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タグ: 監督:富永昌敬

『 ぶぶ漬けどうどす 』 -クソ映画オブ・ザ・イヤー候補-

Posted on 2025年6月16日2025年6月16日 by cool-jupiter

ぶぶ漬けどうどす 20点
2025年6月14日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:深川麻衣
監督:冨永昌敬

 

かつて烏丸御池でスクール責任者を数年務めた身として鑑賞せねばと思いチケット購入。残念ながらクソ駄作だった。

あらすじ

まどか(深川麻衣)はライターとして京都を題材に取り上げようとしていた。夫の実家の老舗や洛中の女将たちを取り上げるために京都に移り住んだまどかは、取材と創作を本格化させていくが・・・

ポジティブ・サイド

京都人の奇妙な歴史感覚は確かに味わえる。100年程度では老舗とは呼べず、200年でやっと老舗。そうした矜持と、京都独特の伝統を維持するための有形無形の努力と圧力はそれなりに映し出されていた。

 

ネガティブ・サイド

まず大前提として知っておきたいことは「京都で茶漬けを勧められたら遠回しに帰れと言われている」というのはフィクションだということ。Jovianは生粋の京都人(それこそ江戸時代から同じ区域に先祖代々住んできた方々)複数名に尋ねたことがある。

 

そもそも本作はテーマは何なのだろうか。京都人の陰湿な一面をさらけ出すこと?それとも、京都人の本音と建前の使い分けをユーモラスに描くこと?それとも、そうした京都を前面に押し出しつつ、東京人のアホさ加減を陰で笑うこと?残念ながら、そのいずれにも失敗している。だいたい制作陣に京都出身者、あるいは京都研究者はいなかったのか?パッと調べた限り見当たらないのだが。

 

京都人に陰湿で排外的な一面があることは事実。そしてそれは洛中から洛外(洛外の人々はしばしば結界の外という言い方もする)に向けての姿勢であることがほとんど。ただ、これは京都に限った話ではない。旧浦和と旧大宮が旧与野を叩いたり、あるいは我が兵庫県で言えば神戸が播州を見下したり、あるいは神戸市中央区が神戸市西区を見下したりしている。関東でも、町田市を神奈川扱いしたり、あるいは北関東(茨城、栃木、群馬)を南東北と呼んだりと、どこの地域、どこの都道府県でも見られる現象である。では洛中と洛外で何が違うのかを本作は掘り下げられたか。そこは一切触れられていなかった。だったら京都を取り上げる意味も意義もない。

 

京都人の本音と建前の使い分けについても監督および脚本家は誤解している。あるいは理解を深めていない。本音と建て前の使い分けは京都人の専売特許ではなく、日本語ネイティブのコミュニケーション技術の一つである。つまり京都人以外も普通に使っている。関西弁では「考えときまっさ」というのはお断りの意味である。またビジネス文脈なら「前向きに検討する」は五分五分くらいに聞こえるが、政治家や役人が同じ表現を使ったら、かなりの見込み薄に聞こえる。タイムリーな例を挙げれば、我が兵庫県知事の言う「重く受け止める」も、本音は「うるさいわ、知らんがな」である。では京都人が使う建前は何がどう異なるのか。それは相手と自分の関係性、もっと言えば上下関係や距離が明確な時に使われるのである。このあたりの描写が、まどかと片岡礼子演じる女将連中の間でかなりちぐはぐだった。

 

そもそも、京都を題材にしようと脱サラして作家活動を始めようとするわりに、まどかは事前の京都調査がまったくといっていいほど出来ていない。これは作家として致命的である。しかも老舗の跡取りになる可能性のある京都出身の夫を持ちながらこの体たらく。つまり、アホなのだ。もうこの時点でこの主人公に共感することが困難になる。また夫や創作パートナー、そして京都に巣食う外来種が皆、東京人で、なおかつ裏の顔の持ち主。本作は京都をディスりたいのか、東京をディスりたいのか。テーマを極力絞るべきである。

 

京都の本質を語る学者先生は『 嗤う蟲 』では夫だった若葉竜也。しかし、彼が語る京都の本質に持ち出されるガジェットが琵琶湖?琵琶湖は滋賀県やで・・・ 『 リバー、流れないでよ 』のように、鴨川を使えばいいではないか。もしくは貴船まで上って貴船川でもいい。なぜ琵琶湖?

 

ストーリーもさして面白くなく、BGMも不快。カメラアングルにも光るものはなかった。そもそも京都人たちが皆、京都弁が下手過ぎる。もうちょっとまじめにやれと言いたい。京都人風に評するなら「伝統を尊重してもろて、はばかりさん」とでもなるだろうか。

 

総評

一言、駄作である。職場の同僚、就中、京都人たちには決して観るなかれと忠告したい。東京人が思いっきりアホに描かれているが、作劇上の演出を飛び越えてナチュラルなアホに見える。『 翔んで埼玉 』の含意するところに気付かないプロの東京の批評家が何名かいたが、そうしたお歴々は本作をどう評するのだろうか。そこには少し興味がある。いずれにせよ、観る必要はない。怖いもの見たさやゲテモノ好きは否定しないが。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

a venerable shop

老舗の私訳。老舗は古い以外にも格式がある、伝統がある、趣きがあるなどの意味も含んでいるが、それに最も近いのが venerable = 由緒正しい、だろうか。老舗企業なら venerable firm で、老舗料亭なら venerable Japanese restaurant となる。英検準1級以上を目指すなら押さえておきたい語彙。

 

次に劇場鑑賞したい映画

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『 リライト 』
『 ラブ・イン・ザ・ビッグシティ 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, E Rank, ブラック・コメディ, 日本, 深川麻衣, 監督:富永昌敬, 配給会社:東京テアトルLeave a Comment on 『 ぶぶ漬けどうどす 』 -クソ映画オブ・ザ・イヤー候補-

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