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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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タグ: ビリー・コノリー

『 ゾンビーノ 』 -人間とゾンビの共生は可能か-

Posted on 2020年6月4日 by cool-jupiter

ゾンビーノ 65点
2020年6月3日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:キャリー=アン・モス ビリー・コノリー クサン・レイ
監督:アンドリュー・カリー

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200604222657j:plain
 

間もなく「withコロナの時代」になると言われている。コロナは未知のウィルスであり、それはゾンビや魔女に例えられるだろう。そうした異形の存在と人類が平和共存できるかどうか。さらには高度に発達したAIと人類の共生は可能か。陳腐なテーマであるが、今という時代においては重要な問いである。

 

あらすじ

放射能のせいで死者がゾンビとしてよみがえる世界。だがゾムコム社の開発した首輪により、ゾンビは無害・無力化された。そうした世界で、ティミー(クサン・レイ)は母親が見栄で手に入れてきたゾンビによっていじめっ子たちからたまたま救われる。ティミーはゾンビ(ビリー・コノリー)にファイドと名付け、奇妙な友情を育んでいくが・・・

 

ポジティブ・サイド

ゾンビは元々ブードゥーの呪いによる産物とされているが、普通に考えればそれはない。かなりの確率で、脳血管障害で仮死状態に陥った者が息を吹き返した、だがその時に構音障害や構語障害、あるいは片麻痺などを発症したのだろう。そうした人物が都合の良い単純労働力と見なされ、生かされていた。それがゾンビのルーツだろう。本作のゾンビはもちろん人を襲うのだが、それがゾンビの主たる属性にはなっていない。ゾンビが労働力として、あるいは愛玩動物として扱われる社会を描いており、これは極めてユニークな世界観だ。

 

ティミーとファイドの友情は、abnormalでありながらも美しい。ゾンビというある意味で絶対服従してくれる危険な存在と友情を育むのは、どこかロボットと疑似父子・疑似親友関係を結ぶ『 ターミネーター2 』のジョン・コナーとT-800のようであり、異形の存在者との奇妙な友情という点では『 グーニーズ 』のチャンクとスロースを思い起こさせる、ほっこり系でもある。それだけなら動物との友情やロボットとの友情と特に変わりはない。本作の貢献は、キャリー=アン・モス演じるティミーの母とゾンビであるファイドとの、奇妙な関係とその劇的な帰結にある。その脇には、女性ゾンビのタミーとの関係を深める脇役もいる。ゾンビと共存する世界というのは、ある意味でゾンビと本当の家族になることだ。家族がゾンビ化して葛藤する映画はおそらく2000本ほど存在するだろうが、ゾンビと家族になる映画というのは、おそらく20本以下ではないだろうか。本作はその貴重な一本である。

 

本作はほのぼの映画である反面、強烈な社会風刺でもある。ゾンビという物言わぬ、思考力を持たぬ、搾取される側であり、なおかつ人間性を喪失した存在という属性の諸々が、人類そのものに一挙に投影されることになるからである。これには恐れ入った。冒頭のコメディックなナレーションと白黒映像は大いなる伏線である。本作は多くの男性諸氏の心胆を寒からしめるのではないか。同時に、人間と非人間の関係性、その境目を大いに揺さぶってくる。コメディでありならがコメディの枠を大いに超えた良作である。

 

ネガティブ・サイド

コメディとして『 ショーン・オブ・ザ・デッド 』のような突き抜けた面白さがない。ティミーの父親の抱えるトラウマがそもそも面白くないのだ。葬式にこだわる気持ちは分からないでもないが、そうした気持ちがこれだけ持続するからには、ゾムコム社も当初はテクノロジーに欠陥があって、ゾンビを飼いならすことにはしばしば失敗した、そして多くの犠牲がその過程で出た。そうした歴史的な経緯が必要だっただろう。

 

政府ではなく企業がでかい顔をする世界というのは確かに近未来的であるが、本作の世界観とは合わない。経済=金銭の授受が絡むと、様々な境目がそれだけで揺らぐからだ。人はカネのためならプライドも捨てられるし、衣服だって脱ぐ。近未来SFの要素は歓迎だが、あまりにも現実社会とリンクした要素は不要である。そうした経済優位の社会を描くのなら、それこそゾンビという労働力をいかに搾取できるかが社会的地位の高さにつながっているというディストピアを描くべきだったと思う。

 

グロいシーンは不要だったように思う。真夜中に月を背景に立ち上がる老婆のシルエット、のように序盤から中盤にかけてはボカした描写だけで良かった。そうすることで、後半のストーリーがよりカラフルになったはずだし、タミーを愛するナード男の怒りにも共感しやすくなったことだろう。

 

総評

多様性の重要さが叫ばれて久しい。その一方で差別問題の根深さが浮き彫りになる事件も頻発している。Homo homini lupusな世界が現出する一方で、橋や塔や動物やゲームのキャラクターと結婚する者も出てくる時代である。そして、新型コロナウィルスの出現で、ソーシャル・ディスタンスなる概念と行動まで生まれた。人間同士の関係がまさに揺らいでいる。本作は10年以上前の作品であるが、人間と非人間との奇妙な関係の醸成にフォーカスしている。今こそ再鑑賞すべき時を迎えていると言えるだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

There is no such thing as ~

~などというものは存在しない、の意である。劇中では There is no such thing as a stupid question. = マヌケな質問なんてないんだよ、というふうに使われていた。

 

There is no such thing as a perfectly safe drug.

There is no such thing as a foolproof plan.

 

といった感じで使う。職場であなたの提案が上司や同僚の抵抗にあったら、“There is no such thing as a risk-free investment/project!”と反論しよう。

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2000年代, C Rank, カナダ, キャリー=アン・モス, クサン・レイ, コメディ, ビリー・コノリー, 監督:アンドリュー・カリー, 配給会社:ショウゲートLeave a Comment on 『 ゾンビーノ 』 -人間とゾンビの共生は可能か-

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