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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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タグ: ジョン・チェスター

『 ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方 』 -究極の共生を目指して-

Posted on 2020年4月10日 by cool-jupiter

ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方 80点
2020年4月5日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ジョン・チェスター モリー・チェスター
監督:ジョン・チェスター

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200410000147j:plain
 

4月5日の19:30の時点で座席の売れ行きをHPで確認。何とゼロ!密閉空間ではあるが、密集も密接もしない。以前から気になっていた映画の数々を涙を飲んでスルーしているが、今回は地元の映画館に現金を落とすべく出動した。非国民と呼ばば呼べ。ちなみに劇場鑑賞者はJovian含め3人だった。

 

あらすじ

ジョンとモリーのチェスター夫婦は、愛犬トッドの鳴き声が原因でLAのアパートを出ることに。それを機に料理ブロガーであるモリーは、自身の古くからの夢である健康的な食材を自分たちで育てるという夢を実現すべく、投資を募り、アランというアドバイザーを得て、前代未聞の規模の有機農場を始めるのだが・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200410000231j:plain
 

ポジティブ・サイド

これは2020年屈指の名作である。ドキュメンタリーというジャンルに限定すれば、間違いなく年間ベストである。2020年がまだ3か月しか経過していない時点で、Jovianはそう断言してしまう。それほど、本作が観る者に与える示唆とインスピレーションは巨大である。

 

本作でジョンとモリーが作り出そうとする農園は、その精緻さとスケールにおいて『 サッドヒルを掘り返せ 』における共同円形墓地、『 マーウェン 』における架空の村マーウェン、『 シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢 』における壮大な宮殿に勝るとも劣らない。いや、生きた動植物を直接に扱っているぶん、モリー夫妻のファームの方が、発展させていくのはより難しいかもしれない。

 

本作の描くテーマは“共生”である。共生とは、人間と微生物、人間と虫、人間と動物、人間と植物、つまり大げさに言えば人間と地球の共生である。NHKのテレビ番組『 ダーウィンが来た! 』や『 サイエンスZERO 』で海底火山の噴火で拡大した西ノ島の様子が特集されていたが、そこでは鳥の死骸を虫が食べ、その糞と岩が細かく砕かれた砂が混じることで、植物を育てうる土壌が生み出されているとリポートされていた。チェスター夫妻、そして彼らのメンターのアランの行おうとしていることも、これと同じである。様々な生物 -牛や豚や鶏そしてミミズなど- らを不毛な大地に放ち、それらの糞尿で大地を文字通りに肥やしていく。まるで文明そして農業の歴史の曙光を見るかのようである。小説『 死都日本 』でも「これからは生ゴミや排せつ物の争奪戦が始まります!」という日本国総理大臣の勇ましい演説が聞けるが、このファームはまさにそうした食べて出して食べて出してのサイクルを見事に回している、まことに稀有な農場である。こうした発想の有機農法を、アジア人ではなくアメリカ人が発想し、そして実行していることに衝撃を受けた。

 

また、ビッグ・リトル・ファームの面積が200エーカーというのも驚きである。『 プーと大人になった僕 』で100エーカーの森が描かれたが、あの2倍の広さである。当然、チェスター夫妻が解き放った多種多様な動物たちだけではなく、野生の動物たちもやってくるわけである。そして農園になる野菜や果物が、動物たち、そして虫たちに食い荒らされる。卵を手に入れるために飼っているニワトリも、コヨーテに襲われる。人間が自然をコントロールするのは、やはりおこがましいことなのか・・・ だが、ここで奇跡が起きる。パズルのピースがすべてそろった時、我々は自然の全体像を知る。生きとし生けるものには、すべて役割があったのである。中には少々痛ましいシーンもあるのだが、それも『 野性の呼び声 』にリアリティを与えるものであろう。飼い犬のロージーは野性の呼び声を聞いたのである。

 

本作を観てつくづく感じるのは、天命は確かに存在するということである。そして、現代人の価値観(それは多くの場合、経済的な観念に支配されているのだが)では、カネを稼いでナンボである。だが、カネは手段であって目的ではない。目的は、幸福を生み出すことだ。そして究極の幸福は、夢の実現と他者との共生にある。本作は、そのことを教えてくれる。観る者に生きる勇気と希望を与えてくれる珠玉のドキュメンタリーである。

 

ネガティブ・サイド

序盤の『 インターステラー 』の迫り来る砂塵のごとき山火事の煙のシーンは、最終盤に回してよかったのではないか。すべての歯車がガッチリと噛み合い回り始めた矢先にアクシデントが起きる・・・という展開の方が、ベタではあるが、物語に起伏は生まれただろう。

 

また、ジョンとモリーのメンターであるアランの経歴をもっと知りたいと感じた。最初はとんだいっぱい食わせ者かと思わせてくれたが、実は恐るべき忍耐力と慧眼の持ち主である。偏見を承知で言わせてもらうが、アメリカ人らしからぬ思想・哲学の人である。彼の先祖はヨーロッパ系ではなく17000年前にアメリカ大陸に渡ってきたアジア系移民であろう。

 

また、チェスター夫妻に金を出してくれた投資家というのも、どんな人物なのか気になるし、1年分のカネを6か月で使ってしまったというセリフもあった。カネの流れや動きについても、ほんの少しだけでいいから描写が欲しかったところである。

 

総評

あるシーンでは『 スター・ウォーズ 』のTシャツを着たキャラクターが登場する。その意味するところは明らかである。つまりは、世界にバランスをもたらすことである。映画館が休業する前に本作を鑑賞できたことを映画の神様に感謝したい。ぜひ劇場が再会したら、またはDVDや配信で視聴可能になったら、多くの方に本作を観て頂きたいものである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

in harmony with ~

「~と調和して」の意である。live in harmony with nature=自然と調和して生きる、となる。“和を以て貴しとなす”を是とする日本人であれば、こうした表現を知っておいても良いだろう。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, アメリカ, ジョン・チェスター, ドキュメンタリー, モリー・チェスター, 監督:ジョン・チェスター, 配給会社:シンカLeave a Comment on 『 ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方 』 -究極の共生を目指して-

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