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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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タグ: 源八

『 ごはん 』 -米作りと親子の再生-

Posted on 2024年12月4日 by cool-jupiter

ごはん 75点
2024年12月1日 塚口サンサン劇場にて鑑賞
出演:沙倉ゆうの 源八 福本清三
監督:安田淳一

 

『 侍タイムスリッパ- 』の安田淳一監督が同作の沙倉ゆうのを主演に製作した2017年の作品。近所でトークイベント付きで上映されるということでチケット購入。

あらすじ

東京で派遣社員として働くヒカリ(沙倉ゆうの)は京都の叔母から父の訃報を受ける。葬儀のために故郷へ戻ったヒカリは父が30軒分の水田を引き受けていたことを知る。父の弟子、ゲンちゃん(源八)は足を骨折しており、他の面倒を見られる者は誰もおらず・・・

ポジティブ・サイド

米作りの苦労がリアルに伝わってくる作品。同時にその苦労がゲンちゃんというシリアスなコミックリリーフによって笑いに還元され、あるいは西山老人(演じるのは福本清三!)によって労わられることでドラマとしても深みを増している。特にゲンちゃんの気取った発言はどれもこれも笑える。対照的に西山老人の語る言葉はどれも深い。特に彼が開陳する歴史観は、しばしば列伝体で歴史が語られる本邦においては非常に貴重なものである。また「○○の扱いなら任せとけ」という台詞は一種のメタ発言にもなっていたのも面白かった。

 

一方で米作りを通して見えてくる景色も確かにある。特に日本の原風景は山、森、川、海だが、そこに田園を加えてもいいかもしれない。そう思わせるほど本作は田んぼの見せる美しさを活写していた。苗代に始まり、田んぼの稲、そして稲穂と姿を変えていく中で、力強い緑から黄金の輝きまで、季節とともに変わる稲の美しさをとことん追求していた。また音にも注目(注耳?)されたい。緑の稲が風にそよぐ音、出穂した稲が風にそよぐ音も非常に心地よい。その音を聞くだけで稲の色までが目にありありと浮かぶようである。まさにサウンドスケープである。

 

コメを作るには八十八の手間をかける必要があることからコメは米と書くと小学校で習ったが、本作はそうした手間についても一つひとつ丁寧に、しかし決して説明的にならずに解説してくれる。水の出し入れのタイミングやその量、狙いなどはまさに目からうろこだった。

 

故人の仕事を通じて亡き父の想いを知るというプロットはありふれている。しかし、その仕事が農作業だというのはユニーク。そしてヒカリ自身が稲穂を見つめる目線が、そのまま父が自分に注いでいた眼差しだったと知るという筋立ても、ベタベタではあるが美しい。

以下、上映後のトークイベントや今後の展開について

 

米作りは監督自身の経験が反映されているとのこと。そして、80代の農家の後を60代がなんとか継いでいるというのが日本の現状のようで、国が何とかしないと日本の米作りは滅びる恐れがあるとのこと。NHKの『 歴史探偵 』でも米作りの回があったが、農業、就中、米作りについて真剣に考える必要があるようだ。

 

『 侍タイムスリッパ- 』や本作は、まずは年明けから配信、その後に円盤化される方向で話が進んでいるとのこと。Blu rayになったら購入しようかな。

 

実は福本清三の奥様は、旦那の出演作が観たことがないらしく、本作の剛毅朴訥な農民の姿を観て「あれが本物の福本です」と語ったとのこと。『 ラスト サムライ 』のあれが実像に近いわけではなかったのね・・・

 

劇中でヒカリが絶妙なタイミングで吹き出すシーンがあるが、沙倉さん本人に「演技ですか、アドリブですか?」と尋ねたところ、演技だったとのこと。

 

安田監督に今後の展望を尋ねてみたところ「僕はいつか『 男はつらいよ 』(実際は『  フーテンの寅さん 』と言っていた)をリブートしたい」と語ってくれた。令和の時代にあんなキャラを復活させても大丈夫か?と思ったが、寅さんは昭和の時代でも(愛すべき)迷惑キャラだったわけで、キャラの芯さえしっかりしていてスポンサーもつけば、案外うまく行くアイデアかもしれない。

ネガティブ・サイド

稲作以外にも農業といえば重労働のイメージがある。サラリーマンのように一日8時間労働で年間休日124日などと決まっているわけではないからだ。というよりも農繁期と農閑期の差が激しいと考えるべきか。いずれにせよ世の大半のサラリーマンの労働とは大きく異なる。そのあたりのギャップに戸惑い、疲労するヒカリを描くという選択はなかったか。

 

もう一つ気になったのがBGMの多用。風にそよぐ稲の姿とその音だけで十分に映画なのに、なぜかそこにBGMがかぶせられていた。監督は色々と手直しをして、足すべきシーンは足して削るべきは削ったそうだが、絵だけではなく音を削ることも考慮してほしかった。Sometimes, less is more.

総評

Jovianが大昔に引っ越した先の岡山県備前市では三十数年前、小学校低学年が学校の行事として田植えをしていた(Jovianはしなかった)。今思えば、貴重な機会を逃したのかもしれない。米作りを通じて、日本の歴史、日本の原風景を体験できるし、本作を通じて親子の精神的な和解の物語を追体験できる。あちこちで散発的に上映しているようなので、機会があれば鑑賞してみてはどうだろうか。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

straw hat

麦わら帽子の意。strawとは藁のこと。某漫画のキャラクターだったり、あるいは某歌手のマリーゴールドを思い出す人もいるだろう。Jovianも備前の祖母を思い浮かべると、麦わら帽子がセットで思い出される。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 他人は地獄だ 』
『 アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師 』
『 オン・ザ・ロード 〜不屈の男、金大中〜 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 日本, 沙倉ゆうの, 源八, 監督:安田淳一, 福本清三, 配給会社:未来映画社Leave a Comment on 『 ごはん 』 -米作りと親子の再生-

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