ゴジラ−1.0 75点
2023年11月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:神木隆之介 浜辺美波
監督:山崎貴
『 ドラゴンクエスト ユア・ストーリー 』で多くの映画ファンを激怒させ、『 ルパン三世 THE FIRST 』でやや汚名返上した山崎貴監督。不安を抱きつつチケットを購入したが、本作は当たりだった。
あらすじ
終戦間際。特攻を命じられた操縦士の敷島(神木隆之介)は機体不調により大戸島に緊急着陸する。しかし、その夜、ゴジラが島に襲来し、遣隊は全滅。生き残りは敷島と整備長のみだった。その後、東京へ帰った敷島は両親の死を知る。しかし、そこで連れ子を伴った典子(浜辺美波)と共に奇妙な共同生活が始まり・・・
以下、本作およびゴジラ・シリーズのマイナーなネタバレあり
ポジティブ・サイド
大戸島というロケーションにニヤリ。そして開始5分で登場するゴジラにもニヤリ。『 シン・ゴジラ 』もゴジラ自体の登場は早かったが、本作はいきなりゴジラの全身を見せつけてくれる。
焦土と化した東京も、白黒だった初代ゴジラと違ってリアリティが抜群。登場するキャラクター全員(山根博士除く)に悲壮感いっぱいだった第一作と違い、本作は特攻隊であるにもかかわらず生き延びてしまった敷島や、兵隊が不甲斐ないせいで家族を失ってしまった未亡人など、より様々なキャラクターたちの感情が交錯する。それにより、歴史的に距離がある時代であるにもかかわらず、色々な人物に感情移入しやすくなっている。
ビキニ環礁の核実験でパワーアップ、サイズアップしたゴジラが再登場し、銀座を破壊していくシーンは、まさに初代へのオマージュ。戦車隊の登場にも思わずニヤリ。ゴジラの吐く放射熱線は、ある意味シン・ゴジラ以上の破壊力。モクモクと立ち上るキノコ雲はGMK(私的ゴジラ映画第1位!)を髣髴させる。この圧倒的な絶望感と喪失感!
『 シン・ゴジラ 』は国を挙げてのゴジラ対策だったが、本作は当時の世界情勢と武装解除された日本という状況から、民間人による対ゴジラ作戦を決行。終戦からわずか数年なので、軍の生き残りはそれなりにいる。そして明かされる作戦。ここでも初代のオキシジェン・デストロイヤーを髣髴させるオブジェにニヤリ。作戦としては、生物としてのゴジラの弱点を突くというもので、説得力はそれなりにあった。また『 ゴジラvsコング 』でメカゴジラがゴジラの口の中に攻撃をしようとして観る側を震え上がらせたが、本作はまさにそれを敢行。その直前に艦船が一斉にゴジラを包囲していく際に流れるゴジラのテーマは、まさに初代へのオマージュ。あの特徴的なテンポの曲は、もともと自衛隊登場時のBGMだった。それが本作にゴジラではなく民間戦力のテーマソングとして使用されたことにもニヤリ。最後には『 ゴジラ対モスラ 』での抗核バクテリア弾よろしくゴジラの口に突撃。ボロボロになって沈みゆくゴジラと、エンディングでの不穏なワンシーンは完全にGMKへのオマージュでさらにニヤリ。
古いゴジラ映画の様々なネタを再調理して、見事な一品に仕立て上げている。
ネガティブ・サイド
人間パートが弱い。というかドラマの焦点が見えにくい。敷島と典子とアキ子の疑似家族が真の家族になっていく過程に焦点を当てたいのか、それとも敷島やその他の生き残りたちの戦争トラウマの克服に焦点を当てたいのかが分かりにくかった。二軸ではなく、どちらかに注力すべきだったと思う。
役者の演技のアンバランスというか、主役のはずの敷島が吉岡秀隆や佐々木蔵之介に完全に食われている。演技というか演出も的外れなものが多かった。最終盤、敷島が羽織っていたコートをバサッと地面に落とすのだが、そのタイミングはちょっと違うのでは?と感じた。そういうシーンが多い。敷島の演技というか、監督の演出が主役にだけはハマらなかったように感じる。
総評
ゴジラを定義するのは難しいが、何がゴジラでないのかはすぐにわかる。その意味で、本作に登場するのは確かにゴジラであり、本作はゴジラ映画である。昭和ゴジラといえば日本を破壊しまくり、それでも復興する経済絶好調な日本の産物だった。令和ゴジラはすでに経済的にボロボロな日本が政治的に道を誤ったら復活してしまう存在として描かれている。『 シン・ゴジラ 』で描かれた有能な日本政府という像はフィクションだった。我々民間人がゴジラという虚像(災厄)を虚像(エンタメ)のままにしておかなければならない時代になってしまったようである。
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
detachment
文脈にもよるが、ここでは分遣隊の意味。本体から切り離されて活動することから、そのように呼称される。attachment に「添付」の意味があることはTOEIC500以上なら知っているはず。detachment とは attachment の反対語なのである。
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