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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: チュ・ジフン

『 プロジェクト・サイレンス 』 -パニック映画の佳作-

Posted on 2025年3月16日 by cool-jupiter

プロジェクト・サイレンス 65点
2025年3月15日 T・ジョイ梅田にて鑑賞
出演:イ・ソンギュン チュ・ジフン
監督:キム・テゴン

 

『 PMC ザ・バンカー 』、『 パラサイト 半地下の家族 』、『 最後まで行く 』などで、爽やかながらもダークサイドを秘めた演技を見せてきたイ・ソンギュンの遺作ということでチケット購入。

あらすじ

国家安保室の行政官ジョンウォン(イ・ソンギュン)は、娘を空港に送る途中、濃霧による多重衝突事故に巻き込まれる。橋が孤立する中、政府が秘密裏に進める対テロ兵器である軍用犬も事故によって放たれてしまい・・・

 

ポジティブ・サイド

序盤はハイペースで進む。主要なキャラクターたちの背景を簡潔に描き、しかもそれが後半から終盤にかけて効いてくる。この脚本家=監督はなかなかの手練れ。多重衝突事故やヘリの墜落、橋の部分的な崩落などもCGながら見応えは抜群。予告編で散々観ていても、本番となるとハラハラドキドキさせられた。

 

序盤であっさりと襲い来るモンスターの正体は犬であるとばらしてしまうのも潔い。犬といっても軍用犬なので強い。一般の成人男性がそこらの野良犬が本気で襲い掛かってきたのを撃退しようとしても、勝率は20%もないだろう。軍人さんが次々にやられていくのもお約束とはいえ納得しよう。

 

橋の上でいつの間にやら結成されるチームが多士済済。政府高官の父と反抗期の娘、踏み倒されたガソリン代を徴収しに来た不良店員とその愛犬、ゴルファーの妹とちょっと間抜けなその姉、認知症の妻を甲斐甲斐しく世話する夫、そしてプロジェクト・サイレンスの研究者の一員である博士。彼ら彼女らの、時にはエゴ丸出しの言動がいつの間にやらファミリードラマやヒューマンドラマとして成立してくるから不思議で面白かった。

 

『 工作 黒金星と呼ばれた男 』では小憎らしさ満開の北朝鮮軍人、『 暗数殺人 』で人を食ったような殺人犯を演じたチュ・ジフンがコミック・リリーフを演じていたのには笑った。完全なる役立たずかと思いきや、とある大技で犬を一時的に撃退したり、最終盤にはとあるアイテムで大活躍したりと、ユーモアある役も演じられる役者であることを証明した。

 

主役のイ・ソンギュンは医師や社長の役も似合うが、今回は次期大統領候補を陰から支える国家公務員役を好演。明晰な頭脳で誰を助け、誰を助けないのか、またどんな情報をどのような形で公開・共有するのかを瞬時に判断する狡猾な男を好演。娘に対しても冷淡に見える態度を取っていたが、それは早くに妻をなくしてしまって以後、娘との距離の取り方を学ぶことができなかった可哀そうなファミリーマンに見えてくるから不思議。よくこんな短い時間にあれもこれもとヒューマンドラマ的な要素を詰め込めるなと感心する。

 

犬との戦い、政府の救助、生存者の脱出劇が交錯して、サスペンスに満ちた90分が続く。韓国映画のパニックものの佳作。特に予定のない週末なら、映画館で本作を鑑賞しよう。

 

ネガティブ・サイド

対テロリストのために研究・開発してきたと言うが、攻撃のトリガーが声だというのはどうなのか。そもそも事前にテロリストの声など入手できるのか。できたとして、その声をいつ、どこで、どうやって聞かせるのか。音は当然、音速でこちらに迫ってくるが、たとえば1km先の目標テロリストが大声をあげたとして、犬が犬がそれをキャッチするのに3秒かかり、なおかつ現場に急行するのに平均時速60kmで走っても1分。役に立つのか?

 

老夫婦の扱い方があんまりではないか。韓国もアメリカのようなプラグマティックな社会になりつつあるのだろうか。

 

総評

頭を空っぽにして楽しめる作品。ホラー要素もないので、怖いのはちょっと・・・という向きも大丈夫。自己中心的な人間の集まりが、いつの間にか熱い連帯を構成するのは韓国映画のお約束で、本作もその例に漏れない。続編の予感も漂わせているが、本作一作だけで完結しているし、そうあるべき。配信やレンタルを待つのも手だが、韓国映画のファンならば劇場鑑賞をお勧めしたい。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンゴ

選挙の意。センキョとソンゴ。確かに音は近い。残念ながら今の韓国は漢字をまともに習った世代がどんどん高齢化しているので、若い世代は筆談で中国人や日本人と意思疎通できないと言われている。いくら右傾化が進んでも、漢字を捨てるなどという残念な決断をしないことを祈る。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ロングレッグズ 』
『 ゆきてかへらぬ 』
『 ミッキー17 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, イ・ソンギュン, スリラー, チュ・ジフン, パニック, 監督:キム・テゴン, 配給会社:ショウゲート, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオ, 韓国Leave a Comment on 『 プロジェクト・サイレンス 』 -パニック映画の佳作-

『 暗数殺人 』 -名もなき死者への鎮魂歌-

Posted on 2020年6月23日2021年2月23日 by cool-jupiter

暗数殺人 75点
2020年6月21日 心斎橋シネマートにて鑑賞
出演:キム・ユンソク チュ・ジフン チン・ソンギュ
監督:キム・テギュン

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200623132521j:plain
 

心斎橋シネマートで予告編を観た時から気になっていた。これはタイトルの勝利である。暗数という聞き慣れない言葉それ自体が強烈なインパクトを持って我々に迫って来る。そして本編も実に強烈なサスペンスであった。

 

あらすじ

刑事キム・ヒョンミン(キム・ユンソク)は恋人殺しの容疑をかけられたカン・テオ(チュ・ジフン)から、「全部で7人殺した」という告白を受ける。テオが死体を埋めたと供述した場所を掘ってみると確かに白骨死体が発見された。だが、テオは突如、「自分は死体を運んだだけだ」と供述を翻して・・・
 

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200623132606j:plain

ポジティブ・サイド

まずはカン・テオという殺人者を演じたチュ・ジフンの迫真の演技に満腔の敬意を表したい。ADHDなのかと思わせるほどの落ち着きのなさの中に、冷酷冷徹な計算が働いている。テオという男は警察や検察がどういう論理で動き、どういう論理では動かないのかを熟知している。人を食ったような態度はその余裕の表れである。同時に、警察や刑事の個人的な心情や信条を巧みに利用する。狡知に長けたサイコパスで、「他人の命はゴキブリと同じ。けど俺の命は違う」という酒鬼薔薇聖斗のような二重倫理の持ち主である。また『 チェイサー 』の殺人鬼ヨンミンが語っていたように、血抜きに言及するところ、死体の重さを生々しく語るところに、韓国映画と邦画の決定的な差を思い知らされるようだった。銀幕の世界の殺人者をどこか神秘的な存在に描いてしまいがちな邦画と、文字通りの意味で血肉の通った人間として描く韓国映画の違いである。命が鴻毛よりも軽く、理不尽な理由であっさりと奪われる。その背景には、お定まりの悲惨な過去があり、うっかり同情させられそうになる。

 

対するキム・ユンソクの刑事役は、警察という「組織でこそ力を発揮できる組織」の一員にはとても馴染まない男である。検挙数や起訴数がそのまま手柄になり昇進に直結するとなれば、誰も暗数殺人などに興味は示さないだろう。では何故、キム・ヒョンミン刑事はテオの供述する暗数殺人に殊更に執着するのか。明確には語られないが、そこには死別した妻に対する愛情が感じられた。悪気はなく、むしろ善意から「結婚はしないのか?」と声をかけてくる同僚警察。だがヒョンミンにそのつもりはない。詳しい説明はなされないが、彼は妻を忘れていないし、忘れるつもりもない。だが、周囲は自分の妻がまるで最初から存在していなかったかのように扱う。そのギャップが刑事ヒョンミンの静かな原動力になっているかのような描写には唸らされた。最後に彼が語る刑事としての捜査の哲学は、韓国社会全体に向けたキム・テギュン監督のメッセージなのだろう。

 

本作のキーワードの一つに「再開発」というものがある。村落の墓地の再開発、アーバンスプロールによって無秩序になってしまった地域の再開発。そうした社会の姿勢は否定されるべきものではない。『 パラサイト 半地下の家族 』で注目されたエリアは再開発と保存の間で揺れていると報道された。開発は、それがsustainableなものである限り、許容されるべきとは思う。一方で、開発されることによってその痕跡を消し去られてしまう者も確実に存在する。

 

『 トガニ 幼き瞳の告発 』のように、韓国映画は実在の事件から着想を得るのが得意なようである。それはつまり、社会を揺るがすような事件は風化させてはならないという韓国映画人の気概の表れなのだろう。本作も同様である。少し異なるのは、大きなスポットライトを浴びた事件ではなく、そもそも日の目を見なかった事件の深淵に光を当てようという試みであることだ。これは現代日本にとっても関連が無いこととは言えない。COVID-19がどこか他人事のように扱われていた2020年2月~3月であったが、志村けんや岡江久美子といった「名前のある」人物が相次いで死亡したことで、国民全体に危機意識が急激に高まった。逆に言えば、名前のない人間が死亡しても、特に誰も気にしないということである。そして名前とは認知・認識の最たる道具である。余談だが、この「名前」というものに意識を持ちながら本作を観ると、名優キム・ユンソク演じる刑事キム・ヒョンミンにある瞬間に同化することができる。

 

認識されない。それは取りも直さず、その人間がいなくなったとしても社会が回っていくということである。だが、個人のレベルではどうか。御巣鷹山への日航機墜落事故、尼崎の福知山線脱線事故など、被害者の遺族の多くが望むのは「事故を風化させないこと」である。事件の被害者も同じだ。忘却しないこと。あなたという人間が存在したこと、その痕跡を消さないこと。それは推し進めるべきは分断ではなく連帯だという強力なメッセージであると思えてならない。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200623132626j:plain
 

ネガティブ・サイド

中盤にヒョンミンが失態を犯して、刑事から交番勤務の警察官に降格および左遷させられるが、ヒョンミンは気にすることなく捜査を継続する。果たしてそんなことは可能なのだろうか?交番勤務でも警察のデータベースにはアクセス可能だが、足を使った捜査は無理だろうし、何より上司に報告の義務があるだろう。それとも韓国の交番勤務の警察官は日本とはまったく違う仕組みで働けるのだろうか。エンドクレジット前の字幕で、キム・ヒョンミン(仮名)は2018年時点でも刑事として捜査継続中とされるが、こうした降格・左遷劇は脚色なのか。だとすれば少々やり過ぎである。

 

『 エクストリーム・ジョブ 』でブレイクを果たしたチン・ソンギュの活躍が少ない。コミカルな役から大悪人まで演じ分けられる遅咲きの役者だが、見せ場がいかんせん少ない。目立たないバディで終わってしまったのが残念である。

 

総評

韓国映画らしい骨太のメッセージと、娯楽映画として申し分のないサスペンスに満ちた良作である。社会の暗部から決して目をそらさないというあちらの映画人の哲学や思想信条を感じる。静のキム・ユンソクと動のチュ・ジフンの演技対決も見応えがある。映画館に足を運ぶ価値がある一作である。 

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンベ

先輩の意味である。先=ソン、輩=べ。『 建築学概論 』でも聞こえてきていたように思う。日本語も韓国語も結構な部分を中国語に負っていることは否めない。上下関係に厳しい韓国社会にも日本語と同じように「先輩」が存在する。階級社会の警察なら、辞めても関係は残る、または続くのだろう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, キム・ユンソク, サスペンス, チュ・ジフン, チン・ソンギュ, 監督:キム・テギュン, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 暗数殺人 』 -名もなき死者への鎮魂歌-

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