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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: ハン・イェリ

『 ファイティン! 』 -マ・ドンソクの目にも涙-

Posted on 2021年5月11日 by cool-jupiter

ファイティン! 70点
2021年5月9日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:マ・ドンソク ハン・イェリ クォン・ユル
監督:キム・ヨンワン

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210511004331j:plain
 

頭のリセットモードを継続するために、マ・ドンソク作品をpick outする。いつも通りにマ・ドンソクが悪人たちに鉄拳制裁を加えていく話かと思いきや、意外にもスポ根、ヒューマン、ファミリーの要素が色濃い作品であった。

 

あらすじ

元アームレスラーのマーク(マ・ドンソク)はクラブの警備員でその日暮らしをしていたが、偶然に出会ったジンギ(クォン・ユル)に勧誘され、韓国でアームレスラーとして出直すことを決断する。帰国後、生家を訪ねたマークは自分の母の娘だというスジン(ハン・イェリ)とその子どもたちに出会う・・・

 

ポジティブ・サイド

アメリカはLAから物語が始まるが、そこでマ・ドンソクがかなり流暢な英語を披露する。元々、アメリカに住んでいたバックグラウンドがあるので当然と言えば当然だが、これぐらいまともな発音なら、アメリカ育ちという設定にも説得力が生まれる。

 

場末のクラブでバウンサーをしているその目が死んでいる。まったく生き生きしていない。しかし、ジンギに出会い、成り行きで腕相撲をすることになった瞬間の表情の変化は、マ・ドンソクの確かな演技力を感じさせる。そこであっさりとクラブを首になってしまうのだが、死んだ目のマークはもういない。心機一転を決意した男の顔になっている。マ・ドンソクはアウトローや警察といった、元々暴力と親和性の高いキャラを演じることが多いが、本作ではアスリート。ワルの目ではなく、アスリートの目になっている。

 

マ・ドンソクが妹のスジンと出会う前に、甥っ子姪っ子と遭遇するシーンも面白い。熊みたいな見た目と評されて小さくなってしまったり、モーテルの電動ベッドでヴヴヴヴヴと揺られてみたり、超高たんぱくなバーガーを手作りしてみたりと、かわいいオッサンになっているシーンが随所に挿入される。確かにこのアメリカ系韓国人は、強面でありながら、どこか子どもがそのままでかくなったような雰囲気を湛えている。このギャップは素晴らしい。マ・ドンソクの新しい顔を見たように思う。もちろん、鉄拳制裁シーンもあるので安心してほしい。

 

本作の肝は主に二つ。一つにはしっかりとスポーツとしてのアームレスリングが描かれていること。トレーニングやテクニックについての描写があるのはありがたい。マイナーなことこの上ない競技であるアームレスリングだが、誰でも出来るし、やったことのある腕相撲である。ちょっとした解説で一気に親しみがわいてくる。

 

もう一つに、家族とは何かということ。ほとんど会ったことがなくても家族なのか。血のつながりがあれば家族なのか。家族とは「家族である」ことよりも「家族になる、家族であろうとする」ものだというテーマを、本作は提示する。韓国映画は『 ブリング・ミー・ホーム 尋ね人 』でも描かれていたが、養子に出すことも、養子を取ることも、日本より抵抗が薄そうである。そうした養子が、しかし、何の試練も乗り越えることなく家族になれるわけではない。しかし、試練の先には強い家族の絆が生まれる。『 ミナリ 』でも存在感抜群だったハン・イェリが本作でも肝っ玉母さんぶりを見せつける。家族とはその手に掴み取るもの。ベタベタな展開だが、そのように思わせてくれる物語だ。

 

ネガティブ・サイド

教育ママとガリ勉息子のシーンは不要だったかな。お隣では英語力≒就職力だと聞くが、どうせならマ・ドンソクにもっと英語でしゃべらせて、嫌味な親子を撃退してほしかった。中途半端に「英語が上手ですね」ではなく、「げ、自分や息子よりもはるかに英語ができる相手だ」とタジタジになるまでやってほしかった。

 

アームレスリング大会で八百長を持ちかけてくる男の上役も中途半端な英語を話すが、マ・ドンソクとこの男の間で英語のやり取りが欲しかった。ここでも周りを置き去りにして、分かる者にだけ分かる言葉を交わすことで、マ・ドンソクの決意の強さを見せてほしかった。

 

悪役であるはずのパンチという男にラスボス感がない。刑務所の牢名主が元選手としての強さを維持できるだろうか。故意に対戦相手に怪我をさせるスタイルで勝負していては、結果的に真剣勝負ができる=実力を維持できる、という環境を自分で破壊してしまっているように思う。

 

ジンギとマークの間の奇妙な友情が深まっていくシーンが不足していたように思う。マ・ドンソクの食わず嫌いを直してやるのは面白いが、LAのコリア・タウン(Jovianも行ったことがある)と接触しながら生きてきて、韓国料理に抵抗を示すというのは、ちょっと腑に落ちなかった。ジンギは裏社会の人間にボコられているところをマークに助けられる、あるいはマークと一緒にヤクザ相手に殴り合いのケンカをするなどの演出が必要だったのではないか。

 

総評

マ・ドンソクらしさ全開である。個人的にはマブリーという愛称にいまいちピンと来なかったのだが、本作を観て「マ・ドンソク+ラブリー=マブリー」という等式の意味が分かった。友情、努力、勝利、家族。臭すぎる展開ではあるが、ラストのマ・ドンソクの涙に胸を打たれない者がいようか。韓国の容赦ない暴力テイストが苦手だ・・・という人にとっては格好の韓国映画入門になっている。マ・ドンソクのファンならば必見だし、マ・ドンソクを観たことがない人は、本作から観始めると良いだろう。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ヤクソク

韓国語でも約束はヤクソクと発音される。これは日本語と韓国語が同じなのではなく、語源となった中国語の読み方が両国で似通っていたというものらしい。この言葉が使われるシーンでは指切りも行われるが、そこでも日韓の指切り文化の違いを見ることができる。つくづく近くて遠い、そして遠くて近い国である。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, クォン・ユル, スポーツ, ハン・イェリ, ヒューマンドラマ, マ・ドンソク, 監督:キム・ヨンワン, 配給会社:彩プロ, 韓国Leave a Comment on 『 ファイティン! 』 -マ・ドンソクの目にも涙-

『 ミナリ 』 -落地生根の物語-

Posted on 2021年3月20日 by cool-jupiter

ミナリ 75点
2021年3月19日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:スティーブン・ユアン ハン・イェリ アラン・キム ノエル・ケイト・チョー ユン・ヨジョン
監督:リー・アイザック・チョン

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アカデミー賞に複数部門にノミネートされている話題作。『 パラサイト 半地下の家族 』に続いての快挙なるか。

 

あらすじ

ジェイコブ(スティーブン・ユアン)は農業での成功を夢見て、韓国から米アーカンソー州に家族を連れて移住する。しかし、新天地での孤独からジェイコブと妻モニカの関係に亀裂が生じる。そこで、モニカの母スンジャ(ユン・ヨジョン)を米国に呼び寄せることになり・・・

 

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210320220827j:plain

ポジティブ・サイド 

まず映像の美しさに目を奪われる。米アーカンソー州のwildernessに近い自然が、豊かさ予感と厳しさの予感、両方を感じさせる。あまりにもだだっ広い風景の中にぽつねんと佇立するトレイラーハウスが、広大な新天地の中で家族の置かれた孤独を象徴している。

 

移民の悲哀というものは、親世代と子世代の断絶が生じてしまうところにあると思う。英語が流暢で、感性もアメリカナイズされている娘アンや心疾患持ちの息子デビッドと、何かあるたびにケンカをしてしまう父ジェイコブと母モニカの姿に、「家族」というものの紐帯がどこにあるのかが分からなくなってしまう。祖母スンジャが、家族の形をまとめるのかというタイミングで颯爽と登場するが、デビッドは韓国っぽさ全開でお祖母ちゃんらしさがないお祖母ちゃんのことを好きになれない。そうした家族がどのように「家族」になっていくのか。

 

はっきり言って普通の人の普通の人生にもこうした困難や苦難はつきものだというイベントだらけである。しかし、忘れてはならないのはジェイコブたちは異邦人であり、祖国での生きづらさを抱えていたのだ。そのことを吐露する夫婦のシーンが二つあるが、いずれも静かなシーンでありながら、言葉では言い表せない感慨をもたらしてくれる。

 

またデビッドとスンジャが築くことになる奇妙な信頼と愛情には、時代の背景がそれぞれ反映されているように思う。ジェイコブを手伝うポールは朝鮮戦争への出征経験があり、スンジャは当然、その当事者だった。戦争、および80年代終わりまで続いた韓国の軍事政権=非民主的政権下での生活から逃げ出してきた一家およびその周辺の人々の物語として本作を観れば、どんなにバラバラになりそうでも、まるでミナリ(=セリ)のように、ひとつの家族として再生できるという希望を暗示している。最後のショットは、家族の渡米初日の夜の父の台詞を思い起こせば、非常に味わい深いものとして鑑賞できるだろう。

 

ネガティブ・サイド 

花札にもう少しフォーカスしても良かったのにと思う。『 ジョイ・ラック・クラブ 』における麻雀のようなシンボルになる可能性を秘めていたと思う。

 

ジェイコブの父親としての、夫としてのエゴが少々大きすぎた。序盤に性別で仕分けられた雄鶏の雛が廃棄されているのを指して、「俺たち男は有用でないといけない」とデビッドに語るのは、少々身勝手すぎやしないか。食用にも向かず卵も産まない雄鶏に自分を重ねるのは構わないが、それは人間にとっての見方。アメリカ社会では有用でないと選別されてしまうという移民の悲哀は充分に伝わったが、それを家族内にまで持ち込むのはどうかと思う。そのことが祖母スンジャの中盤以降の生活にも反映されてしまったのではないか。だが、であるからこそ、最終ショットの美しさが際立つのか・・・

 

総評 

これは21世紀の韓国版『 ジョイ・ラック・クラブ 』になるかもしれない。静かな展開で、決してジェットコースター的な物語ではない。そうした意味では一般向きではないかもしれない。『 焼肉ドラゴン 』のようなひとつの異邦人家族の人生の物語を、自分の人生の物語として読み替えられるかどうかが鍵になる。このように書くと大袈裟だが、『 喜劇 愛妻物語 』を観て、なんだかんだあっても家族はやっぱり家族だよなあ、と思える人なら、本作の真価を味わえるはずだ。『 フェアウェル 』に続く、お祖母ちゃんの物語の傑作である。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

アラッチ?

「分かった?」の意。姉が弟によく言っている。かなりフランクな表現なので使いどころには注意が必要である。

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, アラン・キム, スティーブン・ユアン, ノエル・ケイト・チョー, ハン・イェリ, ヒューマンドラマ, ユン・ヨジョン, 監督:リー・アイザック・チョン, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 ミナリ 』 -落地生根の物語-

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