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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 監督:スティーブン・チョボウスキー

『 ウォールフラワー 』 -青春の甘さと苦さを思い出す-

Posted on 2019年4月27日2020年1月29日 by cool-jupiter

ウォールフラワー 70点
2019年4月25日 レンタルDVD鑑賞
出演:ローガン・ラーマン エマ・ワトソン エズラ・ミラー
監督:スティーブン・チョボウスキー

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190427022401j:plain

日本であろうとアメリカであろうと、学校には冷酷非情な生態系が存在する。スクールカーストというやつだ。高校生という、ちょうど大人と子どもの中間にある存在は、時に非常に脆く、時に非常に危うく、時に非常に強かで逞しい。そんな時期を追体験させてくれるのが本作である。

 

あらすじ

チャーリー(ローガン・ラーマン)は高校入学初日に、誰とも友達になれなかった。国語教師のアンダーソン先生(ポール・ラッド)にはポテンシャルを認められるも、生徒達とはどうしても距離が生まれてしまう。しかし、ある時、フットボールの試合で上級生のパトリック(エズラ・ミラー)とその義理の妹サム(エマ・ワトソン)と知り合い、友達になる。しかし、チャーリーにはある秘密があって・・・

 

ポジティブ・サイド

上級生にして親友となるパトリックを演じるエズラ・ミラーの演技。これは素晴らしい。『 ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅 』、『 ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 』では完全なるダウナー系(にしてマグマをため込むタイプ)を演じ、『 ジャスティス・リーグ 』ではフラッシュという天然アッパー系キャラを演じていた。次代のハリウッドを牽引する可能性を秘めた役者であり、アダム・ドライバー並みか、それ以上に活躍できるポテンシャルがありそうだ。本作でも優しさと包容力がありながら、自分なりの闇や負の側面をも抱えたキャラを見事に体現した。登場の瞬間から観る者に違和感を抱かせるのだが、そそっかしい人は妙な演技と勘違いしてしまうかもしれない。それは妙なのではなく、分かりにくい分かりやすさ、もしくは分かりやすい分かりにくさなのだ。特に珍しい属性ではないので、慣れた人ならすぐに見抜くだろうし、慣れていない人でもすぐに納得できるだろう。このあたりの演技のさじ加減が絶妙なのである。

 

エマ・ワトソンも魅せる。なぜかダメ男とばかり付き合ってしまう女性は、往々にして良い女なのだ。いや、女が器量よしだから、そばに立つ男のダメさが余計に際立つのだろうか。本作にはハーマイオニーの面影は無い。ダニエル・ラドクリフが『 ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館 』や『 ヴィクター・フランケンシュタイン 』でハリーのイメージを払しょくしたのと同じく、今作はエマ・ワトソンは非常に racy なバックグラウンドを有する slutty なキャラを具現化した。これらの英単語の意味を調べるのが億劫な人は是非本作を鑑賞しよう。

 

原題の The Perks of Being a Wallflower とは、壁の花でいることの利点、ぐらいの意味か。パーティーなどで部屋の中央に陣取る花形ではなく、壁に背をつけて時間をつぶす、いわゆるはみ出し者キャラのことである。ローガン・ラーマンもそうしたキャラを説得力ある形で体現した。彼にはとある秘密(というか特徴)があり、まるで『 君が君で君だ 』の尾崎豊的なところがある。というか、普通の男であればこうした特徴を大なり小なり有しているものであるし、Jovianはこのキャラクターがいたく気に入った。学校でまともに話せるのが先生だけ、という状態から同世代の友人を得て、恋の素晴らしさを知り、また恋の恐ろしさを知る(それは自分の弱さや残酷さを知ることでもある)というビルドゥングスロマンが、心の琴線に触れるのだ。詳しくは観てもらうしかないが、チャーリーの“理屈”に賛同しする、あるいは同じように感じたことがあると思い当る男性連中は多いはずだ。

 

そうそう、国語教師のポール・ラッドも良い味を出していた。千万言を費やすよりも、自分の愛読書を読んでもらう方が、思いやりや尊敬、信頼の気持ちをより強く表すことができる。そんな理想的な教師像を彼の姿に見た。俺もこんな風になりたいなと思えた。

 

ネガティブ・サイド

チャーリーに仕込まれたトリックというか、とあるトラウマの秘密が、ややありきたりである。極端な話、漫画『 ベルセルク 』のガッツの抱えるトラウマと同質のものの方がよりインパクトがあり、なおかつパトリックという兄貴キャラとの整合性というか、相性の面でもより良かったのではないかと思う。

 

また、チャーリーの家族との触れあい、交流の場面がもっと欲しかった。チャーリーという主人公が、どのように変わり、また変われないのかを最もよく知るのは、やはり家族だからだ。

 

もう一つ、チャーリーの恋の始まり方の説得力が弱かった。この恋の終わり方がハチャメチャなので、始まりもある意味ではもっとぶっ飛んだ、若気の無分別で良かった。ここでの無分別というのは性欲と恋心を混同するというような意味ではなく、周囲に遅れているのではないかという焦燥感や異性への純粋な好奇心、そうしたものから偶発的に始まってしまった関係だったほうが、チャーリーというキャラによりマッチしていたように思う。

 

総評

青春ものとして佳作である。日本で同じテーマを描こうとしても、様々な意味で難しいだろう。しかし、こうしたはみ出し者たちの心温まる交流風景や衝突、断絶を経ての成長物語は普遍的なテーマであるはずで、誰が観ても何がしかのメッセージを受け取ることができるし、共感を呼び起こされるはずである。高校生以上なら充分に理解ができるはずだし、青春のほろ苦さを予習もしくは追体験することができる。お勧めの一作である。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アメリカ, エズラ・ミラー, エマ・ワトソン, ヒューマンドラマ, ローガン・ラーマン, 監督:スティーブン・チョボウスキー, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 ウォールフラワー 』 -青春の甘さと苦さを思い出す-

『ワンダー 君は太陽』 -人の見た目が変えられないなら、人を見る目を変えるべし-

Posted on 2018年6月17日2020年2月13日 by cool-jupiter

ワンダー 君は太陽 75点

2018年6月16日 MOVIXあまがさきにて観賞
出演:ジェイコブ・トレンブレイ ジュリア・ロバーツ オーウェン・ウィルソン
監督:スティーブン・チョボウスキー

*一部ネタバレあり

これは傑作である。何が本作を傑作たらしめるのか。それは主人公オギー(ジェイコブ・トレンブレイ)が自分自身の力で何かを成し遂げる様子を逐一カメラに収めているからではなく、むしろオギーの周囲の人間が知らず知らずのうちにオギーの影響を受けているということを観客に非常に分かりやすい形でプレゼンテーションしてくれているからだ。またオギー自身も、決して子どもに似つかわしくない明晰すぎる頭脳やタフすぎる精神力を備えているわけでもない。言わば、ちょっと特殊な顔を数々の手術で治してきただけの普通の男の子なのだ。オギーを見ることは、ある意味で自分自身の暗い心と向き合うことでもある。誰もが何かしらの罪悪感や劣等感に苛まされているものだが、もしもそれがほんのちょっとのきっかけで取り除かれるのであれば、人は人にもっと優しくなれるかもしれない。どうせ自分は背が低いから、どうせ自分は太っているから、どうせ自分は二重瞼じゃないから、どうせ自分は・・・ と自分にマイナスの符号ばかりつけるということを、我々はしがちである。しかし、ほんの少し見方を変えれば、ほんの少し接し方を変えれば、ほんの少し勇気を振り絞れば、何かが大きく変わるかもしれない。そんな気にさせてくれる作品である。

もちろん、オギーの学校生活は初めはとても辛いものだ。誰もがオギーを「疫病神」扱いする。しかし、そんな中でも手を差し伸べてくれる子どもはいるし、オギーにはその手を握り返すだけの勇気があった。またテストで困っているクラスメイトに、こっそり自分の答案用紙を見せてやるなどの優しさや茶目っ気もある。他校の年上の生徒に友達が殴られたのに対して敢然と立ち向かう姿勢すら見せる。しかし、考えてみれば、こうしたことは全て普通のことであると言える。これがドラマチックであるのは、オギーが特別な少年だからではなく、オギーを特別な少年であると思い込んでいる我々の側にその原因があることが明らかになってくる。そのことを本作はある種の群像劇の形で教えてくれる。

この映画は、オギーの父ネート(オーウェン・ウィルソン)、母イザベル(ジュリア・ロバーツ)、姉ヴィアや愛犬のデイジー、その他にも姉の友人やボーイフレンド、オギーのクラスメイトや友人、教師、校長先生らの目を通じて、オギーの周囲の人間ドラマを構成していく。特に姉ヴィアが経験する親友との突然の断絶と新しい出会いは、『 レディ・バード 』でも似たようなテーマが扱われていたように、普遍的な事象であると言える。それが特殊な色彩と帯びて見えるとするなら、やはりそれは観る側の目にフィルターが掛かっているからなのかもしれない。そのことを暗示するのがオギーが友達のジャック・ウィル(ノア・ジュプ)と組んで発表する理科研究プロジェクトであると思う。

その他、個人的にツボだったのは、スター・ウォーズからチューバッカとダース・シディアスが参戦していること。このぐらいの年齢の子になると、旧三部作と新三部作を分け隔てなく愛でられるということは『 ザ・ピープルVSジョージ・ルーカス 』でも触れられていたが、時代は確実に進んでいるようである。それでも学校のとあるイジメのシーンでオギーを指して悪ガキのジュリアンが”Darth Hideous”と呼ぶところなどは、前述のジャック・ウィルの子どもらしさとはまた別の子どもらしさを見せられ、ぞっとしてしまった。このクソガキを巡ってはさらに一悶着あり、彼の良心と両親にも見せ場が与えられる。そこで、この世は陽の光と虹だけで出来ているわけじゃないんだ、というロッキー・バルボアの言葉を言葉を思い出す人もいるだろう。また劇中で『オズの魔法使い』が一瞬出てくるのだが、この作品でも虹は重要なモチーフになっている。それをオギーとジャック・ウィルはあっさり観ないという選択をするのだが、ここからもオギーと皆の物語は、魔法ではなく皆の知恵や勇気によって紡がれているものだということが暗示されているようだった。

再度繰り返すが、本作の素晴らしさは、オギーその人ではなく、彼の生きる世界の明るさと暗さ、その両方に我々が魅せられるからだ。愛犬デイジーとの別れや、そのことに独り寂しく涙する父などの姿なくして、オギーの成長はなかったし、物語世界の豊饒さは生まれなかったのではないだろうか。人は変わることができる、それは『スリー・ビルボード』のテーマでもあったが、そのことは本作にも通低している。映画ファンであってもなくても、見て損は無い傑作である。

それにしても主演のジェイコブ・トレンブレイはアダム・ドライバーそっくりだし、親友役のノア・ジュプはトーマス・ブロディ=サングスターに良く似ている。将来に期待が持てそうな子役たちである。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アメリカ, オーウェン・ウィルソン, ジェイコブ・トレンブレイ, ジュリア・ロバーツ, ヒューマンドラマ, 監督:スティーブン・チョボウスキー, 配給会社:キノフィルムズLeave a Comment on 『ワンダー 君は太陽』 -人の見た目が変えられないなら、人を見る目を変えるべし-

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