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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 配給会社:ディズニー

『 アントマン 』 -闘う目的まで小さいが、そこが大きな魅力-

Posted on 2018年9月13日2020年2月14日 by cool-jupiter

アントマン 65点
2018年9月12日 WOWOW録画観賞
出演:ポール・ラッド エヴァンジェリン・リリー マイケル・ダグラス コリー・ストール アンソニー・マッキー 
監督:ペイトン・リード

f:id:Jovian-Cinephile1002:20180913135704j:plain

ちょうど3年前の今ごろ、大阪ステーションシネマで観たんだったか。続編観賞前に復習観賞。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』では、キャプテン・アメリカ相手に、一般人があこがれの芸能人やスポーツ選手に会えた時のようなリアクションをとって、あらためて小市民であることを印象付けたものの、実際のバトルではとんでもないインパクトを残してくれたことで、ただの蟻んこサイズに縮むだけの男ではないことをライトな映画ファンも認識したことと思われるが、やはりヒーローはスタンドアローンの映画でこそ輝くものだ。そこで(時系列的には逆だが)本作である。

窃盗罪のために入っていた刑務所から出所したスコット・ラング(ポール・ラッド)は、再就職にも失敗し、娘の養育費の工面にも苦労する。貧すれば鈍すとはよく言ったもので、電子工学の修士号まで有しながら、コソ泥にまで堕ちたスコットは、再び盗み稼業に舞い戻るが、そこで盗み出してきたのは奇妙なスーツだった・・・

第一幕は非常にテンポよく進んで行く。なんだこれはという刑務所シーンからの出所、再出発、挫折、悪い意味でのリスタートまでが一気に、しかし過不足の無い映像での説明をもって進んで行く。時々ナレーションや、キャラクターに冗長に喋らせることで物語を動かす作品もあるが、それが有効なのはだいたいの場合、終盤である。そういう意味では、映画作りのお手本のような作品でもある。正義のヒーローらしからぬ小悪党が、実は痛快な義賊であったことが分かるまでの一連の流れは、シルクの滑らかさを持って我々を運んでいく。

第二幕はスコットがピム博士(マイケル・ダグラス)の捨て駒として、アントマンになり、使命を果たすという自覚に目覚めていくのがハイライトだ。博士の娘のホープ(エヴァンジェリン・リリー)は、かつて父がアントマンとして、母がワスプとして、極秘重大ミッションに従事し、その作戦の成功の裏に、母の犠牲があったことを知らなかった。爾来、父とは距離を置いてきたが、真相を知ることで父と和解する。スコットのことをまったく評価していなかったホープが、父が娘に注ぐ愛を知ったことで、スコットを見る目も変わっていく。父親とは何と不器用な生き物なのだろうか。

第三幕では、アベンジャーズの空飛ぶあの人との絡みもある。ここから、あのヒーロー同士の内戦に繋がっていったわけである。それにしても、アントマンの能力の何と地味なことか。小さくなることそれ自体は、科学的に何やらトンデモナイことであることは直感的に理解はできるが、原子間の距離を縮めるだとかの話になると、ちんぷんかんぷんだ。理解できれば立派な物理学者だろうし、実現したらノーベル賞どころではないだろう。しかし、アントマンがアントマンであるのは、何と言っても蟻とのコミュニケーションにある。漫画の『テラフォーマーズ』を挙げるまでもなく、蟻はパウンド・フォー・パウンドでの最強生物は何か、という議論には欠かせない存在であるし、地上のバイオマスに占める割合も人間並みに大きい。蟻にできることは何か、というよりも、集団の蟻を統率してできないことなどあるのか、という具合に問いを立て直す必要があるほど、集団としての蟻の優秀さは図抜けている。蟻さん達とのコンビネーション、チームワークが本作の大きな魅力で、アベンジャーズの他の面々と異なるところである。

アクションシーンは派手さには欠けるが、斬新さは多い。適度にコミカルなところもいい。主人公たちが小さくなる映画には古典的名作『ミクロの決死圏』があるが、我々の文明の辿ってきた道、そしてこれから進む道は、実は宇宙よりも、ミクロの世界なのではないか。量子コンピュータやナノマシンなどの話題は定期的に世間を賑わすし、それらを題材にしたエンターテインメント作品も陸続と生まれつつある。面白さや映画としての完成度はさておき、『ダウンサイズ』などは好個の一例であろう。

今まさに再撮影(?)が進行中のアベンジャーズ映画第4弾において、アントマンの果たす役割は、その体とは反比例、いや比例とも言えるだろうか、して大きい者になることが期待される。さあ、復習観賞ができたら、チケットを予約して映画館に向かうとしよう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, SFアクション, アメリカ, エヴァンゲリン・リリー, ポール・ラッド, マイケル・ダグラス, 監督:ペイトン・リード, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 アントマン 』 -闘う目的まで小さいが、そこが大きな魅力-

『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』 ―キャラクターに注目するか、世界観に注目するか―

Posted on 2018年7月1日2020年2月13日 by cool-jupiter

ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー 65点

2018年6月30日 MOVIXあまがさきにて観賞
出演:オールデン・エアエンライク ウッディ・ハレルソン エミリア・クラーク ドナルド・グローバー フィービー・ウォーラー=ブリッジ ヨーナス・スオタモ ポール・ベタニー
監督:ロン・ハワード

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まず『スター・ウォーズ』という世界についてのおさらいをしておこう。スター・ウォーズは未来の世界のSF物語ではない。A long time ago in a galaxy far far away…で始まる通り、おとぎ話なのだ。John Williamsの、あのテーマ曲のイントロで一気にあの世界に引き込まれる感覚、というのはスター・ウォーズファンならずとも共有できる感覚だろう。おとぎ話の世界には独特の文法が存在する。それは往々にしておじいさん、おばあさんの形であったり、王や王国の形であったり、動物との意思疎通の形であったり、魔法や怪物の形で存在する。このように考えればスター・ウォーズという一大叙事詩が、言葉そのままの意味で、詩という独特の形式で英雄譚を語る手法を採用していることが分かる。

人はスター・ウォーズ世界に見出すものは、個人により、また時代により大きく異なる。そのことは『ザ・ピープルVSジョージ・ルーカス』に詳しい。初期三部作に戦う女性像を見出す人もいれば、古き良き西部劇を見出す人もいるだろう(カンティーナなどは典型的なBar Fightであるが、それがハン・ソロというキャラを何よりも雄弁に物語るシーンでもあった)。壮大なスペース・オペラだと感じる人もいれば、『隠し砦と三悪人』と『オズの魔法使』を足して2で割ったように感じる人もいる。スター・ウォーズの最大の魅力は、何度観ても発見ができる、子どもと大人で楽しみ方が異なる、その世界観に浸るためのアイテムが豊富にあるということである。つまり、スター・ウォーズは旅行なのだ。日常世界からの一時的な脱出なのだ。事実、Jovianは『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』を劇場で5回観たし、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は劇場で7回観た。

それを踏まえて言えば、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』には確かにreplay valueがある。ただリピート・ビューイングはあとIMAXや3Dで1~2回かなという印象である。それは娯楽作品としては優れているが、スター・ウォーズ作品としての力は弱い、という評価である。しかし、そんなことは観る前から分かっていたことだ。映画史上で最も愛されるキャラクターであるハン・ソロの若き日を描いて面白くないわけがない。一方で、映画史上で演技力と存在感の乖離が最も大きいハリソン・フォードを乗り越えるのは、誰にとっても困難極まる仕事であろう。もともとジョージ・ルーカスは役者に演じることを求めず、彼ら彼女らの素の姿を自分の世界に配置することを好んでいた。そのことがハリソン・フォードにとっては幸運だったが、後継のオールデン・エアエンライクにとっては不運だった。顔や声がそれほど似ているわけではないからだ。しかし、似せようと努力はしていたし、映画は『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』や『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』と同じく、3~5分ごとに見覚えのあるガジェットやクリーチャーのみならず、どこかで見た構図、どこかで見たカメラアングル、どこかで見たアクションが挿入されるなど、ファンサービスに徹したのか、それとも製作者側がオリジナル・トリロジーの呪縛に囚われているのか判断しかねる部分も多い。最後に登場するダース・モールは新たなスピンオフを明確にオビ=ワン・ケノービにすることを決断したものか。アニメシリーズで復活していたとはいえ、これは嬉しい不意打ちであった。

こういう映画の粗筋などを述べるのは無粋だし、上述したようにスター・ウォーズに何を見出すのかは個々人の自由である。Jovianは、とあるシーンで思わず「だからC-3POはファルコン号と話せたのか」とはたと膝を打った瞬間があった。見た瞬間に気づくべきであったのに、そこに思い至らなかったのは誠に汗顔の至りである。また自分にとってのスター・ウォーズとは、John Williamsの音楽とドロイド、ミレニアム・ファルコン号の三者から成るものであると認識できたのは収穫であった。フォースやライトセイバーが自分にとっては副次的なものであったという気付きはちょっとした衝撃でもあった。日常世界から非日常世界へ飛び出していくことを夢見る若きハン・ソロに自分を重ねても良いし、頭をできるだけ空っぽにして、上質なSFアクション・ムービーとして観るのも良い。満足できれば最高だし、不満足であれば、それはあなたが純粋なスター・ウォーズ愛を持っている証明であると考えよう。

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