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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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タグ: ビリー・クラダップ

『 秘密への招待状 』 -邦画もしくは韓国映画で再リメイク希望-

Posted on 2021年2月27日2021年2月27日 by cool-jupiter

秘密への招待状 75点
2021年2月26日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:ミシェル・ウィリアムズ ジュリアン・ムーア ビリー・クラダップ アビー・クイン
監督:バート・フレインドリッチ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210227161041j:plain
 

タイトル(邦題)はイマイチだが、ミシェル・ウィリアムズとジュリアン・ムーアの共演および対決というだけでチケット購入。期待以上の出来栄え。大人のテーマを大人の映画技法で語りつくした逸品。

 

あらすじ

インドで孤児院を運営するイザベル(ミシェル・ウィリアムズ)は、200万ドルの支援を検討している会社経営者テレサ・ヤング(ジュリアン・ムーア)に会いにニューヨークへ向かう。「娘の結婚式に来てくれればもっと話せる」というテレサの招待に応じたイザベルだが、そこで目にしたのはテレサの夫はかつての恋人オスカー(ビリー・クラダップ)だった・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210227161112j:plain
 

ポジティブ・サイド

ジュリアン・ムーアの演技力が光っている。カリスマ的な会社経営者、精力的に働くキャリアウーマン、良妻賢母(という表現はもしかしたらアメリカではnot PCかもしれないが)のすべてを情感たっぷりに演じている。見どころは、イザベルとのとある会食前のシーン。友人たちとにこやかに談笑したかと思えば、自分の部下を恐ろしく口汚い言葉で罵る。ジェットコースターのように気分があちらこちらへと瞑想・・・ではなく迷走する。ラストの慟哭も観る者に深く、痛く突き刺さる。

 

ミシェル・ウィリアムズは対照的に抑えた演技で魅せる。二度だけ声を荒げるが、その他のシーンは基本的には感情を押しとどめている。逆に、所作で存分に語っている。靴を脱ぎ捨て、足早に階段を下りていくシーンに彼女の内面の怒りや混乱がよく表れている。こうした演出の方が逆に彼女の内面をよりはっきりと伝えてくれる。監督の演技指導やカメラマンの腕前もあるのだろうが、日本の女優もミシェル・ウィリアムズが本作で見せる演技を参照してほしい。

 

全体的なストーリーテリングも巧緻だ。イザベルとオスカーの口論や、グレイスとイザベルがアルバムを一緒に見るシーンなど、過去に何があったのかを断片的に物語ってはいるものの、全体像や真実は決して明らかにしない。それは、本当に重要なのは「今」であるという作り手の信念の反映なのだろう。グレイスが父オスカーに“Did you love her?”と問い、さらに“Do you?”と重ねて尋ねるシーンがそのことを証明していると思う。

ドラマチックなシーンでも妙に凝ったカメラワークやBGMに頼らず、あくまで俳優たちのエモーションを淡々と映し出し続けたのが心地よかった。『 私は確信する 』でも感じたことだが、テンプレに沿って映画を作っている日本の監督たちは、時には調味料なしで素材の味だけで勝負する度胸を持って欲しい。

 

家族とは、結婚とは、子育てとは、仕事とは、人間関係とは。様々な問いが渦巻く本作では、明確な答えは示されない。巨大な企業で、白人、黒人、アジア系、男性、女性の区別なく人を雇い、血のつながらぬ子供も血を分けた子どもも育てたテレサ。ひっそりと孤児院を運営するイザベラとは対照的だが、血縁者以外を家族として扱う点では同じ。そのことは、彼女たちだけではなく今後の世界では広く共有されるべき価値観となるはず。イザベラの言う“It’s your life. You decide.”という信念・理念がそれを表しているように思えてならない。彼女自身、息子のように育てている孤児のジェイに人生の選択を委ねるシーンには何とも言えない苦みと少しのさわやかさが残る。日本では『 ヤクザと家族 』が家族の意味を問い直してきたが、アメリカでも家族の意味を再定義する時期に差し掛かってきているのだろう。

 

ネガティブ・サイド

色々な解釈の余地を残す本作で、逆にそれが心地よいのだが、一つだけ気になる点が。テレサがイザベラのニューヨーク訪問を強硬に主張した理由の真相は何だったのか。偶然だったのか、必然だったのか。

 

イザベラおよび施設のマザーらしき女性がカネにこだわるのは大いに理解できる。しかし、そのカネへの執着に説得力を持たせるには、第一にインドの子ども達が置かれている窮状、惨状をよりつぶさに映し出すこと。そして第二にニューヨークのホテルの部屋をスイートからスタンダードに変えてくれ、その差額を寄付金に加えてくれという要求。この二つが少なくとも必要だったのではないか。

 

総評

上質なドラマである。『 ブリング・ミー・ホーム 尋ね人 』のように養子制度にあまり抵抗のなさそうな韓国、『 朝が来る 』で養子という制度への気づきが高まった日本でも、機を見てリメイクしてほしいもの。『 おとなの事情 スマホをのぞいたら 』のように、各国が自国の特色を盛り込めることだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

grace

楽曲『 アメージング・グレース 』でお馴染みの語。意味は「恩寵」。スペイン語のありがとう=グラシアス(gracias)やイタリア語のありがとう=グラッツェ(grazie)などと語源を同一にする語。大河ドラマ『 麒麟がくる 』の主人公・明智光秀の娘たまが細川ガラシャとなるが、ガラシャというのはラテン語のGratia=英語のgraceである。Every picture tells a story. Every word tells a story, too.

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アビー・クイン, アメリカ, ジュリアン・ムーア, ヒューマンドラマ, ビリー・クラダップ, ミシェル・ウィリアムズ, 監督:バート・フレインドリッチ, 配給会社:キノフィルムズLeave a Comment on 『 秘密への招待状 』 -邦画もしくは韓国映画で再リメイク希望-

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