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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: シャルマン・ジョーシー

『 ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画 』 -Rise up against all odds-

Posted on 2021年1月11日 by cool-jupiter

ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画 80点
2021年1月9日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:アクシャイ・クマール ビディヤ・バラン シャルマン・ジョーシー
監督:ジャガン・シャクティ

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昨年2019年夏ごろにNHKの『 地球ドラマチック 』でインドの衛星打ち上げ特集を行っていたのを見て、数学の国がついに天文学にも本腰を入れ出してきたかと感じた。そして本作、インド版『 ドリーム 』がリリース。宇宙開発および映画製作の優等生への仲間入りをさせてもらうぞ、との宣言であるかのようだ。

 

あらすじ

タラ(ビディヤ・バラン)は過程を切り盛りする主婦であり母であり、そしてISRO(インド移駐研究機関)の職員でもある。ロケット発射の際のほんのわずかな確認ミスのために、打ち上げは失敗。それによりタラと責任者のラケーシュ(アクシャイ・クマール)は閑職の火星探査衛星打ち上げプロジェクトに左遷されてしまうのだが・・・

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ポジティブ・サイド

文句なく面白い。その最大の理由は、魅力的なキャラクターにある。実話ベースとはいえ、おそらく登場人物たちは相当にデフォルメされているだろう。けれど、その改変具合が絶妙で、キャラクターの性格や行動がストーリーを違和感なく推し進めていく。映画の冒頭でタラが主婦として母親として奮闘する場面がこれでもかと描写されるが、それがあるからこそ家政・・・ではなく火星到達のための一発逆転のアイデアがタラから出てきたことに納得できるし、そのアイデアの中身に我々はたと膝を打つのである。

 

敵役のNASA帰りのプロジェクトマネージャーによって指名され、三々五々やって来る経験の浅い女性スタッフたちも個性豊かだ。収納や節約、裁縫など、とても宇宙開発や宇宙探査に関係があるとは思えない分野の知恵がどんどんと現場で生まれ、応用されていく展開が子気味よい。そして、そのアイデアをしっかりと受け止め、吟味し、ゴーサインを出す責任者のアクシャイ・クマールの存在感よ。この役者は『 KESARI ケサリ 21人の勇者たち 』でも、威厳ある上官でありながら、部下が上げてくる声を丹念に聞き取る耳を持っていた。そうしたキャラを演じさせるとハマる。まさにキャリアの円熟期なのだろう。本作で共演する多くの若い女優たちとも過去に共演歴があることも、アクシャイ・クマールをして演技中でもカメラOFFでも、現場をリーダーたらしめていたのかもしれない。

 

独り者で趣味もないラケーシュが女性たちの献策を容れていくところに、家父長制の色濃いインド社会へのメッセージを感じた。対照的に、妻として母として科学者・技術者としても活躍するタラが、夫や子ども達との距離を模索する姿には複雑な思いを抱かされる。だが、そこに救いもある。これまでのインド映画は、例えば『 シークレット・スーパースター 』や『 あなたの名前を呼べたなら 』のような、女性の耐える姿に美徳を見出すようなものが多かった。しかし本作ではタラは保守的・因習的な夫やイスラム教(いわゆる異教)に改宗する息子、門限を守らない娘たちと理解し、和解し合っていく。「仕事と家庭とどっちが大事なんだ?」という、問うてはいけない質問に、「両方ともに大事だ」という答えを行動で呈示していく。さらに、タラ以外の女性キャラクターたちも呼応。耐えるだけではなく、とある電車内のシーンでは男性モブキャラたちをボコボコにしていく。これは衝撃的だ。『 猟奇的な彼女 』でも、彼女が男性乗客をひっぱたくシーンがあったが、本作はそれを超えている。インドの新時代の幕開けを目の当たりしたように感じる。

 

探査機の打ち上げ前、そして打ち上げ後も、ベタな手法ではあるが、観客のハラハラドキドキを持続させてくれる。もちろん、歴史的に成功したミッションであることは分かっているが、それでも手に汗握ってしまうのは、それだけ感情移入させられているからだ。『 ドリーム 』のクライマックスでも聞こえてきたが、レーダーコンタクトの瞬間、信号受信の瞬間の安堵のため息が、劇場の数か所から漏れ伝わってきた。

 

「ハリウッド映画よりも少ない予算で我々は火星までたどり着いた」という演説に思わずニヤリ。予算も大切だが、もっと大切なのは創意工夫である。今後のインドの宇宙開発にエールを送りたくなると共に、インド映画界からエールを送られたように感じた。

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ネガティブ・サイド

歌と踊りが少な目である。というか、2シーンしかないし、短い。『 きっと、またあえる 』や『 スラムドッグ$ミリオネア 』のように、エンドクレジットで爆発させてくれるのかと思いきや、それもなし。世界的なマーケットを視野に入れているのは分かるが、インド映画の特徴はやはり絢爛豪華な歌と踊りにあるのだから、そこは忘れてほしくなかった。オペレーション・ルームでサリーを着て踊りまくるMOMの面々を是非とも観たかった。

 

ラケーシュが歌うキャラクターという点にもう少し一貫性が欲しかった。最終盤に思わず歓喜の歌でも歌うのかと思ったら、それもなし。そこが少し残念だった。

 

敵役のNASA帰りの鼻持ちならない男が司るプロジェクトの進行状況なども描写されていれば良かった。ミッション・マンガルの面々がそれを知って、奮励したり、あるいは落胆したりといった様子が見られれば、より人間ドラマの要素が生々しくなっただろう。

 

最後に、映画の中身とは関係ないが、どうしても言いたい。タイトルは普通に『 ミッション・マンガル 』で良いではないか。一体どこの馬の骨が何の権限をもってどういう根拠に基づいて、このようなアホな副題をつけているのか。「崖っぷち」の部分が耳障りだし、「火星打上げ」に至っては完全なる日本語ミスだ。正しくは「火星探査機打ち上げ」または「火星探査機打上げ」だろう。火星という惑星そのものを打ち上げてどうする?誰もこの誤用に気付かなかったというのか?そんな馬鹿な・・・

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総評

『 パッドマン 5億人の女性を救った男 』の主演アクシャイ・クマールとその監督のR・バールキが脚本で参加した本作は、インド映画の娯楽性とインド人の問題意識、そして現代インド社会を如実に反映している。サイエンスに関する知識も必要ない。カップルで観ても良し、家族で観ても良しの秀作である。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Those were the days.

 

「あの頃が懐かしい」の意。

Those were the days. There was no such thing as consumption tax.

あの頃は良かったなあ。消費税なんか無かったし。

Those were the days. Hardly anybody wore a mask.

あの頃が懐かしい。マスクを着けている人なんかほとんどいなかった。

自分バージョンを色々と英作文してみよう。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, アクシャイ・クマール, インド, シャルマン・ジョーシー, ビディヤ・バラン, ヒューマンドラマ, 歴史, 監督:ジャガン・シャクティ, 配給会社:アットエンタテインメントLeave a Comment on 『 ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画 』 -Rise up against all odds-

『 きっと、うまくいく 』 -あまりにもチープすぎて逆に感動する友情物語-

Posted on 2019年2月24日2019年12月23日 by cool-jupiter

きっと、うまくいく 80点
2019年2月14日 レンタルDVD鑑賞
出演:アーミル・カーン R・マーダバン シャルマン・ジョーシー カリーナ・カプール 
監督:ラージクマール・ヒラーニ

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アーミル・カーンと聞くと、パキスタン系英国人ボクサーのアミール・カーンを思い起こすのはJovianがボクシングファンだからだろうか。近所のTSUTAYAでずっと気になっていた作品で、最近のインド映画のクオリティの高さから、ついつい手にとってしまった。インド映画にはずれなし!そう力強く断言してしまいたくなるほどの良作であった。

 

あらすじ

インド最高峰の大学ICE。そこに入学する自由人にして発明家のランチョー(アーミル・カーン)、実はエンジニアよりも動物写真家になりたいファラン(R・マーダバン)、科学よりも信仰のラージュー(シャルマン・ジョーシー)の三馬鹿トリオのハチャメチャな大学生活を送っていた。しかし、卒業後にランチョーは行方をくらませる。かつての旧友らと共に、ファランとラージューはランチョーを探す旅に出る・・・

 

ポジティブ・サイド

Interval後の20分程度で、映画に慣れている人ならかなりの程度まで筋書きが読めてしまうだろう。しかし、これは脚本のレベルが低いからというわけではない。逆に、懇切丁寧に作り込まれた脚本を忠実にスクリーン上で再現しているからこそ可能なことだ。消えたランチョーを探し求める旅というロードムービー兼ミステリの要素が強いが、本作は何よりもヒューマンドラマである。そしてビルドゥングスロマンでもある。そして極めて映画的な技法が駆使されている。映画的な技法とは、映像を以って語らしめるということだ。登場人物たちの心情の変化や葛藤、人間的成長と根源的に変わっていないところが、台詞ではなく動き、立ち居振る舞い、口調などで伝えられる。人間の成長とは、時に環境の変化に適応して生き抜くことであったり、逆にそうした変化においても自分の核の部分だけは決して変えることなく自分のままであり続けることでもあるということを、本作は全編を通じて高らかに宣言する。原題の“3 idiots”=三馬鹿は、自分の心の中の大切なものを決して見失わない。それがもたらすカタルシスは圧巻である。

 

本作はまた学園ものとしての性格も有している。そして、悲しいかな、そこでは闘うべき相手、倒すべき敵として認識させられてしまう人間もいる。つまりはヴィールー学長である。しかし、彼は決して『 セント・オブ・ウーマン/夢の香り 』のトラスク校長のようなキャラクターではない。なぜなら、彼には過去があり、家族があり、信念があるからだ。三馬鹿と学長の対立は、時に『 ぼくたちと駐在さんの700日戦争 』のようなユーモラスなものでもあるが、その根底には教育に対する価値観の差違が存在する。これらの教育論的哲学に対する前振り、伏線もしっかりと回収されるところが素晴らしい。

 

キャラクターたちが学生であるということ単なる味付けに終わらないところも良い。日本映画でもハリウッド映画でも、結構な割合で「お前が学生であることは分かった。で、何を学んでいるんだ?」と言いたくなる作品がある。本作はそんな皮相的なキャラを扱う作品をせせら笑うかのように、工科大学の学生の活躍を存分に描いてくれる。魚の骨をいじくるだけの冒頭5分で学生としての属性を描くのを止めてしまった『 アヤメくんののんびり肉食日誌 』というキング・オブ・クソ映画を思い出してしまった。とにかく、本作に出てくる学生たちは生き生きとしている。それは、彼らが自分の本領を発揮しているからである。生きているという実感がそこにあるのである。彼らの ingenuity が一挙に爆発する終盤の事件は感動的である。

 

その感動をさらに上回るクライマックスは圧倒的ですらある。その映像美と構図、旧友との再会という点で『 ショーシャンクの空に 』とそっくりであるが、エンディングシーンの美しさにおいて、本作はショーシャンクに優るとも劣らない。インド映画の白眉にしてヒューマンドラマの一つの到達点である。

 

ネガティブ・サイド

途中で非常に悲惨な事件が発生する。もちろん、これが起きることで中盤の事件に深みが与えられるのだが、何か別の回避方法、または見せ方はなかったのだろうか。極端なことを言えば、ここで観るのを辞めてしまう人がいてもおかしくない。それぐらい衝撃的なことである。

 

もう一つだけ大きな弱点を挙げるならば、カリーナ・カプール演じるピアだろうか。彼女自身のキャラクターや演技力には文句は無い。それがインド的な価値観や社会制度なのだと言ってしまえばそれまでなのだろうが、あのようなクソ男と交際し、婚約するということにもう少しだけでも抵抗を見せてくれてもよかったのではないか。

 

総評

個人的に気になる点はいくつかあったものの、観る人によっては全く気にならない点であるだろう。しかし、本作のポジティブ要素は万人の胸に突き刺さるに違いないと確信できるものがある。それほどに優れた作品である。3時間近い大作であるが、レンタルや配信であれば、適宜にトイレ休憩も取れる。高校生以上であれば充分に理解できる内容だし、中年サラリーマンにとっては、若さの泉=fountain of youthたりうる、つまり草臥れてしまった時に見返してはパワーを補充できるような作品に仕上がっている。つまりは、万人に向けてお勧めできる傑作であるということである。

 

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