Skip to content

英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

  • Contact
  • Privacy Policy
  • 自己紹介 / About me

『 SANJU サンジュ 』 -歌と踊りが少なめのシリアスなインド映画-

Posted on 2019年6月20日2020年4月11日 by cool-jupiter

SANJU サンジュ 80点
2019年6月16日 塚口サンサン劇場にて鑑賞
出演:ランビール・カプール アヌシュカ・シャルマ ソーナム・カプール
監督:ラージクマール・ヒラーニ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190620150241j:plain

ラージクマール・ヒラーニ監督の『 きっと、うまくいく 』と『 PK 』は極上のエンターテインメント作品であった。本作はどうか。やはり傑作であった。

 

あらすじ

サンジャイ・ダット(ランビール・カプール)、通称サンジュはインドの人気俳優。しかし、母の早すぎる死、ドラッグへの惑溺、恋人との別離から彼の人生は転落していく。そして、銃の所持による逮捕、さらにはテロ事件への関与も疑われたサンジュは遂に塀の向こうの人となる。サンジュはしかし、諦めていなかった。信頼できる作家に自分の伝記を書いてもらい、世間に自らの実像を知らせようとしていた・・・

 

ポジティブ・サイド

『 きっと、うまくいく 』でもアーミル・カーンが40代にして大学生役を演じたが、ランビール・カプールも負けていない。『 PK 』の、どこか憎めない兄貴、知らないところで大活躍の兄貴、なんでこんなことになってしまうんだと思わされてしまう兄貴。そんな兄貴を演じたサンジャイ・ダットの波乱万丈を絵にかいたような人生、それを映画化するにあたって、ランビール・カプールも念入りに顔と体を作ってきた。ぎこちない演技、父とのかかわりとプレッシャー、ひょんなことから手を出してしまったドラッグ、無二の親友との出会い、ハイになってしまったまま迎えた恋人との破局、獄中生活のすべてが迫真性を有している。というのも、メディアが報じるサンジュの姿と、我々が追いかけるサンジュの姿に常にずれが生じるからだ。伝記作家ウィニー(アヌシュカ・シャルマ)が取材していく中で浮かび上がっていくサンジュの姿は、それを語る者によって変化する。陰影が強くなるのだ。誰が見ても同じ、誰が語っても同じという人物は極めて皮相的だ。人間というのは、重層的な存在なのだ。そして時に応じて変化する。そうした人間本来のありうべき姿を見事に描出したランビール・カプールは、表現者としての階段をまた一歩上に登ったのではないだろうか。彼のサンジャイ・ダットのportrayalは完璧に思える。

 

ソーナム・カプールも称賛したい。『 パッドマン 5億人の女性を救った男 』では道ならぬ恋慕をするキャリアウーマンを演じたが、今作では悲劇のヒロインに。彼女も an epitome of Indian beauty の一人だろう。美女の顔が悲嘆で歪むのを見るのは、大変なる痛苦である。それをもっと見たいと思ってしまうのは、Jovianにはサドマゾヒスティックな嗜好があったのだろうか。

 

しかし何よりも称賛に値するのはサンジュの無二の親友カムレーシュを演じたヴィッキー・コウシャルだ。メイクアップアーティストやヘアスタイリストの貢献度も大のはずだが、何よりも本人の演技力が光る。若かりし頃と現在とで、サンジュ本人よりも成長や老成の跡が見られる。そして、サンジュ本人は底抜けに明るく、ダークサイドから這い上がってくる強さも併せ持つ、不撓不屈の男でもある。そんなサンジュの苦悩を、カムリが対照的に映し出す。何年も音信不通であり、サンジュの逮捕を伝える新聞記事の切れっぱしを後生大事に持ち歩き、無二の知音を得た夜のことを、まるで昨日のことであるかのように鮮明に思い出せる。女性に対してもプラトニックで、男の純粋さの全てを体現したかのようなキャラクターである。このような友を持つことができる男は果報者である。タイガー、タイガー!

 

実在の映画俳優をフィーチャーしているだけあって、古今東西の映画の小ネタも大量にちりばめられている。最も分かりやすいのは『 ロッキー4 炎の友情 』のトレーニングシーンだろうか。『 ロッキー 』ではなく、『 ロッキー4 炎の友情 』というところが渋い。

 

歌と踊りは少なめであるが、その不満はエンドクレジットが解消してくれる。この何とも可愛らしいダンスは、『 帝一の國 』における美美子のパフォーマンスに優るとも劣らない。というのは、Jovianがもはや美少女よりもオッサンに感動させられる精神年齢に達してしまった証拠なのだろか。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190620150643j:plain
 

ネガティブ・サイド

アヌシュカ・シャルマの出番が少ない。

アヌシュカ・シャルマの出番が少ない。

アヌシュカ・シャルマの出番が少ない。

アヌシュカ・シャルマの出番が少ない。

 

 

総評

一人の俳優の人生が、インドの社会構造や歴史とリンクしていく様は圧巻である。のみならず、友情の普遍性や家族愛、人間の尊厳という時代や地域を超えて語るべきテーマを、陳腐になる一歩手前で感動的に描くことこそヒラーニ監督の手腕であろう。作品全体にややダークなトーンが貫かれているという点で、『 きっと、うまくいく 』や『 PK 』のような一部だけがダークな作品よりも、少し入りにくいかもしれない。ただ、そのことが本作の大きな減点要因にはならない。ぜひ多くの方にサンジュの人生の追体験をしていただきたい。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190620150440j:plain

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, アヌシュカ・シャルマ, インド, ソーナム・カプール, ヒューマンドラマ, ランビール・カプール, 監督:ラージクマール・ヒラーニ, 配給会社:ツイン

投稿ナビゲーション

Previous Post『 トゥルース・オア・デア 殺人ゲーム 』 -夏恒例のクソホラー映画-
Next Post『 青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない 』 -オタクに媚びるのもほどほどに-

コメントを残す コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

最近の投稿

  • 『 サンダーボルツ* 』 -ヒーローとしても人間としてもしょぼい-
  • 『 今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は 』 -青春の痛々しさが爆発する-
  • 『 28週後… 』 -初鑑賞-
  • 『 28日後… 』 -復習再鑑賞-
  • 『 異端者の家 』 -異色の宗教問答スリラー-

最近のコメント

  • 『 i 』 -この世界にアイは存在するのか- に 岡潔数学体験館見守りタイ(ヒフミヨ巡礼道) より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に cool-jupiter より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に 匿名 より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に イワイリツコ より

アーカイブ

  • 2025年5月
  • 2025年4月
  • 2025年3月
  • 2025年2月
  • 2025年1月
  • 2024年12月
  • 2024年11月
  • 2024年10月
  • 2024年9月
  • 2024年8月
  • 2024年7月
  • 2024年6月
  • 2024年5月
  • 2024年4月
  • 2024年3月
  • 2024年2月
  • 2024年1月
  • 2023年12月
  • 2023年11月
  • 2023年10月
  • 2023年9月
  • 2023年8月
  • 2023年7月
  • 2023年6月
  • 2023年5月
  • 2023年4月
  • 2023年3月
  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月

カテゴリー

  • テレビ
  • 国内
  • 国内
  • 映画
  • 書籍
  • 未分類
  • 海外
  • 英語

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
Powered by Headline WordPress Theme