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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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『 まともじゃないのは君も一緒 』 -会心のラブ・コメディ-

Posted on 2021年3月21日 by cool-jupiter

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まともじゃないのは君も一緒 75点
2021年3月20日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:成田凌 清原果耶
監督:前田弘二

 

これは久々のヒット作である。近年の邦画コメディとしては『 私をくいとめて 』に次ぐ面白さであると感じた。デートムービーとして最適なので、高校生や大学生にはデートで観て、大いに感想を語り合ってほしい。

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あらすじ

予備校で数学講師をしている大野(成田凌)は対人能力を著しく欠いていた。現状に満足しているものの、独りで居続けることに不安を覚えた大野は教え子の香住(清原果耶)に「普通とは何か」を教えてほしいと頼む。引き受ける香住だったが、彼女には彼女の思惑があり・・・

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ポジティブ・サイド

成田凌のコミュ障ぶりが光る。Jovianのかつての勤め先は塾・予備校系の英会話スクールだったので、塾や予備校の講師の社会人失格っぷりや大人としてのコミュニケーション力の低さはそれなりに知っている。その代わり、彼らは子ども相手には話が上手いし、授業力も高い(が、教務力は低い)。ところが主人公の大野は、そんじょそこらの予備校講師も裸足で逃げ出すコミュニケーション障害者だ。女子にご飯に連れていけと言われて、いつも行っている定食屋に連れて行ってしまうという、恋愛レベルが小学2年生で止まっているとしか思えない行動をとってしまう。まったくもって目も当てられない惨事で、これにツッコミを入れまくる香住とのハイテンポの会話劇がべらぼうに面白い。事実、TOHOシネマズの別館の劇場内では、コンスタントに劇場のあちらこちらから「ワハハ」、「クスクス」といった声が漏れ聞こえていた。劇場内でここまで笑いがシェアされるのは、おそらく『 カメラを止めるな! 』以来である。

 

清原果耶もコメディエンヌとして魅せる。普段の学校では、周りのキャピキャピ女子高生に無理に合わせてゴシップに花を咲かせているのだが、その実態は単なる耳年増、というよりもそれ以前だ。それでも女の勘というか、本能的にというか、コミュニケーションの機微のあれこれを読み取るのが上手い。その一方で自分の気持ちのコントロールとなるとお手上げという、普通の女子高生的な一面もちゃんと併せ持っている。このあたりのナチュラルとアンナチュラルのバランス加減が絶妙だ。自分が恋慕する大人の相手の女を、予備校講師を使って離反させようなどと、アラサーOLでもないと思いつかなそうなアイデアを立案し、作戦を立て、実行してしまうのだから、面白くないはずがない。

 

二人のズレ具合が、逆に大野と美奈子のなんでもない会話やそこに流れる空気の心地よさを倍増させている。映画の、特にコメディの面白さはやはりギャップにあるのだ。この大野と香住の“噛み合っていない”感と大野と美奈子の“噛み合っている”感のギャップが、観る側に最高のもどかしさを提供してくれる。

 

アホのように量産されている漫画原作の高校生の恋愛もの映画と違って、本作は恋愛の本質をしっかりと捉えている。恋愛の本質とは何か。それは「共有」である。たいていの恋愛ものは、恋に落ちる瞬間を劇的な現象として捉えている。それは恋愛ではなく、単なる片思いだ。凡百の恋愛漫画や恋愛映画は、告白したら終わり、付き合い始めたら終わり的な世界観に基づいている(ように見受けられる)が、事の本質はそこにはない。相手を好きになる、そして相手に好きになってもらう/もらいたいと思うのは「共有」を通じてこそだと思う。その意味で『 花束みたいな恋をした 』はリアルだった。まさに、他人からすれば他愛もない会話に没頭できる。ファミレスの決まったテーブルを二人で占有する。そうした「共有」体験を存分に描いていた。本作でも耳年増の香住が同級生の女子とその彼氏を質問攻めしていくシーンは、清原の迫真の演技と、出てくる答えのリアルさが嚙み合った、屈指の名シーンに仕上がっている

 

今春で最もお勧めできる映画の一つであることは間違いない。

 

ネガティブ・サイド

大野の予備校講師という背景がどうにも薄っぺらかった。あれはどう見ても個別指導の塾講師だろう。それに高3相手の予備校講師、しかも数学担当なら、夏は夏季集中講座で手一杯ではないのか。自分で結構いい給料をもらっている的な発言をしていたが、予備校講師など時給制なのだから、本当は夏のあの時期にのほほんと遊びまわってはいられないはずだ。ポスドク、または医学部受験対策専門の家庭教師とかの方が説得力があった。

 

あとはクライマックス、大野が香住に長広舌を垂れるシーンの違和感かな。これこそ正に時間と空間の究極の「共有」だなと観ている時には感じたが、それが特別なものになるのは、他者の知覚に晒された時だ。要するに、他人に見られたり聞かれたりしても、自分たちだけの世界に入っていられるということだ。いわゆるバカップル状態だ。このシーンはバカップルとはちょっと違うのだが、他人の目を気にしないという点では同じである。そしてこのシーン、本当に他人の目がない。耳もない。予備校なのに。「なんだあいつら、こんな時間にこんな場所で自分たちだけの世界に入りやがって」という他者の無言の圧力こそが必要なシーンだったのに。

 

総評 

細かな弱点や欠点はいくつもあるが、それらのほとんどすべてを吹っ飛ばしてしまうパワーを持った作品である。成田凌と清原果耶のワンカットの会話劇の豊富さ。そこにあるユーモア。二人のズレから生まれるハラハラドキドキ。ラブコメはラブコメなのだが、漫画的な面白さを追求した『 センセイ君主 』とは違って、フィクション全開のリアル路線。こんな奴ら、実在するわけねーだろと思える一方で「頑張れ!」とエールを送りたくなる二人。カップルでも夫婦でも楽しめる一作だ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

normal

「普通」や「まとも」の意味。元々はnorm=規範という語に接尾辞-alをつけて形容詞化した語。normの意味を知っていれば、abnormalやenormousといった関連語の意味やイメージも把握しやすい。

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, B Rank, ラブコメディ, 成田凌, 日本, 清原果耶, 監督:前田弘二, 配給会社:エイベックス・ピクチャーズ

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