ゴールド・ボーイ 60点
2024年3月17日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:羽村仁成 岡田将生
監督:金子修介
『 ガメラ 大怪獣空中決戦 』、『 ガメラ2 レギオン襲来 』、『 ガメラ3 邪神<イリス>覚醒 』の三部作で名高い金子監督の作品ということでチケット購入。ゴールド・ボーイというのは金子監督の謂いかと思ったが、そうではなかった。
あらすじ
大企業の会長の入り婿である東昇(岡田将生)は、義理の両親の転落事故に偽装して殺害する。しかし、偶然にも安室朝陽(羽村仁成)ら3人の少年少女がその凶行を動画に捉えていた。3人は東を脅迫して、大金をせしめようとするが・・・
以下、マイナーなネタバレあり
ポジティブ・サイド
悪 vs 悪という構図は『 最後まで行く 』のように、それ自体はそこまでユニークではない。大人と子どもの対立の構図も『 ぼくらの七日間戦争 』以来のお馴染みのテーマ。ただ、悪 vs 悪の片方を未成年にして、その心の闇を徐々に浮彫にしていくという筋立てはなかなかにユニーク。
なにげなくカメラを使っていたら、映ってはいけないものが映ってしまったというのは現代的。不謹慎かもしれないが、本作を鑑賞して天橋立の転落事故(事件と言うべきか?)を思い起こした人も多いことと思う。至る所にカメラがある。あるいは誰もがカメラを持っているという時代であることが冒頭で強く示唆される。この伏線が終盤に効いてくる。
舞台が沖縄というのも興味深い。中盤に「どうやってそのアイテムを入手した?」と思わされるシーンがあるが、ここは沖縄。ごくまれに挿入される軍用機の飛行シーンが観る側の想像を膨らませる。
未成年3人組が13~14歳という設定も絶妙であると感じた。『 カランコエの花 』の中川監督は、大人は嘘をつく、子どもは嘘をつかないと喝破したが、本作の主人公の朝陽はこの意味ではまったく子どもではない。そこが上手いと感じた。『 終末の探偵 』でもそうだったが、子どもは時に大人の予想を良い意味でも悪い意味でも軽々と超えてくる。さて、本作の子どもは前者なのか、後者なのか。それは実際に鑑賞の上、確認をされたし。
ネガティブ・サイド
ストーリー全体のテンポに文句はないが、細部のリアリティがめちゃくちゃである。突っ込みだすときりがないが、特に気になった点だけ挙げれば、まずは浩のカツアゲ。あんなもん、普通は速攻で補導される。高校生が交番に駆け込んだら、おそらくその日のうちに捕まるはず。
次に自傷行為。しっかりした監察医が沖縄にいるのかどうかはさておき、警察官もとあるキャラの腕の傷の方向や深さ、犯人と思われる人物の身長や利き手などから、すぐに疑問を抱くに違いない。韓国映画の警察ではないのだから、ここでは明晰とされるそのキャラの頭脳をもっと駆使してほしかった。
もう一つはとある死体について。犯行から発見まで1か月半ほど経過していて、あんなにキレイなままでいるか?それ以上に顔がおかしい。なんで無傷?
岡田将生は演技が過剰。羽村仁成は不気味さが不足。金子監督は怪獣は巧みに演出できても、サイコパスは演出できないのだろうか。
総評
日本でもだんだんと社会の闇に迫る映画が作られるようになってきたのは好ましい傾向。ただし、本作に関して言えば残念な点も多い。原作は中国のドラマということだが、韓国でもリメイクしてくれないだろうか。彼の国ならもっとバイオレントで、もっとサイコな展開がてんこもりの物語に仕上げてくれそう。某サイトで星4つだが、実際は星3.2といったところだろうか。
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
chew up the scenery
大げさに演じる、過剰に演技するの意。日常会話で使うかどうかは、その人が芝居や映画、ドラマの話をどれだけするのかによる。使い方としては I love how Nicholas Cage chewed up the scenery in this film. のような感じ。決して岡田将生の演技がニコラス・ケイジのようだと言っているわけではない。念のため。
次に劇場鑑賞したい映画
『 デューン 砂の惑星 PART2 』
『 梟ーフクロウー 』
『 12日の殺人 』