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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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OVER DRIVE

Posted on 2018年6月3日2020年1月10日 by cool-jupiter

OVER DRIVE 60点

2018年6月2日 MOVIXあまがさきにて観賞
主演:東出昌大 新田真剣佑 森川葵 北村匠海
監督:羽住英一郎

各場面は面白い。しかし、一つの繋がったストーリーとして見ると、完成度の低さというか編集の荒さというか、統一されていないという印象を強く受ける。また、主役が東出なのか真剣佑なのか、それがはっきりと確信できたのはエンドクレジットだった。色々な意味で評価の別れる作品になると思われる。

気性の荒い、怖いもの知らずの弟にしてドライバーである直純(真剣佑)と、寡黙にして真摯なメカニックの篤洋(東出昌大)。兄弟とは思えないほど、ある意味でビジネスライクな距離でラリーに臨むその関係性の背景には、幼馴染の女性の存在があった。はっきり言ってありがちな話すぎて、いつ、何が何故、どのようにして起こったのか、ということを観客として早く知りたい、という気持ちになれなかったのが大きな問題の一つ。つまり、この映画のテーマは兄弟の和解と再生の話なのか、それとも『シン・ゴジラ』や『グッドモーニングショー』のような、ドライバーやメカニックのリアリティを映し出すお仕事ムービーなのか、そこが最後まではっきりしないのだ。例えば、冒頭すぐに、若い兄弟が拳を合わせるシーンがあるのだが、そこで2人の表情は映し出されない。最終レースの直前、トラブルを乗り越えた兄弟が再び拳を合わせる感動的なシーンがあるのだが、そこで直純が初めてと言っても良い、穏やかで静かで、それでいて力強さを感じさせる笑顔を見せる。無邪気にお互いを信頼し合えた頃に戻れたことを実感させるお涙頂戴ポイントなのだが、肝心の仲睦まじい頃の兄弟の描写が不足しているために、個人的にはイマイチ乗れなかった。

また、お仕事ムービーとして見た時、モータースポーツというのはある意味で究極のチームスポーツなのだから、全体の尺をもう5分伸ばして、チームのメカニック全員に何らかの見せ場を用意するべきだった。例えば、東出が森川葵演じるマネジメント役に開発中のターボチャージャーの仕組みやスペックを専門用語を遠慮会釈なく交えながら説明するのと同じような場面を全員に与えてやって欲しかった。そうした描写を以後ほとんど加えなかったせいで、森川自身がラリー担当の仕事に全力を尽くそうと思えるきっかけが、東出にちょっと優しくされたことだけであるかのように、つまりとても皮相的に映ってしまった。またお仕事ムービーであるならば、森川のキャラ自身のプロフェッショナリズムも盛り込むべきだったが、これは見事に失敗。はっきり言って、会社の仕組みや仕事の難しさを舐めている若造にしか見えない場面があり、さらにカーパーツが飛び交い、部外者がマシンに触れるだけでも失格になってしまうようなピットの場面でもスカートをはいているというアマチュア精神。本来なら東出もしくは吉田鋼太郎のキャラクターに叩き出されても文句は言えないはずなのだが・・・ また、仕事に本当に焦点を当てるのなら、ライバルチームのドライバーの北村匠海のトレーニングシーンやマシンを整備するシーンなども、ほんの一瞬で良いので取り入れるべきだった。インタビューで真剣佑が切れてしまうシーンがあるのだが、そうした対照性の描写が一切ないために、直純というキャラがただの癇癪持ちに堕してしまう瞬間があるのが残念であった。

ことほど然様に軸が定まらない映画である。しかし、レースの描写はCG全開のシーンを除けば、非常に良く練られているし、作られている。安易にスーパードライビングテクニックを使うこともなく、アクシデントをデ・パルマ・タッチで不必要に大袈裟に描くこともしなかった。ドライバーの受ける重圧も描かれるし、ナビゲーターの渋さや縁の下の力持ち振りはしっかりと伝わってきた。そこは評価しなくてはならない。深く考えながら見ると粗が目立ってしまうが、各場面ごとの盛り上がりに上手く乗れれば、かなり楽しめる作品だろう。観る人を選ぶ映画であると言える。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, C Rank, アクション, 新田真剣佑, 日本, 東出昌大, 監督:羽住英一郎, 配給会社:東宝

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