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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 藤谷文子

『 ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒 』 -怪獣は敵か味方か-

Posted on 2021年4月24日 by cool-jupiter

ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒 80点
2021年4月17日 梅田ブルク7にて鑑賞
出演:中山忍 藤谷文子 前田愛 螢雪次朗
監督:金子修介

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平成ガメラ三部作のフィナーレ。梅田ブルク7は good job である。単なる特撮怪獣映画としてだけではなく、怪獣が存在することの意義、怪獣が人類にとってどのような存在なのかにまで踏み込んだ作品として、邦画史に残るべき作品だろう。

 

あらすじ

比良坂綾奈(前田愛)はガメラとギャオスの戦いのせいで両親を亡くして以来、ガメラを憎んでいた。引っ越した先の奈良の洞窟で見つけた謎の生物に「イリス」という名前をつけた彼女は、イリスにガメラを倒してほしいと願うようになる。しかし、イリスは実はギャオスの変異体で、綾奈と融合しようとして・・・

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ポジティブ・サイド

ゴジラであれウルトラマンであれ、街中で大暴れはするものの、人的被害について直接的に描かれることは、非常に稀だった。だからこそ初代『 ゴジラ 』や『 ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃 』は傑作だと言える。特に『 ゴジラ 』で母親が娘に「もうすぐお父さんに会えるのよ」と語りかけ、建物の崩落とともに従容として死んでいく様はトラウマものである。怪獣が大暴れすることによって遺児になってしまった綾奈の姿は、阪神大震災や東日本大震災を下敷きに見ると、また新たな感慨をもたらす。

 

公開当時も今もすごいと感じたのは、渋谷のガメラ。昭和ガメラも平成ガメラも、どこか穏やかさを湛えた顔つきだったガメラが、ギャオスへの憎悪や闘争心を隠そうともしない形相になっていたのは、劇場公開時に大学生だったJovianの心胆を寒からしめた。このガメラの顔つきは個人的にはガメラ史上ナンバーワンで、GMKの白目ゴジラに次ぐ怖さであると確信している。

 

人間パートも悪くない。飼い猫のイリスの名前を謎の卵からかえった生物につけてしまうあたり、陰影のある綾奈というキャラの小女性や孤独、さみしさを間接的に描けている。田舎の閉鎖性も妙にリアルだ。地味に奈良vs京都、つまり仏教vs神道の構図にもなっている。ギャオス/イリスは外来の異種で、ガメラは産土神の謂いなのかもしれない。このあたり、GMKの護国聖獣が日本人を殺しながら日本の国土を守ろうとしたように、怪獣は生物個々の守護者/破壊者ではなく、生態系のバランスを取る存在という解釈にスムーズにつながっていくように思う。

 

倉田と朝倉の世界観/怪獣観にもなかなか考えさせられる。地球の意思が、増えすぎた人間の数を減らそうとしているという考え方はコロナ禍の今を見越していたようにすら感じられる。世界各地で大量発生するコロナと世界各地で大量発生するギャオスが重なって感じられた人は多いことだろう。イリスがギャオスの変異体であるというのも、変異株によって大打撃を受けている兵庫・大阪地域のJovianには、考えさせられるものがある。

 

そのイリスの造形の荘厳さは『 ガメラ2 レギオン襲来 』のレギオンを超えると思う。やはり同時代の『 新世紀エヴァンゲリオン 』に使徒として出現してもおかしくない造形美である。ふわりと雲の上に姿を現すイリスの姿は禍々しく、同時に神々しい。ウネウネ系の触手で年端もいかない少女と融合しようとするところは、当時は特に何も感じなかったように記憶しているが、今の目で見ると気持ち悪いことこの上ない。そんな邪神イリスがガメラと激闘を繰り広げ、京都駅ビルという伝統と進歩の象徴を破壊するシーンは、『 モスラ 』における国会議事堂を彷彿させる。ガメラという子どもの味方であったはずの怪獣の破壊者としての側面にフォーカスし、シリアスなドラマでありながらも特撮怪獣映画の醍醐味も保っている。前作では緑色の血しぶきをまき散らしながら飛んでいく様が衝撃的だったが、今作ではそれを上回るグロ描写もあり、小片少女向けの作品には仕上がっていない。怪獣映画としてだけではなく邦画というジャンルにおいても、平成ではかなり上位の作品でありシリーズであると感じる。

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ネガティブ・サイド

人間パートが綾奈の物語に集中しすぎで、中山忍、藤谷文子らの出番というか存在意義が少々弱い。中山忍は鳥類学者・生物学者としての見識を披瀝して倉田や朝倉に対抗すべきだったし、藤谷文子も怪獣と心通わせることがどういったものなのかについて、眠っている綾奈に切々と語りかけるようなシーンが欲しかったと思う。螢雪次朗の見せ場も少なかった。

 

前作、前々作と比べて、ポリティカル・サスペンスとしての要素が薄れてしまった。嫌味な審議官がコミック・リリーフになってしまったのは少々残念だった。

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総評

『 ゴジラvsコング 』が無事に国内でオンタイムに公開されるのかどうか怪しくなってきたが、怪獣映画の人気やその需要は間違いなく高まっている。本作では玄武(ガメラ)と朱雀(イリス)の戦いが描かれた。白虎と青龍はいずこ。敵としても味方としても登場できる余地が残っている。『 ゴジラvsガメラ 』を実現させる制作者及びスポンサーは現れてくれないものか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

a natural enemy

天敵の意。増えすぎた人口を減らすためにギャオスが存在するという仮説は、なかなかに示唆的である。2020年、コロナ対策に社会経済活動を停止させた結果、インドや中国、ロシアやアメリカで空気や水が一時的にせよ浄化されたという報道があったことは記憶に新しい。コロナは地球が生み出した人類の natural enemy なのかもしれない。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 1990年代, A Rank, 中山忍, 前田愛, 怪獣映画, 日本, 監督:金子修介, 藤谷文子, 螢雪次朗, 配給会社:KADOKAWALeave a Comment on 『 ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒 』 -怪獣は敵か味方か-

『 ガメラ2 レギオン襲来 』 -レギオンの造形美を見よ-

Posted on 2021年2月14日2024年3月17日 by cool-jupiter

ガメラ2 レギオン襲来 80点
2021年2月11日 梅田ブルク7にて鑑賞
出演:水野美紀 永島敏行 藤谷文子
監督:金子修介

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『 ガメラ 大怪獣空中決戦 』の続く第二弾。怪獣ジャンル、そして特撮の素晴らしさをあらためて教えてくれる傑作である。コロナ禍でレイトショーも事実上禁じられているなか、ブルク7は子ども連れからオッサンの一人鑑賞組(Jovianもこれだ)で、かなり込み合っていた。やはり、ガメラという大怪獣にはそれだけの魅力がある、あるいは時代が求める何かがあるのだろう。

 

あらすじ

北海道に隕石が落下したが、自衛隊が探索しても発見できない。穂波碧(水野美紀)は隕石が動いたとの仮説を立てる。その後ほどなくして、札幌市内の通信に異常が起き始める。そして、地下鉄の線路上で謎の生物が現れ・・・

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ポジティブ・サイド

何をおいてもレギオンという怪獣の特異性に触れないわけにはいかない。隕石の正体が怪獣というのはキングギドラでお馴染みだし、宇宙出身の怪獣というのはガイガンやスペースゴジラ、ヘドラなどが先行しており、真新しいものではない。また小さな個体が巨大な個体へと変貌を遂げるのも1995年にデストロイアが先行して行っている。ただ、その小個体と巨大個体が別々の存在で、なおかつ旺盛に繁殖するというのは、これまでの怪獣映画には見られなかった特徴だ。

 

レギオンがケイ素生物であるという設定も秀逸。21世紀前の時点でケイ素生物を構想していた作品は漫画『 BLAME! 』ぐらいしかなかったと思うが、本作は『 BLAME! 』よりも前に発表されている。今でこそ宇宙生物学が花開きつつあり、ケイ素生物の実在が理論上で予測されているが、1990年代の時点でこのような世界観を構想していた人は少数だったはず。脚本家・伊藤和典の炯眼には恐れ入るほかない。そのレギオンの造形も素晴らしい。Jovianは割と昆虫の一部=宇宙由来という説を支持しているが、レギオンの甲虫的な外観はそうした考えを強力にバックアップしてくれているようで嬉しくなる。

 

本作も前作に劣らず謎の提示から謎解きまでのテンポがよく、観る者をぐいぐいと世界に引き込んでくれる。レギオンが作る草体のスケールの大きさよ。前作が『 シン・ゴジラ 』の模範的先行作品としてポリティカル・サスペンス要素を盛り込んで自衛隊出動へのハードルを下げてくれていたおかげで、本作の自衛隊の出動は非常にスムーズ。警察とビミョーに仲が悪いところもリアルで良し。ガメラと人間の共闘で侵略的宇宙生物を撃退するというのは、怪獣映画としてもSF映画としても、非常に質の高いエンターテインメントに仕上がっていると言える。

 

破壊のスケールもさらにアップ。『 ゴジラvsデストロイア 』で、ゴジラがメルトダウンして地球を吹っ飛ばしてしまうかもしれないというシミュレーションはあったが、本作は本当に仙台を吹っ飛ばしてしまった。ヘドラを除けば、怪獣映画としてはシン・ゴジラと並んで最も甚大かつリアルな被害をもたらしたと言えるかもしれない。

 

ミニチュアの街並みや建物の小道具を実際に破壊してしまうことから、一発で撮影するしかないという緊張感がある。それゆえに特撮によるバトルやエフェクトには、CGには絶対に出せない味がある。前作で宿敵ギャオスを倒したガメラは、本作では地球の敵を倒した。『 ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃 』の護国聖獣が日本国民を殺しながらも日本という国土を護ろうとしたというバックボーンを、金子修介監督は本作によって確立したのだろう。日本怪獣映画史に記録されるべき傑作である。

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ネガティブ・サイド

水野美紀が若い。広瀬アリスとすずの姉妹によく似ているように思うが、ということはあの姉妹も水野美紀のような熟女になっていくのだろうか。それはさておき、水野美紀がやはり大根である。前作の藤谷文子も登場するが、こちらも大根。金子監督は役者の演出よりも樋口特技監督との打ち合わせで忙しかったのだろうと苦しい擁護をしておきたい。

 

子どもからダイレクトに力をもらうという昭和ガメラの様式美を映像美と合体させたが、このようなシーンをもう少し増やして欲しかった。首都圏絶対防衛ライン前での攻防や、ウルティメイト・プラズマ発射前にマナを集めるシーンで子ども達に「ガメラ、頑張れ」と言ってもらうシーンが数秒で良いので欲しかったと個人的に思う。

 

総評

『 ガメラ3 邪神覚醒 』もDolbyCinemaで再上映されるのだろう。そうでなければ嘘だ。『 シン・ウルトラマン 』の公開を今夏に控え、令和時代に特撮ジャンルの復活なるか。かつて大映から「ゴジラとガメラの対決を」と呼びかけられた際に東宝は「貫目が違う」といって退けたが、もうそんな見栄やプライドの時代ではないだろう。GW明けには『 ゴジラvsコング 』も公開予定なのだ。邦画界は怪獣および特撮の“ユニバース”を真剣に考えるべき時に来ている。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

situation

状況、の意。単なる状況ではなく、まずい状況を意味する。イラクや南スーダンの日報問題で「戦闘」という言葉が使われてしまったが、自衛隊は元々この言葉を使えなかった。代わりに使っていたのが「状況」で、「状況を開始する」とか「状況を終了する」と言い換えていたわけだ。その英語がsituationである。“We’ve got a situation.”=「まずいことになった」である。状況=situationという丸暗記は絶対にやめておこう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 1990年代, A Rank, 怪獣映画, 日本, 水野美紀, 永島敏行, 監督:金子修介, 藤谷文子, 配給会社:KADOKAWALeave a Comment on 『 ガメラ2 レギオン襲来 』 -レギオンの造形美を見よ-

『 ガメラ 大怪獣空中決戦 』 -特撮映画の金字塔の一つ-

Posted on 2021年1月27日 by cool-jupiter

ガメラ 大怪獣空中決戦 80点
2021年1月24日 梅田ブルク7にて鑑賞
出演:伊原剛志 中山忍 藤谷文子 小野寺昭
監督:金子修介

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邦画の落日が叫ばれて久しい。いつの間にか小説や漫画の映像化を作業のように淡々とこなすようになってしまったのは何故なのか。「日本にはアニメがある」という声も聞こえないではないが、『 ウルフウォーカー 』や『 羅小黒戦記~僕が選ぶ未来~ 』のような傑作が海の向こうで作られていること、そして『 劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編 』(未見)が映画界の救世主のように扱われていることに一掬の、いや多大な不安を覚える。だが、日本にはまだ特撮映画、そして怪獣映画というジャンルが残されている!

 

あらすじ

太平洋上で巨大な漂流環礁が発見された。時を同じくして姫神島で住民が消失する事件が発生。その直前の無線では「鳥」が言及されていた。島を訪れた鳥類学者・長峰(中山忍)の前に、羽毛の無い巨大な鳥を発見する。同じ頃、海上保安庁の米森(井原剛志)と保険会社の草薙(小野寺昭)は、環礁で発見された碑文を解読。環礁はガメラ、怪鳥はギャオスという古代怪獣であることが判明して・・・

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ポジティブ・サイド

これは確か高校生の時に岡山市内の映画館で父親と観た記憶がある。その後、20代後半にDVDでも観た。今回で3度目の鑑賞である。ガメラと言えば「 強いぞガメラ♪ 」の歌詞がJovianの脳内に響いてくるが、Jovianはリアルタイムで昭和ガメラは鑑賞できていない。すべてVHS鑑賞である。そうした意味で、本作を劇場、しかもDolbyCinemaで鑑賞できたことは僥倖以外の何物でもない。

 

まず、タイトルロゴの演出が恐ろしくカッコいい。『 ゴジラvsデストロイア 』のそれを彷彿させる(というか、こちらの方が後発)素晴らしい出来栄え。そこから謎の環礁、そして巨鳥の出現と矢継ぎ早の展開で、観る側をぐいぐいと引き込んでくる。そのタイミングで中山忍演じる長峰を登場させることで青年から中年までの怪獣オタクのハートもがっちりとゲット。少年層には藤谷文子を配するなど、手抜かりはない。ここが『 ゴジラ 』シリーズとの違い。『 ゴジラ 』世界でヒロインと呼べるのは、おそらく三枝未希だけだろう。

 

閑話休題。本作は怪獣映画であると同時に政治的なリアリズムを追求した『 シン・ゴジラ 』の先行作品とも言える。ガメラやギャオスといった怪獣を捕獲するか駆除するかといった議論の生々しさは、確かに『 シン・ゴジラ 』に受け継がれている。もうひとつゴジラつながりで言えば、本作は『 ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃 』、いわゆるGMKの先行作品的な側面も有している。つまり、人間と怪獣の戦いを経て、人間と怪獣の共闘に至るという点だ。

 

その怪獣バトルも、樋口真嗣の手腕もあって、特撮の醍醐味が存分に味わえる。CGでは決して出せない建物が破壊されるときの臨場感、そして大規模なミニチュアのセットの中で繰り広げられる着ぐるみvs着ぐるみのぶつかり合いの質感。これらが高精細になった映像とクリアな音質によって、より迫真性を増している。特にラストのコンビナートの大爆発シーンは、『 ゴジラ対メカゴジラ 』のコンビナートの爆発に勝るとも劣らない。これらの大迫力を体験させてくれた梅田ブルク7様々である。

 

人間キャラクターが魅力的だが、やはりそれ以上に怪獣たちが個性を発揮しているところが素晴らしい。ギャオスの雛が共食いをするところ、成長したギャオスが人間を貪り食うところに、ギャオスという怪獣が紛れもないヴィランであることが伝わって来る。同時に、小難しい理屈をこねる環境庁の役人の屈折と変節に、人間、特に大人もあてにならない、信用できないという思いを(オッサンになった今も)強くする。そんな中で、子どもの味方であろうとするガメラ、人間に攻撃されても一切反撃しないガメラは、やはり純粋にヒーローである。単に敵対的な怪獣を攻撃してくれる=善という図式ではない。人間の愚かさをそこに挟むことで、ガメラの立ち位置がより明確になっている。

 

空中決戦という、ゴジラにはほぼ不可能な(といっても、ゴジラも空を飛んだことはあるが)スペクタクルはまさにスリル満点。成長したギャオスが東京の空を縦横無尽に飛び回り、自衛隊の放ったミサイルがギャオスを追尾する最中、東京タワーに命中してしまうといアイデアは、もしかすると海を越えて『 GODZILLA 』(1998)をインスパイアした可能性もあるのではないか。折れた東京タワーの中腹あたりに鎮座するギャオスのシルエットはまさに邪竜。地の底から現れたガメラとの空中戦、そしてクライマックスの爆発散華へと至るシークエンスは、特撮および怪獣映画のエッセンスのすべてが詰まっている。まさに金子修介監督および樋口真嗣特技監督の面目躍如である。邦画は死につつあるが、怪獣ジャンルまで死なせてはならない。

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ネガティブ・サイド

漂流環礁の調査シーンの引きのショットでは、海とプールの合成の粗さが目立つ。時代的な制約か。他にも橋の上でギャオスが米森、長峰、子どもを襲おうとするシーンではギャオスの飛行による衝撃波が生じないところが気になった。直前に犬やおばちゃんを襲うシーンでは、自転車を吹っ飛ばすほどの威力の衝撃波を生み出しているのに。この橋の上のシーンで、風で米森や長峰が風で子どもから引き離されたところにギャオスが突撃、子どもが大ピンチという瞬間にガメラが子どもをかばって負傷する、という流れなら、ガメラ=子どもの味方という図式がもっと理解しやすくなったと思われる。

 

あとは中山忍と藤谷文子の棒読み演技か。ビジュアルは文句なしだが、セリフ回しが拙すぎる。といっても『 ゴジラvsビオランテ 』の沢口靖子ほど酷くはないのだけれど。

 

そうそう、エンドクレジットでは“アニマトロニクス”であるべき箇所が“アニマトロクス”となっていた。シミュレーションがしばしばシュミレーションと言われていたように、英語とはまだまだ距離があった90年代を思い出させてくれた。

 

総評

知名度ではゴジラに劣るが、ガメラもまた日本の誇るべき怪獣の一方の雄である。実際に、ブルク7で本作鑑賞後に「大画面で観られて良かった!」「崇高な映画!」と感想を述べあう若い男子三人組を目撃した。おそらく元々怪獣ファンなのだろうが、それでも令和の時代に昭和生まれの怪獣(平成ガメラだが)の雄姿を映画館で拝めるということには、歴史的な意義がある。工場で大量生産するかの如くテンプレ的な映画が量産される邦画の世界の関係者は、怪獣、そして特撮というジャンルにかつてどれほどのエネルギーが注ぎ込まれていたのかを思い返すべきだろう。そして、60代以上の世代はぜひ孫たちにガメラを体験させてあげてほしい。いわゆる昭和のプロレス的なノリのゴジラ映画とは違い、かなり現実的な考察がなされている平成ガメラであるが、そうした作品こそ子どものうちに味わわせてあげてほしい。そのように切に願う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

How dare you!

環境活動家のグレタ・トゥーンベリの決め台詞。意味は「よくもそんなことができますね」である。中山忍演じる長峰が、ギャオスの捕獲から駆除へと方針転換した木っ端役人に対して「勝手過ぎます!」と一喝した台詞の私訳。逐語訳ならば“Too selfish!”とか“So egoistic!”となるのだろうが、より丁寧に“How dare you say that!”または“How dare you change policies!”となるだろうか。相手の言動に悪い意味で驚いたりした時、呆れたりした時に“How dare you!”と心の中で叫ぼうではないか。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 1990年代, A Rank, 中山忍, 伊原剛志, 小野寺昭, 怪獣映画, 日本, 監督:金子修介, 藤谷文子, 配給会社:KADOKAWALeave a Comment on 『 ガメラ 大怪獣空中決戦 』 -特撮映画の金字塔の一つ-

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