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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 配給会社:アップリンク

『 兎たちの暴走 』 -やや竜頭蛇尾-

Posted on 2023年9月16日 by cool-jupiter

兎たちの暴走 60点
2023年9月9日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:リー・ゲンシー ワン・チエン
監督:シェン・ユー

簡易レビュー。

 

あらすじ

シュイ・チン(リー・ゲンシー)は父と継母、弟と暮らしているが、家に居場所がない。また学校でも本当の友達はいなかった。しかし、ある時、自分を生んですぐに行方をくらませた母チュー・ティン(ワン・チエン)が16年ぶりに帰ってきた。過去のわだかまりをなくしたシュイ・チンは、母に居場所を求めていく。しかし、母にはとある秘密があって・・・

ポジティブ・サイド

高校の校舎および雰囲気が中国映画『 少年の君 』や韓国映画『 不思議の国の数学者 』のそれとよく似ている。学校=一種の監獄という構図が見て取れる。家にも学校にも、本当の居場所がないというシュイ・チンの境遇が映像だけで伝わってきた。

 

元々存在しなかった母親と親子というよりも友情に近い関係性を求めてしまうのもむべなるかな。その過程がアメリカ映画『 レディ・バード 』と対照的で面白かった。

 

色々と荒い面はあるが、主要キャラクターの感情や思考が言葉ではなく振る舞いで表されている。たった一組の母と娘の関係性を描きながら、中国社会の暗い位相が浮き彫りにした手腕は見事。

ネガティブ・サイド

ぴょんぴょんと元気に跳ね回る兎たちが、最後の最後に大暴走・・・なのだが、結末がなんとも尻すぼみ。終わりよければ全て良しと言うが、逆に言えば終わり悪ければ全て悪しになる。邦画『 MOTHER マザー 』のエンディングにも個人的には不満だったが、母たるチュー・ティンがもっと自己犠牲の精神を見せるか、あるいはさらなる暴走をして・・・と、もう一つ先の段階まで踏み込んでエンディングに繋げられなかったか。

総評

中国版の逆『 レディ・バード 』になりきれなかった作品。それでも母と娘の歪な関係の描写に、地域社会や現代中国の閉鎖性が垣間見えてくる。それにしても主役のリー・ゲンシーは良い役者だ。『 少年の君 』のチョウ・ドンユィにも驚かされたが、中国はルックスではなく演技力や監督の演出をそのまま体現できる表現力で役者が選ばれているようだ。粗削りだが、キラリと光るところもある作品。シェン・ユー監督の名前は憶えておきたい。

 

Jovian先生のワンポイント中国語レッスン

元

ユアンと発音する。言わずと知れた中国の通貨単位。劇中で何度か200万元が話題になるが、何と言っているのか聞き取れなかった。2は多分、アールのはず。元はユアンとはっきり聞こえた。リスニングは難しい。が、語学学習は兎にも角にもリスニングから。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 アステロイド・シティ 』
『 さらば、わが愛 覇王別姫 』
『 名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, ヒューマンドラマ, リー・ゲンシー, ワン・チエン, 中国, 監督:シェン・ユー, 配給会社:アップリンクLeave a Comment on 『 兎たちの暴走 』 -やや竜頭蛇尾-

『 サウナのあるところ 』 -裸の男たちを追う異色のドキュメンタリー-

Posted on 2019年10月21日 by cool-jupiter

サウナのあるところ 60点
2019年10月17日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:カリ・テンフネン
監督:ヨーナス・バリヘル 監督:ミカ・ホタカイネン

f:id:Jovian-Cinephile1002:20191021000144j:plain
 

原題はフィンランド語でMiesten vuoro、英語に無理やり翻訳すると、manly turnまたはmen’s turnとなるようだ。「男たちの番」「男性のターン」ということか。日本では少し前からサウナブームらしい。Jovianは平成最後の日を近所の「昭和温泉」という銭湯で過ごす程度には風呂好き、銭湯好きである。もちろん、サウナも嫌いではない。しかし、本作はさっぱりと汗を流したような爽快感を得られる作品ではなかった。

 

あらすじ

老夫婦がサウナに入っている。夫は甲斐甲斐しく、妻の背中を手でこすり、洗い流してやる。「51年、この背中を流してきたんだな」と感慨深げに語る。別の中年男たちは、ふと生い立ちを語り合う。老人たちは妻との死別や新しい出会いについて語る。フィンランドの男たちが、サウナという空間で訥々と語り始めて・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20191021000203j:plain

ポジティブ・サイド

『 雪の華 』がフィンランドの美しい街並み、容赦のない寒さ、そして奇跡のような夜空の美しさを捉えたのとは対照的に、本作が映し出すのは極めてのどかな田園風景である。そして、電話ボックス的な個室サウナに、キャンピングカーを改造したサウナなど、我々の常識を遥かに超えるサウナの数々が描かれる。これは面白い。映画というのはたいていの場合、異国の地のエキセントリックさを際立たせるものであるが、本作を通じて我々が目にするのは、人間、特に男性に普遍的な不器用さなのである。つまり、我々の目からすれば奇異な環境、状況に身を置きながら、彼らの口から語られる言葉の一つひとつが、リアリティを以って我々に迫ってくるのである。それは多くの場合、自身の不幸な生い立ちであったり、仕事中に取り返しのつかないミスを犯してしまったことだったり、家族に起こった不幸であったりする。中には、とても心温まるエピソードが語られることもある。だが、それはプールであったり、更衣室であったりと、サウナ以外の場所で語られることが多い。

 

つまりは、そういうことなのだ。サウナという閉鎖空間は、フィンランドの男たちの憩いの場いであり、社交場であると同時に、カウンセリング・センターでもあるのだ。彼らはみな裸で、ヨボヨボであったり、ムキムキであったり、タプタプであったりするが、内面は、つまり心はとてもナイーブな男たちだ。そんな彼らが外面の虚飾を脱ぎ去り、文字通りに赤裸々に胸の内を語る。聞くも涙、語るも涙な事柄すらも語られてしまう。サウナは基本的にとても狭い。それゆえに必然的に男たちは身を寄せ合う。そこに我々が見出すのは、決して弱さや情けなさではない。人種や国境、世代というものを超えた、男という哀れで悲しい生き物たちの、それでも雄々しく生きていく姿である。ある人物が、「さあ、蒸気(ロウリュ)を足そう」というのは、武士の情けと通じるものがあった。これについては、そのアナロジーをワンポイント英会話レッスンで補足したい。

 

ネガティブ・サイド

実は地味にR15指定である。登場人物のほとんどは男性であるが、かなりの人が男性自身を丸出しである。カメラもそれを敢えてフレームに収めており、当然のことながらモザイクは無い。性的な意図は込められてはいないが、性別を問わず、人によってはネガティブに捉えるかもしれない。

 

別にエロ親父的な目線で言うわけではないが、サウナにおける女性同士の語らいが無いのは何故だろうか。ほんのわずかでよいので、ガールズ・トークでも魔女トークでもよいので収録されていれば、男性以外にもアピールする力のある作品になれたのではないだろうか。

 

ほとんどが郊外あるいはのどかな田園風景が広がる地方での撮影である。もう少し都市部でのサウナと、その空間内の人々の営みというものも見てみたかった。『 かもめ食堂 』でもレンタルしてくるか。

 

総評

かなりヘビーな内容である。男性の裸よりも、話の内容の方が重たくてしんどい、という人の方がマジョリティだろう。それでも、人は皆、裸で生まれてくる。赤ん坊はタブラ・ラサだ。共通点は人間であることだ。そして、人間であるからには、心がある。心があるということは傷つくことがあるということだ。そのような傷ついた心、そして癒しを求める心の姿が、ある意味では裸以上に露わになる空間としてのサウナにフィーチャーした本作は、比較文化人類学的な観点からは非常に貴重な資料である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

A man is not supposed to cry.

 

終盤近くで、とある男性が自身の悲嘆について(フィンランド語で)このように語る。彼はまた「男にできるのは、黙って酒を飲むことだけ」とも言う。まるで河島英五である。『 酒と泪と男と女 』の世界観である。be supposed to Vで、「Vすることになっている」のような意味である。Jovianが大ファンであるロッド・スチュワートのフェイセズ時代にテンプテーションズの“I Wish It Would Rain”をカバーしていた。その歌詞でもEveryone knows that a man ain’t supposed to cry. とある。古今東西、男とはそのような生き物であるようだ。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, カリ・テンフネン, ドキュメンタリー, フィンランド, 監督:ミカ・ホタカイネン, 監督:ヨーナス・バリヘル, 配給会社:kinologue, 配給会社:アップリンクLeave a Comment on 『 サウナのあるところ 』 -裸の男たちを追う異色のドキュメンタリー-

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