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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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『 グッドライアー 偽りのゲーム 』 -少々拍子抜けのミステリ-

Posted on 2020年3月1日2020年9月27日 by cool-jupiter

グッド・ライアー 偽りのゲーム 60点
2020年2月24日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:イアン・マッケラン ヘレン・ミレン
監督:ジム・コンドン

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200224161112j:plain
 

イアン・マッケランとヘレン・ミレンの共演、そして競演。日本で言えば石橋蓮司と吉永小百合をダブルキャストするようなものか。このキャスティングだけでも観る価値はある。だが、キャスティング以上に見るものは残念ながらなかった。

 

あらすじ

ロイ(イアン・マッケラン)は年季の入った老齢の詐欺師。インターネットの出会い系サイトで知り合った未亡人のベティ(ヘレン・ミレン)の資産をそっくり頂戴してしまおうと画策していた。彼女の孫に手を焼きながらもベティの信頼を得ていくロイ。しかし、二人でドイツに旅行に行くことになったことから、事態は思わぬ方向へと動き出し・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200224182832j:plain
 

ポジティブ・サイド

イアン・マッケランほどになるとキャラクターをactingするのではなく、キャラクターをbeingする。そのような感想さえ抱く。この御仁はマグニートーのイメージが強いが、ガンダルフの白髭もパッと思い浮かぶ。善と悪、両方で象徴的な役を演じられるのはそれだけで名優の証拠である。本作でも好々爺然とした顔と冷酷無比で暴力に訴えることにも躊躇しない極悪人の顔の両方を瞬時に入れ替えて見せる。目と口角だけですべてを語り切れる男である。ジェームズ・マカヴォイの40年後は、こんな俳優なのだろう。

 

受けて立つヘレン・ミレンも素晴らしい。御年70歳であるが、高貴な気品に満ち溢れている。だが、『 クィーン 』で現英国女王エリザベス2世を演じる一方で、『 くるみ割り人形と秘密の王国 』のマザー・ジンジャーも好演するなど、その演技の幅の広さはイアン・マッケランに引けを取らない。その演技の何が素晴らしいかと言えば、未亡人の在り方をまさに体現しているところ。夫と死別したという不幸を背負いながらも、自分の人生は自分のもの。私は私として生きていくのだという楽天的とも必死とも言える決意を秘めた様は、古今東西の未亡人の鑑であろう。皆さんの周りにもきっといるだろう、とてつもない亭主関白の夫婦が。だが、そんな夫婦でも夫が先に逝くとどうなるか。残された妻は生き生きとするのである。いや、それは不謹慎だと言うなら、一度平日の昼間の大病院の外来を覗かれたし。多くの老人をそこに見ることができるだろう。そして男女比に目を凝らしてほしい。女性の方が多いことに気づくはずである。なぜなら、年老いた男は一人では病院には来れない。妻か、あるいは娘が90%の確率で付き添っている。一方で矍鑠たる女性たちを見よ。病院で一人で名前を呼ばれるのを待っているのはほぼ間違いなく女性である。そして、おしゃべりに花を咲かせるのも100%近く女性である。ヘレン・ミレンはそんな生き生きとした女性像を鮮やかに、しかし非常に貞淑に打ち出した。

 

何を言ってもネタバレをしてしまう恐れがあるため控えるが、演技合戦という意味では『 天才作家の妻 40年目の真実 』にも勝るだろう。『 2人のローマ教皇 』のアンソニー・ホプキンスとジョナサン・プライスの競演にも勝るとも劣らない。老練・熟練という言葉では足りない。極上の演技合戦を堪能するなら、本作で決まりである。

 

ネガティブ・サイド

トレイラーにあるように、好々爺の仮面をかぶった詐欺師が近付いてくるのを、資産家未亡人の孫が何とか食い止めようとするのだが・・・という煽り方で何か不都合があったのだろうか。制作国のアメリカでも、【 ヘレン・ミレンが“最強の悪女”に! 】、【 大人の騙し合い! 】などというアホな宣伝をしていたのだろうか。これでは原題の“The Good Liar”(単数形)が誰を指すのか、一目瞭然ではないか。何故に作品のミステリ要素を最初から減じてしまうような興ざめなことをやらかすのか。アホなのか。

 

本作は要するに『 太陽がいっぱい 』なのである。本来はポジティブな要素なのだろうが、なぜ舞台が2019年ではなく2009年なのか。Jovianは冒頭から疑問であった。だが、ある瞬間にピンと来てしまった。それはJovianの職業に少々関係がある。とにかく何を言ってもネタバレになってしまうから言えないのだが、Jovianは話のどんでん返し部分にかなり前に気づいてしまった。なので本作のミステリ部分、そこから生まれるサスペンスを味わうことができなかった。何のことか分からん、という人はJovianが毎回やっているワンポイントレッスンが何なのか、確認されたし。まあ、普通はこんなことは絶対に思い至らないだろうが、Jovianと同じ職業の人はある瞬間のロイのセリフに「ん?」となると思われる。フェアな伏線だったが、すれっからしの英会話スクール勤務のサラリーマン・シネファイルの目と耳はごまかせないのである。

 

本作で少々気になったのは監視カメラ。意味ありげにあるシーンでずーっと映っていたので、「ははーん、ロイは監視カメラの一つは上手く避けたが、これが後々効いてくるのだな」と思わせて、何もなかったところ。それだけならJovianの深読みしすぎで済む。しかし、この監視カメラ絡みの事件でロイが裁かれないのは不満であった。

 

総評

途中で真相が見えてしまうと、どんなに秀逸なミステリでも興ざめしてしまう。ただ、割と辛めの点数をつけているが、実際には70~75点は与えられるはず。なぜならJovian妻は真相を知って驚天動地という面持ちだったからである。演技を堪能しても良し、真相を見破ってやろうと意気込むも良し、きれいに騙されるのも良いだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

tiny

「とても小さい」の意である。ベティが心臓発作の程度を表して、このように言う。どれくらい小さいかというと、かのマイケル・ジョーダンが電撃引退後にバスケットボール復帰への可能性を問われ“Tiny tiny tiny tiny tiny tiny tiny tiny tiny.”とtinyを9回繰り返した。MJがその後、野球を経由したもののNBAに復帰したのは誰もが知るところである。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, アメリカ, イアン・マッケラン, サスペンス, ヘレン・ミレン, ミステリ, 監督:ジム・コンドン, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画

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