ピッチ・パーフェクト 65点
2018年8月14日 レンタルDVD観賞
出演:アナ・ケンドリック ジョン・マイケル・ヒギンズ
監督:ジェイソン・ムーア
バーデン大学への新入生ベッカ(アナ・ケンドリック)は、DJ志望の今時女子。父親とは微妙な関係で、ルームメイトとも打ち解けられそうにない。しかし、ひょんなことからオール女子で構成されたアカペラ部のバーデン・ベラーズに入部するベッカ。ゲロ吐きオーブリーやらファット・エイミー、セクシー美っち(誤変換だが採用)のステイシーら個性的すぎる問題児らと共にアカペラに励むようになっていく。同大の男子アカペラグループのトレブルメーカーズとは悪い意味でのライバル関係を築いており、ベラーズ加入に際してはトレブルメーカーズの男子とは肉体関係を結びませんという宣誓までさせられる。女子、特に日本映画の典型的な女子高生というのは親友=仲間、仲間=親友と捉え、その関係を男に乱されることを極度に嫌う傾向がある。それは『虹色デイズ』でも『君の膵臓をたべたい』でも、変化球であるが『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』でもそうだった。それと同じノリで展開するのが本作である。ベラーズは元々強豪で知られていたのだが、全国大会のパフォーマンス真っ最中に盛大に嘔吐してしまったオーブリーのせいで、一挙に全国レベルで笑い草にされるようになってしまった。そこから新入生勧誘に力を入れるようになって入ってきたのがベッカというわけである。
ストーリーは、まさに女子高のノリで進む。禁断の恋あり、笑いあり、涙あり、友情あり、ケンカあり、仲直りありのローラーコースター映画である。その瞬間瞬間に歌と踊りが効果的な彩りを加えてくれている。個人的に強く印象に残ったのは太っちょ(ファット/Fat)エイミー。『パティ・ケイク$』のパティを、その体型から思わせるが、肥満と歌い手であるという以外の共通点は見当たらない。ピッチ・パーフェクトとは「まったくもって完璧」という意味だが、それは個々人の在り様ではなく、ベラーズというチームの上がり下がりの仕方のことだ。テレビドラマ的な展開と言おうか、よくこれだけの要素をてんこ盛りに出来るなと感心する。女の友情の美しさと醜さを的確に描写し解説するのは自分の手には余ることなので、そのあたりは他サイト、ブログを参照されたい。
本作であらためて勉強になると思ったことは『パティ・ケイク$』でも描写があったストリートでのラップ対決さながらの、riff-offというアカペラバトル。互いに歌を歌い合うのだが、その途中の歌詞と同じ語を引き継いで、別の歌に即座に歌い替えるという非常に広範囲な知識と瞬発力が要求されるバトルだ。日本のストリートでも実際にこんなバトルが行われているだろうか。ブレイクダンスさながらの対決だ。日本では漫画『ヤスミンのDANCE!』ぐらいしか思いつかないが、アカペラとなると寡聞にして何も思いつかない。個人的にわずか10分弱のこのシークエンスをハイライトに挙げておきたい。
Jovianはこういう作品に触れるたびに英語の勉強になると思っているが、向こうの若い世代(アナ・ケンドリックが若いかどうかはさておき)にスポットライトを当てた映画は、往々にしてトンデモナイ英語を喋る。ベッカがオーブリーに言い放つ”You are not the boss of me!!”はその最たる例であろう。本当は、文法的には破綻していても、状況とセットで聞けば(読めば、ではないところがポイント)自ずと意味が理解できるような教材、つまり映画こそ、日本の公教育に取り入れていってほしいと思っている。それは英語だけではなく、社会や理科、道徳についても当てはまることだと思っているし、本ブログでも何度かそういった指摘や提言をしてきた。今後も、文科省のお歴々の耳には絶対に入らないと確信しつつも、意見だけは述べ続けていこうと思う。
この映画のもう一つの私的な見どころは、アカペラの実況解説の二人組。『ピッチ・パーフェクト2』にもしっかり登場して存在感をアピールしてくれる愉快なデュオだが、特に男性の方はアメリカ人的な価値観をめちゃくちゃ露骨に、露悪的と言えるほどにあっけらかんと開陳してくれる。彼の実況をよくよく聞いてから『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』を観賞してみよう。大谷翔平のキャンプ中の評価とシーンズ開幕後の評価のギャップに戸惑った多くの日本人が、なるほどと納得できるだろう。
青春映画の王道で、ミュージカル映画としても佳作である。トリロジーの最後を飾る作品が2018年10月には日本でも公開される。復習観賞するなら今がベストのタイミングである。さあ、近くのレンタルショップかネット配信にゴーである。