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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 中島歩

『 よだかの片想い 』 -大人版『花束みたいな恋をした』-

Posted on 2022年9月24日 by cool-jupiter

よだかの片想い 75点
2022年9月23日 テアトル梅田にて鑑賞
出演:松井玲奈 中島歩
監督:安川有果

テアトル梅田に別れを告げるべく、チケットを購入。かなり多くの来場者があり、多くの人が名残惜しんでいる感じがした。

 

あらすじ

左ほほに大きなあざを持つアイコ(松井玲奈)は大学院で研究ひと筋の毎日を送っていた。ある日、彼女への取材に基づいた『 顔が私に教えてくれたこと 』という書籍に映画化の話が持ち上がる。監督予定の飛坂(中島歩)と触れ合ううちに、アイコは次第に飛坂に惹かれていくが・・・

ポジティブ・サイド

『 花束みたいな恋をした 』は若者の情熱に身を任せるような恋とその終わりの物語だったが、本作はそれの大人版である。島本理生の小説が原作ということだが、『 RED 』や『 ナラタージュ 』のような官能的な面が強いストーリーではない。しかし、主人公が何かから解放されるストーリーであるという点では共通していると感じた。

 

映画で顔にコンプレックスを抱く女性というと『 累 かさね 』が思い出される。顔の美醜で人間の価値が決まるとは思いたくないが、ルッキズムが存在すること自体は事実。自分の顔面に悩んだり、あるいはすれ違うだけの他人の顔を採点したことのない人などいないだろう。

 

本作は、しかし、アイコという主人公に単純なコンプレックスを付与しなかった。アイコは小学校の授業中に顔のあざを「琵琶湖そっくり」とクラスメイト達に揶揄されるが、そこで自分が注目を集めたことを密かに喜んでいた。アイコが傷ついたのは「お前たち、なんて酷いこを言うんだ!」と怒った教師が原因だった。これはかなり意表を突く設定だ。顔にあざがあって可哀そう、という話ではないのだ。だからといって、アイコがまったくあざに囚われることなく生きているわけでもない。そのあたりの塩梅が素晴らしく、松井玲奈がアイコというキャラクターを正に血肉化していた。

 

アイコの love interest である飛坂を演じた中島歩は『 愛なのに 』の浮気男役が印象的だったが、今作でもその真逆の真摯な男。しかし、彼の本命は実は・・・という複雑な役を好演していた。初対面のアイコに対して、映画監督の透徹した眼力でアイコの生き様を見通すシーンには震えた。飛坂の不器用に見える生き方がアイコのそれと通底するものがあり、互いに惹かれ合っていく過程にも説得力があった。

 

この二人の間に割って入る存在が早い段階で示唆されていて、しかも実はその存在も・・・という展開には意表を突かれた。なるほどねえ。確かに飛坂はそういうキャラだよなあ、と納得した。アイコのかなり遅めの初恋とそれに浮かれる気持ち、そして不安になる気持ち、飛坂の恋愛に関する優先順位のつけ方というか、価値観・哲学といったものが徐々にすれ違う展開も生々しい。

 

本作は映画というよりも芝居のようで、映像や音楽、音響の面で見せ場を作ることがほとんどない。カメラワークと役者同士の演技合戦で場面が進んでいく。それが非常に心地よい。ドラマチックな要素は削ぎ落すことで、逆に人間ドラマを際立たせている。安川監督とJovianは波長が合っていると感じた。

 

いつかアイコにとってこの恋は『 ちょっと思い出しただけ 』になるのだろう。そう予感させるような、ある意味で非常に清々しい幕切れだった。

ネガティブ・サイド

序盤にこれ見よがしに、大人と子どもでアイコに対する見方が違うというシーンを挿入するが、これは必要だっただろうか?

 

大学院の後輩が良い奴すぎ。上映時間を2分増やして、ここでサブプロットを一つ追求しても良かったのにと感じる。

 

終盤の展開が唐突すぎる。大学院の先輩に3分、飛坂に5分を費やして、上記の後輩との描写2分を加えて、上映時間を10分プラスできたはず。それで110分、ちょうどよい長さになる。

総評

大学院の教授の「人間は変わることはできるけれど、違う人間にはなれない」という言葉が刺さる。あざがあっても、あざがなくても、自分は自分。『 志乃ちゃんは自分の名前が言えない 』は自分から逃避する物語だったが、今作は自分に回帰していく物語。ラストシーンの美しさという点では今年の邦画ではピカイチ。ミニシアターでしか上映されていないが、だからこそ多くの人に観てほしい作品に仕上がっている。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

bruise

「あざ」の意。I got a big bruise on my forearm. = 前腕のところに大きなあざができちゃった、のように使う。bruise like a peach = 桃のようにあざができる = ひどく傷つきやすい、というイディオムもある。これは身体的にも精神的にも使える表現。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ラブロマンス, 中島歩, 日本, 松井玲奈, 監督:安川有果, 配給会社:ラビットハウスLeave a Comment on 『 よだかの片想い 』 -大人版『花束みたいな恋をした』-

『 愛なのに 』 -不思議な愛の物語-

Posted on 2022年5月13日 by cool-jupiter

愛なのに 75点
2022年5月8日 塚口サンサン劇場にて鑑賞
出演:瀬戸康史 さとうほなみ 河合優実 中島歩
監督:城定秀夫

テアトル梅田で見逃してしまった作品。塚口サンサン劇場にて上映中。R15作品だからなのかどうか知らないが、観客の中高年男性率が非常に高かった。

 

あらすじ

古本屋を営む多田(瀬戸康史)は女子高生の岬(河合優実)に突如プロポーズされる。「自分には好きな人がいるから」と丁重に断る多田だが、岬はあきらめない。一方、ただの想い人である一花(さとうほなみ)は婚約者の亮介の浮気を知ってしまい・・・

ポジティブ・サイド

事実は小説より奇なりと言うが、この脚本は実際にはなかなか現実にはならないだろう。アラサー男が女子高生に求婚される。丁重にお断りする。またまた求婚される。丁重にお断りする。その理由は他に好きな人がいるから。しかし、その好きな人は婚約者に浮気をされていた。しかも浮気相手が自分たちの結婚式のプランナー・・・。よくこんな人間模様を構想できるなと感心する。この設定だけで面白いと感じられる。

 

女子高生を演じる河合優実が本作でも鮮やかな存在感を放つ。恋に恋する女子高生で、多田にストレートに「結婚してください」と伝える。「そんなこと(=淫行)したら俺、逮捕されちゃう」という多田に、「あ、そういうのは無しで」とぬけぬけと言ってのける。もうこれだけで笑えてしまう。微笑ましい気分になる。その後も同級生男子と多田の間を行きかい、さらには親まで出張らせる始末。まさにおぼこさと小悪魔さの両方を遺憾なく発揮している。

 

極めて対照的なのがさとうほなみ演じる一花。こちらはトップレスを披露し、妖艶な濡れ場も熱演。『 RED 』の夏帆を上回る色気を存分に堪能させてもらった。多分、劇場に来ていた中高年たちも、さとうほなみを見に来ていたのだと思われる。いや、それにしても河合優実が小悪魔なら、こちらは悪魔というか魔女、いや魔性の女?婚約者に浮気されたからと、自分も同じことをしてやろうという発想もなかなかユニークだし、その相手に自分を一途に想い続ける男を選ぶというのも、ナチュラルに鬼畜だ。元々ミュージシャンということだが、表現方法が独特。無表情なようで表情がある。感情の起伏に乏しそうで、しかし感情が時に爆発する。自然体と言おうか、演技が上手いなあと感じない。等身大の悩めるアラサー女子を act しているのではなく、等身大の悩めるアラサー女子に be しているからだろう。素晴らしいとしか言いようのない performance である。

 

本作のテーマはタイトル通りに「愛」なのだが、『 愛なのに 』という逆接の通りに、きれいに成就することがない。愛する相手から愛のない求められ方をされることがどれほど酷なことか。それでいて、その求めに応じざるを得ないというジレンマ。瀬戸康史の渾身の演技に我あらず感情移入してしまった。男性の99%は恋を引きずった経験があるはずだが、そうした気持ちがわずかでもあれば、きっとこの多田という男とシンクロできはずだ。

 

本作の撮影はおそらく三鷹市だろう。Jovianの母校は三鷹市の国際基督教大学で、見覚えのある街並みがいくつかあった。おそらくゲーセン(芸術文化センター)あたりなのではないかと思う。上連鳥というバス停にも思わず笑ってしまった。上連雀など、まさにかつての庭である。さらに物語終盤の神父様の説教が笑える。Jovianは霊肉一致の神学論を打ち出した関根正雄の弟子の並木浩一門下だったので、この神父の説教が何であるのかよく理解できた。なので一花が盛大な勘違いをしているのをニヤニヤしながら映画を鑑賞していた。おそらく濃厚なベッドシーン目的にチケットを購入していたどのオッサン連中よりも、Jovianの方がキモイ表情をしていたはずだ。まあ、それだけ刺さる人には刺さる作品になっているということである。

ネガティブ・サイド

現代風のLINEと古風な手紙。昔からの想い人である一花とのやりとりがスマホで、Z世代の女子校生の岬とのやりとりが手紙というコントラストが十全に追究されていたとは言い難かった。このあたりを愛のないセックスとセックスのない結婚との対比にまでつなげられていれば、年間ベスト級に仕上がったのではないだろうか。

 

終盤近くの多田のある台詞があまりにも陳腐である。ここはそれこそタイトル通りの「愛なのに!」でよかった。

 

総評

R15ということは、場合によっては高校生や大学生のカップルでも鑑賞できるわけだが、子どものデート向きではない。むしろ30代以上の夫婦で余裕をもって鑑賞するべき作品であると思う。愛の形はそれぞれで、何が正解というものでもない(不正解はありうるが)。男女のあれやこれやを赤裸々に語り、男にとっては非常にショッキングなセリフも聞こえてくるが、世の男性諸賢に提案したい。逆にそうしたシーンこそ呵々と笑ってしまおうではないか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

To err is human, to forgive divine. 

「過つは人の常、許すは神の業」の意。確か高校生の時に学校で配られた『 WORD BANK 4000 』という単語帳で初めて見たと記憶している。大学の寮生活でネイティブ連中が何度か ”To err is human” と言って自己弁護しているのを聞いて「ああ、ホンマに使うんやなあ」と感動したのも覚えている。今度、仕事でミスった時に同僚ネイティブ相手に使ってみようと思う。

 

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