アメリカン・ピーチパイ 65点
2019年8月26日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:アマンダ・バインズ チャニング・テイタム
監督:アンディ・フィックマン
近所のTSUTAYAで、ふと目についた。近年はLGBTを主題に持つ作品が量産されているため、本作のように女子が男子に化けるストーリーというのが逆に新鮮に映る。原題は“She’s the Man”。つまり、「彼女は男だ」という意味と「彼女はサイコーだぜ!」のダブルミーニングである。
あらすじ
女子サッカー部が廃部になってしまったため、ヴァイオラ(アマンダ・バインズ)はサッカーを続けるために、ロンドンに行った兄に成りすまし、兄の高校の男子サッカー部に入部する。そこでデューク(チャニング・テイタム)に恋をしてしまう。だが、デュークは学校一の美女のオリヴィアに恋をしており、そのオリヴィアは男子らしからぬ女子力の持ち主のヴァイオラのことを気に入ってしまい・・・
ポジティブ・サイド
アマンダ・バインズがひたすらに可愛らしい。川口春奈が『 桜蘭高校ホスト部 』で男装したのも悪くはなかったが、中性的、またはユニセックスな魅力を放っているとは言い難かった。アマンダはそれなりに豊かなバストをサラシできつく巻くのはもちろんのこと、もみあげ、眉毛に至るまでメイクアップしている。このあたりは予算や監督の意識の違いであって、日米のメイクアップ・アーティストの技術差であるとは思わないが。
チャニング・テイタムが若い。『 マジック・マイク 』の圧倒的な肉体は完成されていないが、『 ホワイトハウス・ダウン 』の頃の気弱そうに見える瞬間もありながら、闘志を内に秘めたタイプを好演した。
『 ミーン・ガールズ 』は女子高生の生態にリアルかつフィクショナルに迫った。一方で本作は男子高校生の生態にリアルに迫っている。特に、女子が振られて、あるいは分かれて落ち込んでいるところを狙い目だと話す悪童連に姿に、眉をひそめる向きはあっても、それが男性心理の真理の一面であることは否定できまい。
本作はDVDメニュー画面が面白い。英語学習中の人で、関係代名詞がちょっと・・・という方は、本作を借りてみよう。または配信サービスで探してみよう。
ネガティブ・サイド
いくつか撮影や編集に欠点がある。弱点ではなく欠点である。その最も目立ったものは、ヴァイオラの転校初日のサッカー部の練習シーンである。わずか1秒足らずであるが、カメラマンとカメラ機材の影が映りこんでいるシーンがあるのである。これは、しかし、大きな減点要素だ。映画を映画たらしめるのは、それを撮影している人間の存在が画面内に絶対に映り込まないことである。
もう一つ。映画を映画たらしめるのは、一連のシークエンスを本当にその時間の経過通りに起きている出来事なのだと観る側に錯覚させるテクニックである。つまりは編集である。その編集が本作はいくつかのパートで非常に雑になっている。特に最終盤の試合後、昼の光と傾きかけた太陽の光が混在していた。役者の演技に納得いかない監督がリテイクを繰り返したのだろうか。繋がらない画を無理やり繋げても良いことはない。
だが本作の最大のマイナスポイントは邦題だ。なんでこんな狂ったタイトルをつけてしまうのか。夏恒例の水着映画だから、とでも言うのか。そんなシーンは冒頭の数分だけだ。
総評
友情、恋愛、家族の対立と絆、内面の葛藤などのありふれた要素が散りばめられているが、そのバランスが良い。何かが突出してフォーカスされていたり、あるいはあるテーマが他のテーマの小道具になっていたりはしていない。女子力の高い男はモテる、という普遍の真理は本作でも確認できる。LGBTの物語はちょっと食傷気味という向きにこそお勧めしたい。
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
Pounce
普通は肉食動物が獲物に襲いかかる様子を描写する為に使われる動詞だが、しばしば「異性を落としにかかる」、「異性を(性的な意味で)食べに行く」の意味で使われる。もしも映画の音声と字幕の意味が普通の辞書で一致しない時は、urban dictionaryを試しみて欲しい。