ハンナ 40点
2020年5月5日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:シアーシャ・ローナン ケイト・ブランシェット
監督:ジョー・ライト
近所のTSUTAYAがこのご時世にもかかわらず、いや、このご時世だからか大繁盛していて、本命(多くは準新作)がどれもこれも借りられている。たまたま目についたシアーシャの“顔”だけで借りてきた。この判断は失敗だった。
あらすじ
フィンランドの人里離れた森でCIA工作員だった父から語学や一般教養、そして格闘術を叩き込まれた少女ハンナ(シアーシャ・ローナン)に、ついに外の世界へ巣立つ時期がやってきた。だが、かつての父の同僚メリッサ(ケイト・ブランシェット)がハンナを執拗に追跡してきて・・・
ポジティブ・サイド
ハンナが各国の言語を流暢に操るシーンはとてもクールである。同時に初めて出会う人々とずれたコミュニケーションを取る様は非常に滑稽でもある。どこか『 ターミネーター 』的である。クリシェであるが、そこはまあまあ面白い。
年端のいかない暗殺者というのは死ぬほど量産されてきたキャラで、化粧っ気がゼロだが、そこが魅力的でもある。野生児の風味があるところがいい。アクション、特に近接格闘前に逃げるところに動物らしさが見て取れる。Fight or flightである。
16歳の少女らしく、開放的な世界でのアバンチュール的展開もある。ここで妙なときめきを感じたりしないところもgood。ストーリー進行を妨げていない。友人となるソフィーとのsleep-overも良いムードである。血も涙もない殺人者ではなく、かといって動物的な勘性だけに染まっているわけではない。ある意味でとても無垢な少女という印象を観る者に刻み付けてくれた。
10代のシアーシャを本作で堪能されたし。
ネガティブ・サイド
トム・ホランダーの演じる追走者一味がかなり間抜けだ。迷路状の貨物置場でチェイスしている最中に口笛を吹くか?ここでのロングのワンカットは緊迫感溢れるシークエンスだったが、ホランダーの口笛がその空気をぶち壊しにしたように感じた。他にも余裕をぶっこいておきながらエリックの逃走を許す。あるいは格闘戦で普通に負けるなど、とてもCIAエージェントたるマリッサが「裏の仕事を任せたい」と頼る相手とは思えない。見た目も間抜けで実力もイマイチ。なぜこのような設定になってしまったのか。
『 オールド・ボーイ 』でも感じたことだが、なぜハンナは初めて触れるパソコン、そしてインターネットを使いこなせるのか。父親から話に聞いていたとはいえ、数分で使いこなせる代物ではないはずだ。また、元CIAであるエリックの情報がネットでほいほいと簡単に手に入るのもおかしい。本物のCIA職員からすれば噴飯ものだろう。
マリッサの行動も意味不明なものが多い。サイレンサーを持っているなら、毎回それを使えと言いたい。なぜ街中で銃をぶっ放す時に使わないのか。そして、わざわざ仕留めた相手をよっこらせとばかりに運んだというのか。そんなことをしている暇があるのなら、ハンナというターゲットをしっかりと追いかけろと言いたい。
そのハンナとマリッサの対決シーンも腑に落ちない。フィンランドの雪原および森林をホームに育ったハンナが、なぜ待ち伏せて狙い撃ちする戦術を選択しなかったのか。せっかくの決め台詞が、やはり間抜けに聞こえてしまう。全く同じ構図の絵作りをしている作品に『 ウインド・リバー 』がある。完成度はそちらの圧勝である。
字幕が余計なことをしている。どの部分とは言わないが、ケイト・ブランシェットの台詞とだけ指摘しておく。
総評
凡百のアクション映画である。10代のシアーシャ・ローナンが見られるということぐらいしか特徴がない。だが、シアーシャのファンならば観ておく価値はある。大女優や大俳優の多くも、クソ映画に出演して腕を磨いたのだ。
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gross
GNP = Gross National Productのgrossだが、日常会話では圧倒的に「キモイ」の意味で使われる。同義語はcreepyやobnoxiousである。劇中では、朝ごはんとして皮剥ぎのウサギを調達してきたハンナに、ソフィーが一言“That’s gross.”=「キモイよ」と言い放つ。服でも食べ物でも容姿でも言動でも、なんでもgrossと言うことで不快感や嫌悪感を表明することができる。