かいじゅうたちのいるところ 65点
2020年7月7日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:マックス・レコーズ
監督:スパイク・ジョーンズ
シカゴ在住の友人からキッズへの英語レッスン教材として勧められたのが、『 グリンチ 』と『 かいじゅうたちのいるところ 』だった。『 ブラッド・スローン 』をMOVIXあまがさきで公開していたのと同時期に『 アイム・ノット・シリアルキラー 』という珍作ホラーも公開されていた。その主人公のマックス・レコーズの子ども時代の作品。これも何かの縁ということでDVDをレンタル。
あらすじ
空想好きのマックス(マックス・レコーズ)は、どこか家族にも周囲の人間にも上手く馴染めない。母親とのちょっとした行き違いから大ゲンカになってしまったマックスは家を飛び出し、そのまま船に乗って大海原へ飛び出した。そして「かいじゅうたちのいるところ」にたどり着いたのだが・・・
ポジティブ・サイド
疎外感を感じる子どもが主人公のファンタジーと言えば、まずは『 ネバーエンディング・ストーリー 』が思い浮かぶ。近年の作品では『 バーバラと心の巨人 』が思い出される。古典的な作品では、やはり『 オズの魔法使 』は外せない。また、子どもが空想の友人と遊ぶ作品では『 ジョジョ・ラビット 』の面白さが突出している。空想世界を題材にしたファンタジーの面白さは、現実世界がどのようにそこに反映されているのかで決まると言ってよい。その意味で、本作は及第点以上である。
まず、着ぐるみを採用したのが大きい。表情は後からCG処理したのだろうが、これによって「かいじゅうたち」の存在感、実在感が確実に増している。2020年時点ではCGだけならば『 ライオンキング 』や『 野性の呼び声 』からも分かるように、本物と見分けがつかないレベルに達している(もちろんカネと時間が必要だが)。しかし着ぐるみには重みや手触りがある。他の生き物や事物と触れ合うことができる。もしも本作の「かいじゅうたち」がフルCGだったなら、最終盤のとあるキャラとマックスの究極の触れ合いが、逆にちゃちなものに感じられただろう。これは一種の胎内回帰願望の表れで、冒頭の雪のトンネルでも強く示唆されていたことである。非常に分かりやすくシンボルを配置しているが、これは子どもでもなんとなく理解できるだろう。我々は皆、何故か小さい頃、押し入れだったり、屋根裏だったりと、暗く狭いところに惹かれていた時期があったはずである。本作は辛い現実を空想世界に投影することで、その空想世界すらも辛い場所にしてしまうストーリーであるが、そこには救いがある。庇護がある。また子ども自身の成長もある。予定調和的であるが、最後の最後には安心するし納得できるのである。
様々な悩みであったりストレスを抱える「かいじゅうたち」は、マックスの現実世界での人間関係・人間模様の投影である。そして、そこにはマックス自身の影も存在する。キャロルという「かいじゅう」はマックスの負の部分を体現したキャラクターである。疎外されていると感じていたマックスは、キャロルを通じて、自分が疎外されていたのではなく、悩みを抱えているのは自分だけだという錯覚に陥っていたことに気付く。簡単すぎず、かといって難しすぎない見せ方は、まさにファミリー向けである。
ネガティブ・サイド
一部のかいじゅうの行動にドン引きさせられる。木に穴をあけるのは、それが仕事とあらばしょうがないが、いたいけなフクロウを投石で撃墜して、「この子たちは、これが嬉しいんだ」と言い放つのには正直引いた。また、マックスに負けず劣らずの強情っぱりのかいじゅうが、「フクロウと一緒に寝られるか」というのにも違和感。そもそもフクロウは夜行性ではなかったか。
また、かいじゅうたちの理解に苦しむ言動がマックスを蝕む過程もやや唐突だ。子ども向けであるならば、もっとこの王国の愉快なところ、楽しいところを強調する描写が欲しかった。それこそ原作には存在せず、だからこそ映画というビジュアルな媒体で存分に表現すべきものだろう。
エンディングにも少々不満である。マックスが求めていたのは家族との触れ合い、お互いを認め合うことだった。そこに姉の姿が見られなかったのは個人的には納得がいかなかった。
総評
良作である。色々と???なところもあるが、絵本の世界をビジュアルの面でもストーリーの面でも、ここまで大きく膨らませて、なおかつ綺麗に着地させるのはスパイク・ジョーンズ監督の手腕だろう。COVID-19が静かに再拡大の様相を見せている今、映画館に行かないという選択をする映画ファン、特に家族持ちにお勧めをしたい作品である。
Jovian先生のワンポイント英会話
Knock it off
「やめろ」、「うるさい」、「いい加減にしろ」、「そこらへんにしとけ」のような意味である。職場であまりにも雑談が過ぎる、あるいは声のボリュームが大きすぎる人がいたら、心の中でこのように唱えてみよう。