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『 シュガー・ラッシュ:オンライン 』 -『 レディ・プレイヤー1 』への意趣返し?-

Posted on 2019年1月29日2019年12月21日 by cool-jupiter

シュガー・ラッシュ オンライン 60点
2019年1月24日 大阪ステーションシネマにて鑑賞
出演:ジョン・C・ライリー サラ・シルバーマン ガル・ガドット タラジ・P・ヘンソン
監督:リッチ・ムーア フィル・ジョンストン

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およそプリンセスらしくないプリンセスのヴァネロペが、インターネット世界で様々なプリンセスおよびキャラクターと邂逅する。そして、ラルフとの友情に一つの区切り、転換点を迎える。前作の『 シュガー・ラッシュ 』が役割と人格を巡る物語であるとすれば、本作は主体の主体性、すなわち自由を巡る物語であると言える。Jovianは作家の奥泉光に私淑しているが、彼は我々の共通の師である並木浩一との対談で、並木から「自由とは、自由であろうとすること」との言葉を引き出している。Jovianがここで言う自由も、自由であろうとすることを指しているとご理解頂きたい。

 

あらすじ

ラルフとヴァネロペは、それぞれのゲームで活躍しながら、良好な親友関係を続けていた。ある日、ハプニングにより、シュガー・ラッシュのゲーム筺体が破損。修理部品を手配する為に、ラルフとヴァネロペはインターネットの世界に飛び込んでいく。そこでヴァネロペは様々な出会いを通じ、自分が本当にやりたいことを見つけ出すのだが・・・

 

ポジティブ・サイド

前作でも同じことを感じたが、CGが違和感なく感じられるのは個人的には大いなるプラス。現実世界のゲームのCGは余りにも美麗になりすぎたが、一定以上の世代の人間ならドラゴンクエストやファイナルファンタジーの二次元ドット絵に愛着を感じるだろうし、パックマンやインベーダー・ゲーム、ドンキーコングのようなグラフィックでも充分だとさえ言える。CG嫌いが少し弱まってきたのだろうか。

 

前作ではレトロゲームのキャラが多数カメオ出演していたが、今作ではネットのビジネス世界の列強が勢ぞろいしている。日本からは楽天が参戦しており、そのほかにもLineやmixiも目に入ってきた。その他のネットビジネスの巨人であるAmazon,eBayを筆頭にYouTube,Facebook,Google,InstagramにTwitterと何でもござれ。これらのサービスの全てもしくはいくつかを使ったことがある人ならば、思わずニヤリとさせられる描写も多く、なおかつインターネットという世界を直観的に理解できるようなビジュアル世界も構築できている。これは凄いことだ。最も象徴的なのは、ネット世界では距離の概念が“ほとんど”無いのだということを描き出していること。また、IPアドレスによって個を識別しているということ。そしてデータのコピーにかかるコストがほぼゼロであることを良い意味でも悪い意味でも映し出したこと。これらに個人的には最も唸らされた。

 

今作ではラルフとヴァネロペの友情に新たな展開が見られる。自分の役割を受け入れることができたラルフと、やっと自分の役割を果たせるようになったヴァネロペの間に、温度差が生まれるのは蓋し当然でもあっただろう。ラルフは悪役であることを受け入れ、ゲーム外の時間でヴァネロペと変わらない時間を過ごす。しかし、ヴァネロペは決まり切ったレースコースを走ることに厭いていて、変化を求めている。シュガー・ラッシュ内でも他キャラがプリンセスとして接してくるのに対して、対等な関係を求める。ヴァネロペは「自分が自分らしくある」ことを目指したいのだ。それこそが主体の自由である。ゲームの垣根を乗り越えて、自らのアイデンティティを定めようとしてく、このリトル・プリンセスの姿に、一つのグローバル時代の個の在り様を見るようである。

 

また、本作ではディズニー世界のプリンセスが勢ぞろいする。Jovianは一部しか作品は鑑賞していないが、それでも彼女たちが語るプリンセスの条件(予告編で散々流れているのでネタばれにはあたらないだろう)に、我々はいかに個の在り方が非常に限定的、なおかつ与えられた役割を全うすること、もっと言えば非常に受動的な属性で塗り固められているかということを思い知らされ、愕然とする。ヴァネロペがネット世界でゲームの垣根を超えていくこと、麗らかに、しかし、強かに個を主張する様は、繰り返しになるが、グローバル時代の個人の来し方行く末を見るかのようだ。幅広い年代層にアピールできる作品になっている。

 

ネガティブ・サイド

ラルフは元々、the sharpest tool in the box = 頭が切れるタイプではないが、ヴァネロペの旅立ちを阻止したいが為だけに、ここまでやるか?という行為に及ぶ。現実世界でこれをやれば、御用である。ネット世界でこれをやっても、やはり御用である。ラルフは典型的な男のダメな部分をあまりに率直に、飾らずに体現してしまっている。それは共感力の欠如である。「俺は毎日楽しいぜ」と自己主張をしてもしゃーないのである。シャンクとヴァネロペの会話は至って正常なガールズトークで、だからこそラルフには理解ができない。こうした描写はクリシェとさえ呼べるが、これを見せられてしまうと男としてはかなり暗澹たる気分にさせられる。例えばラルフがシャンクに直接、自分がどれほどヴァネロペとの友情に感謝しているのか、それによって生かされているのかを訥々とでもよいから語るような場面があれば、男のダメさ加減の体現描写も少しは薄められたはずなのだが・・・

 

総評

『 レディ・プレイヤー1 』のメッセージは、「外に出ろ、人と交われ」だった。しかし、本作はもっと踏み込んで、「多様な世界に触れろ、変化を恐れるな」と言っているかのようだ。世代によって本作の受け取り方は相当に異なると思われるが、あらゆる見方が正しいのだろう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, アニメ, アメリカ, ガル・ガドット, サラ・シルバーマン, ジョン・C・ライリー, タラジ・P・ヘンソン, ヒューマンドラマ, 監督:フィル・ジョンストン, 監督:リッチ・ムーア, 配給会社:デイズニー

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