フリー・ガイ 75点
2021年8月16日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ライアン・レイノルズ ジョディ・カマー リル・レル・ハウリー タイカ・ワイティティ ジョー・キーリー
監督:ショーン・レヴィ
ライアン・レイノルズ作品。ほとんどが箸にも棒にも掛からない作品なのだが、たまに傑作が混じっている。本作は個人的には傑作である。ただし、波長が合わない人にとっては間違いなく地雷である。
あらすじ
「フリー・シティ」というオンライン参加型のゲーム内のNPC(Non-Playable Character)であるガイ(ライアン・レイノルズ)は、謎の女性モロトフ(ジョディ・カマー)に一目惚れ。ある時、モロトフのかけている眼鏡をかけることで、ガイは自分の世界がゲームであると認識してしまい・・・
ポジティブ・サイド
ゲームの世界を舞台にしている点で『 竜とそばかすの姫 』そっくりだが、視点をプレイヤーではなくモブキャラに持ってきたのは割と斬新なアイデアなのではないか。ドラクエやFFで村人に話しかけたら、いつもと違う答えが返ってきたらプレイヤーは腰を抜かすだろう。本作はそうした「NPCの自律」を実はテーマにしている。
ライアン・レイノルズの普通の男っぷりが魅せる。人生に疑問を持たずに生きてきた男が、運命の女性 = Ms. Right を見つけて奮闘する・・・というのはありきたりもいいところのプロット。だが、本作がユニークなのはNPCが色々な経験を積んでレベルアップしていくこと、さらには他のNPCをも巻き込んで、ゲーム全体にまで影響を及ぼしていくところだろう。『 マトリックス 』シリーズとは真逆の発想で、世の中には凄いことを考える人がいるのだなと感心させられる。
ゲーム世界と現実世界のつながりにしっかりと意味がある点も評価できる。『 レディ・プレイヤー1 』のように「ゲームが居場所である」と言いながらも「やっぱり現実サイコー!」になってしまう作品よりも、よっぽど物語の骨格がしっかりしている。モロトフとしてゲームをプレーしているミリーには、ゲームをしなければならない理由があり、そのことがガイというNPCの設定に実は深く結びついているという脚本の妙には痺れた。
単純にアクションとして鑑賞するのも楽しい。ガイがゲームのアイテムを使用してプレイヤーから逃げるシーンは、緊迫感とユーモアが両立する稀有な演出。NPCが大冒険で経験値を積み上げてレベルアップしていくのにも笑ってしまうと同時に、その発想の非凡さに唸らされた。ガイ以外のゲームキャラも楽しい。特にバディを演じたリル・レル・ハウリーは『 ゲット・アウト 』の超面白キャラのノリを保っていて、ガイとの掛け合いは愉快の一言。またゲーム会社のボスであるアントワンも味のある悪役。演じるタイカ・ワイティティは『 ジョジョ・ラビット 』のイマジナリーフレンドのヒトラー役でも怪演したが、今作でもその chew up the scenery な演技は全開であった。
クライマックスはハチャメチャの一語に尽きる。『 ゴジラvs.コング 』のMonsterVerseのように、異なる映画世界を一つにまとめ上げていくのは最早一つのトレンドだが、ここでそう来たか、と。『 レディ・プレイヤー1 』のガンダムとメカゴジラの激突に匹敵する壮絶なパロディが炸裂する。TPPの黒幕である某社の面目躍如である。さあ、大いに笑おう。そして、人生を誰かにコントロールされているかもしれない自分自身を少し顧みてみようではないか。
ネガティブ・サイド
YouTuberたちや世界の色々なゲーマーたちがガイに注目していっているのに対して。フリー・シティの開発会社の面々が本気で対策に乗り出さない理由の描写が弱かったと思う。アントワンから「奴を消せ、しかし奴の中身のデータは見るな」的な指示によって社内に波紋が広がるようなサブプロットがあっても良かったように思う。
裏の主人公であるキーズの見せ場が少なかったか。アントワンと対峙するも、口論であっさり敗退・・・という強烈なシーンがあれば「男は黙ってコードを書く」的なキャラの印象がもっと強まったはずだ。
総評
ライアン・レイノルズがついに『 デッドプール 』以外の代表作を手に入れたか。同僚カナダ人に”Most of his movies are garbage.”と評されてしまうライアンだが、『 名探偵ピカチュウ 』と本作によって、コメディとシリアスの間を自在に行き来できる役者であることがあらためて証明された。デッドプールの第3作も期待できるかもしれない。ある程度、映画やゲームのバックグラウンドがある人であればかなり楽しめるかもしれないし、逆に「ふざけるな!」と憤慨してしまうかもしれない。いずれにせよ、現状に閉塞感を感じる人にこそ本作は鑑賞してほしい。
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
Don’t have a good day. Have a great day!
日本語にするのが難しいが、相手との別れ際の挨拶として”Have a ポジティブな形容詞 + 名詞”というのが定番である。時間帯によっては day = 昼だったり、evening や night も使うし、週末であれば weekend となる。旅行という文脈では Have a nice trip. や Have a nice stay. が定番である。great は good よりも「良い」の意味合いが強い。映画『 エアレース 』でも、”If he’s good, I’m great.” = 「あいつが good なら、俺は great だ」というセリフもあった。great > good なのである。