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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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タグ: エリナ・レーベンソン

『 エンジェル、見えない恋人 』 -ねっとりした男性視点を堪能できる作品-

Posted on 2018年10月31日2019年11月20日 by cool-jupiter

エンジェル、見えない恋人 60点
2018年10月27日 テアトル梅田にて鑑賞
出演:エリナ・レーベンソン フルール・ジフリエ マヤ・ドリー ハンナ・ブードロー
監督:ハリー・クレフェン

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フランス小説、特にミステリが一時期は好きだった。アメリカ産の小説は、人物紹介欄にたいてい15~20人の記載があるものだが、フランス産ミステリは少人数、5~8人ぐらいで、非常に読みやすい。なおかつ、ミステリなのか超常的なスリラーなのか見分けがつかないような作品を送り出す作家も多い。カトリーヌ・アルレーが好個の一例である。そんなフレンチ・テイストの興味深い作品(ベルギー産)が生み出された。原題は“Mon Ange”、My Angelの意である。

 

あらすじ

あるマジシャン夫婦がステージで消失マジックを行っていたのだが、夫の方が本当に消えてしまった・・・ その後、身籠っていた妻(エリナ・レーベンソン)は「目に見えない透明な男児」を出産し、Mon Angeと名付け、密かに育てる。エンジェルはすぐそばの家の盲目の少女マドレーヌ(ハンナ・ブードロー、マヤ・ドリー、フルール・ジフリエ)と友達になり、共に成長する。片方は目が見えず、片方は姿が見えない。それゆえに惹かれ合う二人。しかし、マドレーヌが目の手術を受けるために家を離れることに、そしてエンジェルの母とも別離の時が迫っていた・・・

 

ポジティブ・サイド

盲目の少女もしくは女性が、異形の、または異相の男を愛するというのは、古今東西で特に珍しいプロットではない。この系統の変化球では漫画『 HUNTER×HUNTER 』のコムギとメルエムが最近では記憶に新しい。しかし、片方が盲目、もう片方が透明というのは記憶にないし、少しググってみてもそれらしきプロットは見当たらなかった。これはアイデアの勝利であろう。透明人間というアイデアそれ自体はH・G・ウェルズの時代から存在するが、それをロマンティックに描き、なおかつ一定の成功を収めたところに本作の貢献がある。

 

まず、ヒロインのマドレーヌの幼少時代を演じたハンナ・ブードローと少女時代を演じたマヤ・ドリーが素晴らしい。盲目は人生最大の悲劇と言う人すらいるが、そのことが陰のあるキャラクターを生み出すのではなく、逆にエンジェルをエンパワーするようなエネルギーのあるキャラクターを生んでいる。実際にかくれんぼではマドレーヌは常にエンジェルを見つけてしまう。これがどれほどエンジェルの心に安心感を与えたことか。また、そうしたキャラクターの心情をむやみにナレーションにしてしまわないところもポイント高し。この監督は、観客を信頼している。その意気や良し。しかし、本作で最大の存在感を放つのは、エンジェルの母親である。ベルギーにも菩薩様がいるとすれば、このような女性(×じょせい× ○にょしょう)であろう。母性と辞書で引けば、挿絵はこの人だろうなと思わせるほどの説得力ある演技を披露してくれた。拍手である。

 

『 君の名前で僕を呼んで 』と同じく、人工的なBGMがほとんどなく、オーガニックな音や生活に根差した基調音で静かに満たされたシークエンスの連続は、主役二人の存在感を逆に大きく際立たせた。『 スターウォーズ/最後のジェダイ 』や『 君の名は 』のように全編が一種のミュージックビデオという作品もあるが、今作のような心地よい静謐さと適度な生活感をもたらすBGMも非常に良いものである。

 

ネガティブ・サイド

本作はPG12なのだが、実際はR15+ではなかろうか。エンジェルとマドレーヌのまぐわいは、確かに透明ならそうなるだろうなという部分をねっとりと描写する。だが、そこには美しさはあっても新しさは無い。こうした描写はインディ系、もしくは実験的なマイナー映画が既にやりつくした感がある。違いは前者は consensual で、後者は non-consensual だということ。

 

それと、観客への信頼の度が過ぎるというか、全編ほとんどがエンジェル目線で進むため、男性視点としては説得力を持つが、女性目線で見た時はどうなるのだろうか。エンジェルの顔や体は想像もしくは妄想で補ってくださいというのは、さすがに甘えすぎのような気もするが。『 何者 』では「どんな作品でもアイデア段階では傑作なんだ」という趣旨の台詞があったが、確かに顔が見えなければどんな男もイケメンの可能性は残る。しかし同時にオペラ座の怪人の可能性もあるわけだが。

 

エンジェルの父親は結局どこへ消えたのかという疑問や、エンジェルの存在が数年にも亘って施設に露見することがなかったのは何故かという疑問には、答えは一切呈示されない。その他、透明人間ものにおいてはクリシェと化した要素も一切が排除され、ややリアリティに欠ける世界観が構築されてしまっているのが残念なところである。

 

総評

デートムービーにちょうど良いだろう。しかし、高校生カップルには微妙かもしれない。大学生でもどうだろうか。逆に、付き合う前の仲の良い男女で鑑賞すべきかもしれない。エンジェルとマドレーヌの関係が友達から恋人へと発展し、難しい局面を乗り越え、思いっきりポジティブな解決策をひねり出して見事な円環を形作る過程を見るのは、カップルよりも友達向きである。20代独身サラリーマンは、違う部署のちょっと気になるあのコを誘ってみてはどうか。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, エリナ・レーベンソン, ハンナ・ブードロー, フルール・ジフリエ, ベルギー, マヤ・ドリー, ラブロマンス, 監督:ハリー・クレフェン, 配給会社:アルバトロス・フィルムLeave a Comment on 『 エンジェル、見えない恋人 』 -ねっとりした男性視点を堪能できる作品-

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