Bird Woman 65点
2023年4月15日 シアターセブンにて観賞
出演:大原とき緒
監督:大原とき緒
大学時代の友人の勧めで鑑賞。なんと彼女は本作の一つ『 Bird Woman 』にエキストラとして出演している。劇中歌の終わり、車掌室(運転室)を背にしたマスクの女性がそうである。
あらすじ
コロナ禍の東京。マスクで顔を隠した男たちの痴漢行為に辟易していたトキ(大原とき緒)は、鳥のマスクを入手する。そしてその仮面を身に着けて電車内で痴漢を撃退していき・・・
ポジティブ・サイド
Bird Woman というのは一種のスーパーヒーローへのオマージュなのだろうが、それよりも個人的には中世の黒死病、いわゆるペスト患者の対応にあたった医者たちの防護服の方をより強く想起させる。痴漢は一種の病気やね。
この Bird Woman が一種のムーブメントとなっていくところが面白い。『 ワンダー・ウーマン 』の公開当時、世界中が湧きたっていたが、それと同じ熱量が小市民的に展開されるのが日本らしいと感じた。そしてそのムーブメントが公権力によって規制されていくところに日本社会の病根も見て取れた。
劇中歌の『 青空でなくてかまわない 』には不覚にも感動してしまった。英語字幕だと Who cares if the sky ain’t blue? だったか。女性かくあるべし、というのは思い込みなのだ。
ネガティブ・サイド
女の敵は女という面も映し出されてはいたが、現・東京都知事を悪の女帝として描いてしまえばよかったのに、それをしなかったのは何故なのか。
一つひとつのショットの意図があまりにも露骨であるとも感じた。ハイヒールのズームなどは特に。普通に見れば見逃してしまう、しかしよくよく見れば日常生活のあちこちに女性を抑圧するアイテムや構図が潜んでいるというカメラワークを追求できなかったか。
総評
映画にはエンタメ、芸術、物語の三領域があると(勝手に)思っているが、本作は物語性が非常に強い。なのである意味で観る人を選ぶ作品と言える。痴漢は犯罪だが、話の本質はそこではなく、個の女性に一度反撃されてしまえば、個の男性は太刀打ちできず、権力の行使に走るという滑稽さだろう。日本の個の男の弱さが見透かされてしまったか。
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
grope
手でまさぐる、の意。転じて groper = 手でまさぐる人 = 痴漢 という訳語に使われていた。grope はそうした意味で使われることもあるが、実際は grope about in the dark = 暗闇の中で手探りする、という形で使われることも多い。英語中級者以上なら知っておいていいだろう。