ミッキー17 65点
2024年3月29日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ロバート・パティンソン ナオミ・アッキー マーク・ラファロ トニ・コレット
監督:ポン・ジュノ
ポン・ジュノ監督の作品ということでチケット購入。
あらすじ
借金取りから逃れるために、使い捨て人間として宇宙に出ることに決めたミッキー・バーンズ(ロバート・パティンソン)。しかし、それは過酷な環境での人体実験の被験者になることだった。死んでも死んでもリプリントされ、記憶もインストールされるミッキーだが、ある時、事故から生還すると、そこにもう一人のミッキーがいて・・・
ポジティブ・サイド
『 TENET テネット 』や『 THE BATMAN ザ・バットマン 』でクールな役を好演してきたロバート・パティンソンが、悲惨なお笑いキャラに大変身した。もうそれだけで笑える。『 エリジウム 』とはある意味で正反対の世界ながら、同作の治癒マシーンをはるかに超えた、人間プリンターには驚かされた。ただ、100年後ぐらいには中国が作りそうな装置ではある。ここから量産される人間を使って、普通の人間に対しては行えないアレやコレをやってやろうというのは『 火の鳥 生命篇 』。漫画好きのポン・ジュノらしい。
宇宙船の中でも格差社会が存在するのは、『 スノーピアサー 』の拡大版。子どもが搾取されるのではなく、大人のエクスペンダブルが搾取される。しかし、宇宙放射線対策やワクチン開発のための人体実験で死にまくっているミッキーは、英雄なのか奴隷なのか。
そのミッキーを虐げる悪役をマーク・ラファロとトニ・コレットが巧みに演じた。特にトニ・コレットは、時にユーモラス、時にホラーと、顔芸だけではなく確かな演技力を披露してくれた。
やっとたどりついた新天地のニフルヘイムの先住者は『 風の谷のナウシカ 』の王蟲そっくり。この時点である程度展開は読めるのだが、ちょっとしたひねりも加えられていて、それがしっかりエンターテインメントにもなっている。
死ぬとはどういうことか問うことを通じて、生きるとはどういうことなのかを逆に問い直そうとする作品。一人でじっくり鑑賞しても良し、家族や友人と連れだって鑑賞し、あれこれを感想をシェアするのもいいだろう。
ネガティブ・サイド
ティモやカイといったキャラクターはもう少し深掘りできたのではないか。もしくはバッサリと存在ごとカットしてもよかったかも。
重複存在となったミッキー17とミッキー18が、マイルドとハバネロぐらい異なる性格になったことに対して全く説明がなかったのが気になる。記憶を保存して、それをリプリントされた個体の頭脳にインストールする。ここまではSFでよくある設定。ただ、同じ肉体、同じ記憶であるにも関わらず、全く異なるパーソナリティになってしまう説明が欲しかった。たとえば、ミッキー5まではこうだったけど、ミッキー6はちょっと変な奴だった、のようなエピソードがあればもっと得心がいったのだが。
テーマは What’s it like to die? だったはずだが、そこに占める異星生命との遭遇の割合が大き過ぎたように思う。延々と人体実験に晒されつつも、ある時、死んでしまったミッキーに人工呼吸やら胸骨圧迫をして蘇生させる必要が生じた。しかし、蘇生はできずリプリントした。なぜ我々はリプリントされる彼を蘇生させようとしたのか・・・と問うような物語もありえたのかな、と思う。
総評
決して傑作ではない。しかし駄作でも凡作でもない。ブラック・コメディとして普通に面白い作品。保守化に邁進する第2次トランプ政権のアメリカ社会とその歴史を下敷きに本作を鑑賞すれば、ポン・ジュノ監督が何を笑いに変えようとしたかったのかが見えてくる。格差、階級、移民、異邦人。なかなか解決できない問題だが、笑い飛ばすことはできる。
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
work one’s ass off
直訳すると、働いて誰かの尻が離れてしまうだが、実際は「めちゃくちゃ頑張る」ということ。We all have to work our asses off. To hell with my company… のように言える。こういうことがサラッと言えれば英検0級である。
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『 ケナは韓国が嫌いで 』
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