった。タイトルの通りに、タバコの描写には一定のこだわりが見られた。

 

ヒロイン役の遠藤久美子のファッションも細かい。もともと高身長なところへハイヒールを履いているため、又吉を見下ろす構図になることがほとんどだが、はじめてキスをする場面だけはヒールではなかった。つまり、目線の高さが又吉とエンクミでちょうど合う。高飛車と呼ばれる女性が、ちょっと下に降りてきたわけで、このビジュアル・ストーリーテリングは上手い。

 

描き出される男女のステレオタイプも嫌味には感じられない程度に抑えられているので許容できる。男は女をベッドに連れ込むためならアホになる。というか、下半身と脳が戦うと大抵の場合、下半身が勝つ。脳が勝つのは、羞恥心が極度に強いか、あるいは相手に対して本気の時である。本気ではない相手に自分のセックスの感想を求めるところはリアルである。本命にそれができるとすれば、極度のナルシストか、あるいはベテラン夫婦だろう。

 

非常にコンパクトにまとまって、それなりにツイストもあり、カタルシスも感じられる。典型的なrainy day DVDだろう。

 

ネガティブ・サイド

タバコの効果効能がよく分からない。嘘をついた時にその人の本音が見えるようになると宮下正自身は得心しているが、必ずしもそうではない。ダイレクトに思考を読んでいる時も多い。昨今話題になっている賭けマージャンで正がカネを稼ぐシーンがあるが、マージャンは相手の待ちを回避しただけで勝てるゲームではない。また、せっかくのアイテムであるが、その効果に一貫性がないように見えるのは減点対象である。

 

合コンで調子に乗り過ぎた結果、会計に窮した正がクレジットカード払いをする。それは良い。問題なのは、飲食店で分割払いを申し出るところだ。飲食店や宿泊施設は一回払いしか受け付けられない。なぜならそうした店は返品が不可な商品やサービスを提供しているからだ。一回払いで清算した後にリボや分割に変更する、あるいはリボや分割専用カードを使うべきだった。

 

正の鈍さも、正直なところどうかと思う。人を疑うことを知らないことと、物事を深く突き詰めて考えられないことは、全く別の事柄だ。『 アントマン 』のスーツでも、『 続・夕陽のガンマン 』の金(ゴールド)の情報でも、誰か一人だけしかそれを持っていない、ということはありえない。『 水曜日が消えた 』でも感じたことだが、“水曜日”が消えたなら、他の“曜日”も消える/消えたのではないか?普通はそう疑うものだ。正が仕事でも恋愛でも絶好調になった時に、「仕事でも恋愛でも成果を出せる奴はこういうアイテムを持っているんじゃないのか?」という考えに至らない愚鈍なキャラクターである点がマイナス、さらにこれまでに嘘をついたことがない正直者というキャラ属性とその愚鈍さの間につながりがないのもマイナスである。

 

ストーリーそのものも極めてありきたりだ。もうちょっと捻りが欲しかった。特に序盤のとある女性の言う「彼氏はいないよ、旦那はいるけど」は必要だったか?『 アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン 』のホークアイ以前にこのセリフが日本で使われていることには少々感心したが、アベンジャーズの原作コミックの方がおそらく先だし、このセリフのおかげで、エンクミの背景がすぐに見えてしまう。色々な意味で工夫しすぎたせいで、面白さが減じてしまっているように感じた。

 

総評

悪い作品ではないが、面白い作品でもない。又吉の演技の稚拙さには敢えて目をつぶってこの点数をつけている。ただ、4~5年前、Jovianが結婚を意識していたころに観たEテレの『 オイコノミア 』で又吉が自身の恋愛観や結婚観を語っていたり、公開が延期になっている映画『 劇場 』の原作小説を読んだりしていれば、本作には興味深い点もいくつか発見できる。正の参加する合コンの回数が3回というのは、ある意味良く出来たプロットである。又吉のファンならば観ても損はないかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

obnoxious

『 ハンナ 』で gross =キモイ を紹介したが、この obnoxious はその上級版だろうか。意味は「キモイ」、「うざい」、「イヤな感じ」など、ネガティブなイメージを持つ人に対して使うことが多い。合コンで正は何人かの女子に obnoxious であると思われていた。この語が日常会話でスラっと使えれば、英会話スクールは卒業していいだろう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, D Rank, コメディ, 又吉直樹, 日本, 監督:中川通成Leave a Comment on 『 タバコイ タバコで始まる恋物語 』 -本音と建て前と男と女-

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