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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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タグ: 瀧内公美

『 火口のふたり 』 -歪な実写版セカイ系物語-

Posted on 2019年9月4日2020年4月11日 by cool-jupiter

火口のふたり 65点
2019年8月29日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:柄本佑 瀧内公美
監督:荒井晴彦

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190904001119j:plain

 

『 幼な子われらに生まれ 』の脚本家が監督をしていると知り、平日の昼間から映画館へ。予告編では『 娼年 』や『 殺人鬼を飼う女 』のようにエロシーンを通じて何らかのメッセージを発してやろうという作品かと思っていたが、実際はちょっと趣が異なる作品だった。

 

あらすじ

賢治(柄本佑)は父から電話を受ける。直子(瀧内公美)の結婚式への出席するか?というのだ。故郷の秋田に帰省する賢治は、直子に「一晩だけ、あの頃に帰ろう」と言われ、関係を持ってしまう。だが、それは互いの身体の言い分を呼び覚ましてしまい・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190904001139j:plain

 

ポジティブ・サイド

『 娼年 』の松坂桃李は、ちょっとその愛撫は優しさが足りないんじゃないのか?と観る側に思わせたが、柄本佑はどちらかというと成田凌タイプ。つまり、本当に彼自身がやっていそうなちょっと無理めの前戯を演じてくれる。男性ホルモンが旺盛に分泌されていそうな雰囲気を漂わせる柄本は適役である。新井晴彦が脚本を担当した『 幼な子われらに生まれ 』でも、浅野忠信という役者がナチュラルに醸し出す迫力や威圧感、いわば暴力の予感が効果的に演出されていたが、柄本もそれに近い使われ方を本作ではしている。

 

瀧内公美は『 娼年 』には勿体なかったのだろう。美女がイケメンとセックスするところを見てもあまり楽しい気分にはならないが、これほどの美女が柄本のようなムンムンの男子中学生がそのままデカくなりました的な男とまぐわうのは、言葉そのままの意味で面白い。映画撮影的にも非常にチャレンジングなショットがいくつも見られる。つまり、ワンカットの多用である。カメラアングル的に斬新なものは皆無だったが、濡れ場に繋がるシーンはほぼすべてロングのワンカットで、それにより臨場感が増している。これは監督の手腕であろう。瀧内の裸体に妙なフォーカスをすることなく、それでいて彼女の裸体の魅力をスクリーンにぶちまけている。このおっさんは流石にエロの大家である。瀧内の他の出演作もぜひ鑑賞してみたくなった。

 

本作は映画というよりもドラマである。といっても、一つひとつのサブプロットがテレビドラマの一話一話に対応しているというわけではない。登場人物は、はっきり言って賢治と直子だけで、これは舞台上で繰り広げられる対話ベースのドラマ技法で作られた映画である。ほんのちょっとした一言が、我々観る側にとっては二人の背景や関係性、過去の出来事についての実に多くの情報の流入となる。これは単に役者が台詞で状況説明をしているのではない。こうした何気ない一言ひとことが、画面上の現実の薄皮を一枚また一枚と剥いでいっているのだ。人間も様々に纏っている社会性や人間性といった薄皮を剥いでいけば、案外残るのは類人猿なのかもしれない。頭でっかちで理屈ばかり先行しがちなくせに、下半身のマグマの抑制はあまり効かないタイプの賢治と、睦み合いと愛情は別と割り切って、結婚前夜に婚約者以外の男と性交する直子は、ある意味では今の時代のアダムとイブなのかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

もっと五感に強く訴えるような映像表現が欲しかった。劇中で直子が賢治のにおいに言及するシーンがあるが、その直子の感覚を観る側と共有できるようなカットあるいは、直子のほんのちょっとした表情の変化を捉えたショットが欲しかった。これは追憶の物語で、誰にとっても、カネはあまりないが若さとエネルギーだけは有り余っていた頃があるのだ。つまり、我々は皆、賢治であり直子なのだ。そうした我々の感覚や感情、記憶を刺激する映像上の工夫が不足していた。

 

これは当事者ではない者の感想だが、東日本大震災を少し茶化しているというか、賢治の生き方、それに対する言い訳めいた「言い分」が、現実感を奪い取ったように思う。賢治の人生が上手くいっていないのは、震災のせいもあるが、本人の人間性の問題の方が原因としては遥かに大きいように感じられた。Jovianは10代半ばで阪神大震災を経験したし、Jovianの両親が経営していた焼肉屋は0-157と狂牛病のダブルパンチであえなくcrash and burnした。一個人の力ではどうしようもない不運や災害、事故などは存在する。肝心なのは、そこからどう立ち直るかだ。賢治というキャラクターには愛すべきところもあるが、その生き方や生き様には、同じ男としてとうてい共感できないところも多い。

 

総評

R18指定だが、大学生カップルが観に行くような映画ではない。セックスシーンを鑑賞する作品ではなく、セックスに至るには人間がまとう虚飾を剥いでしまわなければならないということを再確認する作品である。35~45歳ぐらいがメインとなるべきターゲットであろう。賢治と直子と同世代、またはそれより少し上ぐらいのdemographicが青春の追体験と現実からの逃避のために観る映画である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

I will set you free by then.

「その頃までには解放してやるよ」と賢治は不敵に言う。つまりは直子の婚約者が帰ってくるまでには、直子の前から消えるということだ。by thenやby nowなどをさらっと口頭英作文に組み込めるようになれば、初級者は脱したと思ってよいだろう。

 

Oh, it’s 10 PM. He should by home by now.

I guess that milk will have gone off by then

 

状況を思い浮かべながら、声に出してみよう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, C Rank, ラブロマンス, 日本, 柄本佑, 瀧内公美, 監督:荒井晴彦, 配給会社:ファントム・フィルムLeave a Comment on 『 火口のふたり 』 -歪な実写版セカイ系物語-

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