狼が羊に恋をするとき 60点
2024年8月24日 塚口サンサン劇場にて鑑賞
出演:クー・チェンドン ジエン・マンシュー
監督:ホウ・チーラン
『 ソウルの春 』や『 ポライト・ソサエティ 』の鑑賞を考えていたが、妻の「これ観たい」の一言でチケット購入。リクエストがあれば婦唱夫随である。
あらすじ
「予備校に行くね」というメモを残して消えた恋人を追い求めて、タン(クー・チェンドン)予備校が林立する南陽街にやってきた。ひょんなことからコピー店で職と住居を得た彼は、ある時、試験用紙に描かれた羊のイラストを見て・・・
ポジティブ・サイド
クー・チェンドンのダメ男っぷり、世間知らずっぷりがいい。なにより、どこまでも一緒に行きたがる恋人と、ただ一緒にいられれば満足という男の対比があまりにも真実だ。ウィリアム・アイリッシュの昔から、消えた女を追うというのはサスペンスの王道。しかし本作はそれを堂々たるロマコメに仕立て上げた。
高校生や大学生同士の恋愛ではなく、予備校スタッフと試験用紙のコピー業者という距離感が絶妙にもどかしい。その二人のコミュニケーションが、試験用紙に描かれる羊と狼の対話というのも、デジタル全盛の2020年代においては新鮮だし、そしてFacebookやTwitter(現X)などが興隆しはじめた2010年代においても新鮮だったはず。そこで real space かつ not real time 形式で行われるタンとシャオヤンのコミュニケーションは、『 交換ウソ日記 』でも感じたことだが、実に微笑ましい。
数々のサブプロットを交えながら、二人が最終的にたどることになるであろう道は美しい。その花道を彩る一種の紙吹雪も、非常に cinematic な映像になっている。 まさに台湾ラブコメの佳作である。
ネガティブ・サイド
ストーリーのサブプロットが多すぎる。あるいは十分に追求されないまま閉じられていると感じた。特にタンの一日一善と犬探し。そしてシャオヤンの新聞チェック。特にこれは最近でも『 ルックバック 』でも似たようなシーンがあり、漫画家もしくはイラストレーターという人種の習性を表す重要なシーンになったはずではないか。
また『 もしも君に恋したら。 』でも感じたことだが、シャオヤンもイラストレーターならペンだこ、あるいはそれに類した手をしていて然るべきではないだろうか。
総評
メインの二人の若さとチャーミングさが物語によくマッチしている。コピー屋の店主や牧師などの脇役のオッサン連中も良い感じ。王道ではなく変則的なラブロマンスだが、ありきたりの学園青春ものに飽きている向きには新鮮に映るはず。製作から10年越しでの本邦初公開なので、アジア映画ファンならチケットを購入してみてはどうだろうか。
Jovian先生のワンポイント中国語レッスン
不是
ブシと発音する。意味は「いいえ」で、本作でも2回ぐらい聞こえた。外国語を学ぶにはまずは数字からというのはジョー小泉の言だが、その前に「はい」と「いいえ」から始めるのが最も基本的なアプローチであると思う。
次に劇場鑑賞したい映画
『 #スージー・サーチ 』
『 ポライト・ソサエティ 』
『 ソウルの春 』