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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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タグ: テッド・二ーリー

『 ジーザス・クライスト・スーパースター 』 -賛否両論を呼んだ革新的ミュージカル-

Posted on 2020年11月8日2020年11月8日 by cool-jupiter

ジーザス・クライスト・スーパースター 80点
2020年11月4日 Amazon Prime Videoにて鑑賞
出演:テッド・二―リー カール・アンダーソン
監督:ノーマン・ジュイソン

f:id:Jovian-Cinephile1002:20201108230400j:plain
 

嫁がHuluで『 イエス・キリストの生涯 』に偉く感じ入っていた。曰はく、『 世界ふしぎ発見! 』のクイズが無いバージョンで全8話構成らしい。時々、イエスその人や父ジョセフ。母マリア。当時のユダヤ世界について質問をしてくる(Jovianは宗教学専攻だったのだ)。色々と質問に答えているうちに、「これを見せた方が早いのではないか?」と本作を久しぶりに嫁さんと鑑賞。嫁はこれまた痛く感じ入っていた。

 

あらすじ             

ユダ(カール・アンダーソン)は懸念していた。ナザレのイエス(テッド・二―リー)がその卓越した教えをもって勢力を膨らませることが、ローマを刺激しかねないことに。ユダはなんとかイエスを諫めようとしつつも、一行はさらなる宣教のためにエルサレムへと向かうことになり・・・

 

ポジティブ・サイド

初めて観たのはVHSだった。当時は小学校の高学年ぐらいで、物語の意味はちんぷんかんぷんだったが、イエス・キリストの名前は何となく知っていたし、イスカリオテのユダは漫画『 北斗の拳 』で知っていた。それでも本作のキャラクターたちのドラマには圧倒されたし、『 キャッツ 』や『 オペラ座の怪人 』と同じく、アンドリュー・ロイド・ウェバーの音楽には激しく魅了された。

 

大学で宗教学(といっても専攻は東洋思想史)やら聖書学を学んでユダヤ教やキリスト教に関する知識を得ていたころ、大学の劇団「黄河砂」が本作を舞台劇として英語で公演もした(Jovianの寮の先輩も鞭を振るう役で出演した)。はっきり言ってクオリティはイマイチだったが、それでも物語の骨格の意味がはっきりと伝わってきたことを覚えている。同時に、ノン・クリスチャンや宗教学専攻ではない者にとっては、やはりチンプンカンプン物語であることも周囲の反応から分かった。

 

そこで恩師である旧約聖書学の異端の大家・並木浩一と新約聖書学の碩学。永田竹司にそれぞれ『 ジーザス・クライスト・スーパースター 』を観たか、そしてどのように感じたかをオフィス・アワーにインタビューするという暴挙に出た。今にして思えば愚行であるが、そんな学生にも対応してくれるところが我が母校の懐の深さだったか。並木先生は「あんなものは論評に値しない」と言い、永田先生は「あのような形式でしか語れないものもある。発表当時は賛否両論あったが、自分は賛である」とおっしゃった。Jovianも永田先生の意見に与すものである。

 

前置きが長くなりすぎた。本作の魅力は、繰り返しになるが、アンド・ロイド・ウェバーの音楽である。“Jesus Christ Superstar Overture”は、イエスが権威や威厳ではなく、熱狂の源であったことを感じさせてくれる(そしてその解釈はおそらく正しい)し、マリアが歌う“I Don’t Know How To Love Him”も、イエスの神性と人間性の両方のはざまで揺れ動く心情を、百万言を費やすよりも雄弁に語っている。熱心党のサイモンの姿にSEALDsを見出すのは行き過ぎかもしれないが、『 三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実 』の大学生たちのような熱量を感じ取ることは十分に可能だろう。

 

しかし、本作の最大の魅力は、Jovianの好物ジャンルである「映画を作る映画」になっているところである。こうしたメタ構造を冒頭のシーンからあっけらかんと見せてしまうことで、たとえば我が恩師・並木のような評論は、それ自体が的外れになってしまう。エンディングでユダが歌う“Jesus Christ Superstar”は奥深い。小説および映画の『 ダ・ヴィンチ・コード 』の作者ダン・ブラウンは本曲にインスパイアされたというのがJovianの勝手な推測である。今、見直しても十分に面白いし、キリスト教に興味のあるという人は、本作をお勧めしたい。そこらの凡百の書籍よりも遥かに面白く核心を突いている。

 

ネガティブ・サイド

Amazon Prime Video版は音声と映像が若干ではあるが、ずれている。これはVHSでもそうだったが、せっかくデジタル化するなら、現代の技術を使ってより精緻に仕上げるべきではなかったか。モノクロ映画のカラー化に反対したジョージ・ルーカスも、リップシンクの精度を高めるのには反対すまい。また、泉下のカール・アンダーソンも“Israel in 4 BC had no mass communication”ではなく“America in 1970 AD had no personal computers”と言ってくれるのではないか。

 

ヨーロッパや中南米、アメリカや韓国のような根っからのキリスト教国であれば、本作をすんなりと消化できるのだろうが、それ以外の国の人にはきついと思われる。特に、イエスが弟子たちに「この愚か者ども」、「嘘つきめ」などと怒鳴るシーンは、一般人にはポカーンであろう(新約聖書では、イエスがペテロあたりに「悪魔よ、黙れ」みたいに言う描写がいくつもあったりする)。イエスの人間性について、もう少しだけ掘り下げる歌や演出が必要だったのでは?また、裏切り者とされるユダが、いかにインテリで、いかにイエスの信頼を得ていたかの描写も欲しかった、というか必要だった。1分半で描けるはずだ。

 

総評 

ロック・ミュージカルの金字塔であると断言する。歴史的、宗教的背景を押さえておかないと物語の深みを味わえないが、それでも本作の音楽と歌、そして俳優陣の鬼気迫る演技、そして“現代視点からの再解釈”を楽しむことは十分に可能である。キリスト者の一部には本作の演出を嫌う人もいるのは事実であるが、人物や社会の描写はおおむね性格であるということは、国際基督教大学で宗教学を専攻したJovianが勝手に保証する。ミュージカル好きなら must-watch である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

sit on the fence

字義通りの意味は「フェンスの上に座る」であるが、本当の意味は「あいまいな態度でいる」、「どっちつかずの状態でいる」ということである。カヤパの台詞で、ジーザスをどうすべきかについて自分たち取るべき姿勢をはっきりさせてこなかった際に放たれる台詞。

How long has our client been sitting on the fence about our offer?

うちのクライアント、どれだけこちらのオファーについての態度を保留させているんだ?

のように使う。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1970年代, アメリカ, カール・アンダーソン, テッド・二ーリー, ミュージカル, 伝記, 歴史, 監督:ノーマン・ジュイソン, 配給会社:CIC『 ジーザス・クライスト・スーパースター 』 -賛否両論を呼んだ革新的ミュージカル- への2件のコメント

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