トップガン マーヴェリック 90点
2022年6月4日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:トム・クルーズ マイルズ・テラー
監督:ジョセフ・コジンスキー
また観てしまった。会社でも40代~50代のオッサン連中(日本人&外国人)から「観てきたぜ!」のと報告が相次いでいる。「当時はみんな、レザージャケットを着てKAWASAKIのバイクに乗っていた」と懐古する声が特に印象に残った。会社でも世間でも本作の評判は上々のようである。
あらすじ
マーヴェリック(トム・クルーズ)は、予定されていたダークスターのテスト飛行がキャンセルされると聞いたが、クルーと共にフライトを強行し、マッハ10を達成する。処罰の対象になるかと思われたマーヴェリックだが、盟友であり提督となったアイスマンの取り計らいにより、トップガンにおいて難関ミッションに挑む若きパイロットたちの教官となる。しかし、そこにはかつての相棒グースの息子、ルースター(マイルズ・テラー)も加わっており・・・
以下、ネタバレあり
ポジティブ・サイド
トップガン・アンセムからの『 Danger Zone 』+空母から発艦していくF-18だけで、この世界に吸い込まれていく感覚は2度目の鑑賞でも健在。やはり『 スター・ウォーズ 』のオープニング・タイトル映像+ジョン・ウィリアムズのテーマ音楽に匹敵する力を感じた。
前作でも戦闘機の疾走感は存分に味わえたが、今作の工夫として大空ではなく低空を飛行するシーンをかなり多めに使うことが挙げられる。これにより景色が流れていくのを目にすることができ、戦闘機の常識外れのスピードを視覚で直接的に体験することができるようになった。Gを感じることはできないが、爽快感は確実に感じられる。
初回鑑賞時に見誤っていたのが、ミッション遂行時の条件。最高高度100フィート、最低速度660ノット/時だった。ゲームのAce Combatでこれをやれと言われても無理である。特にハイGクライムからの背面ダイブ、そして精密爆撃からの再度のハイGクライムはメビウス1やサイファーでも不可能に思える。だからこそ、それをシミュレーションでも本番でもやってのけるマーヴェリックに痺れてしまう。
ロシアが仮想敵国として描かれているが、コロナによって上映が2年以上遅れ、プーチンがウクライナへ侵攻したことで、本作の持つ意味が偶然にも大きくなった。「抜かずの剣こそ我らの誇り」とは漫画『 ファントム無頼 』の神田の台詞だが、抜かないからといって剣をなまくらにしておいてよい理由はない。マーヴェリックは米海軍のパイロットでトップガンの教官だが、日本の自衛隊の飛行教導群にもマーヴェリックのような凄腕パイロットはいるはずなのだ。日本はロシア、中国、北朝鮮と覇権主義あるいは先軍主義の国に面しており、地政学的に高い防衛力を要求される国である。平和を脅かす真似をするから先制攻撃・・・という考え方には素直に首肯はできかねるが、平和を維持するためには膨大なエネルギーが必要である。
コロナ禍によってエッセンシャル・ワーカーという存在が初めて可視化された。ロシアのウクライナ侵攻によって、我々が気付いていないところで平和の維持に従事する人間がいるのだということが本作によって多くの人によって意識されることと思う。しかし、ゆめゆめ本作のメッセージを誤って受け取ることなかれ。マーヴェリックが望むのは、愛する人と共に平和な空を飛ぶことである。決して撃墜王になることではない。
ネガティブ・サイド
映画そのものの出来とは無関係なこと2つ。
なぜ4DXやMX4D上映は日本語吹き替えばかりなのか。航空業界の Lingua Franca は英語と決まっているのだが。
ハングマンが言われる、あるいは言う “You look good.” や I’m good.” の「調子が良い」というのは誤訳だと思われる。ニュアンスとしては「良い腕してる」の方が近いはず。最後に颯爽と現れて絶体絶命のマーヴェリックとルースターを助けたところで、フェニックスが “Hangman is good, but Mav is better.” みたいなことを言っていたことから、調子ではなく腕前と解釈すべきだろう。
総評
さすがにプロットが全部わかったうえで鑑賞すると、初回の興奮は消えてしまう。しかし逆に本作の映像的に優れた面により集中して鑑賞することができたように思う。すまじきものは宮仕えと言うが、サラリーマン社会よりも遥かに厳しい軍隊において、自分の美学=仲間を見捨てない、死なせないという思いを貫くマーヴェリックに、勇気をもらうオッサン連中は多いはず。さあ、オッサンたちよ。初回を一人で鑑賞したなら、次は前作を配信やレンタルで家族鑑賞だ。そして本作を家族で劇場鑑賞しようではないか。
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
at the request of ~
「~のリクエストによって」の意。劇中では “You are here at the request of Admiral Kazansky, a.k.a. Iceman.” という形で使われていた。ネット掲示板ではしょっちゅう、This post was deleted at the request of the original poster. という風にも使われている。