ジョン・ウィリアムズ:フルオーケストラコンサート
2025年1月13日 フェスティバルホールにて鑑賞
演奏:大阪交響楽団
指揮:山下一史
たまには映画以外の記事をば。たまたま大阪駅で見かけたジョン・ウィリアムズ御大のコンサート(本人の出演は無し)を見かけてチケットを購入。
スーパーマン・マーチ 「スーパーマン」より
言わずと知れたテーマ音楽。ジョン・ウィリアムズの代名詞でもある浮遊感とスーパーマンの力強さが融合した名曲。一発目の楽曲ということで、楽団自体の音があまり乗っていなかったかなという印象。
JFKのテーマ 「JFK」より
高校生の時に見てハマった作品。非常に速いテンポのドラムが印象的で、それを生で味わことで映画の情景が浮かび上がってきた。アメリカ社会の闇と、そこに切り込む人間の力強さの両方が表現された逸品。
ジョーズのテーマ 「ジョーズ」より
すべてのコンサートの中でこれが最も良かった。不穏なビルドアップをたった二音だけで描き切る感性と、そこからジョーズのもたらす惨劇を視覚化ならぬ聴覚化したようなオーケストラにつなげていくのは神品としか言えない。各種の弦楽器のテンポが恐ろしいほどに一致していた。
ネバーランドへの飛行 「フック」より
これはその昔にTSUTAYAで借りて観たっけ。ウィリアムズの得意とする浮遊感と疾走感のある曲で、目をつぶりながらネバーランドに飛んでいくところを思い浮かべた。
追憶 「シンドラーのリスト」より
一種のホラー映画、『 シンドラーのリスト 』からの名曲。この曲だけ何故かゲスト・ヴァイオリニストが来ていた。ヴァイオリンの物悲しい音色がユダヤ人の死を思わせ、さらに彼ら彼女らの持っていた大切な記憶の喪失までをも想起させる。全然知らない弾き手だったが、曲の持つメッセージを具体的に表現できる力の持ち主だった。
さゆりのテーマ 「SAYURI」より
『 SAYURI 』は恥ずかしながら未鑑賞。ただ、チャン・ツィーやミシェル・ヨーが出ているので近いうちに鑑賞してみようと思う。オーケストラではあるが、要所で鳴らされる笛やハープの音色は確かにオリエンタルだった(日本的とは感じなかったが)。
地上の冒険 「E.T.」より
確か三十数年前に2回だけ観たが、有名な自転車が飛び立つシーンからクライマックスのファンファーレ=宇宙船が空に航跡を残して消えていくシーンまで鮮明に思い起こすことができた。映画を観たことはなくても、サビのメロディーだけは知っているという若い世代は多いはず。
ジュラシック・パークのテーマ 「ジュラシック・パーク」より
公開当時、劇場でリアルタイムに鑑賞したことを今でも鮮明に覚えている。当時はバイオテクノロジーの進歩が急激に進んでいた時代で、生物の教科書に書かれていた内容が新聞記事によって修正されるような時代だった。静かな立ち上がりから、見上げるとそこには食事中のブロントサウルス、アップテンポへの転調=振り返れば恐竜たちの群れが走っていたり憩っていたりという映画の流れが再視覚化された。
小惑星の原野 「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲」より
ミレニアムファルコン号が小惑星帯でタイファイターを振り切るシーンの音楽。ハン・ソロの自信満々の無鉄砲さとC-3POの冷静な計算をしながらパニックになるというコントラストが、不安と混乱と力強さを同居させた曲調によくよく表現されていた。
レイア姫のテーマ 「スター・ウォーズ エピソードIV/新たなる希望」より
MCによるとジョン・ウィリアムズがコンサート用に書き下ろした作品で、映画では一切使われていないという。なるほど。例のレイア姫のメロディが通奏低音になっていた。どことなくキャリー・フィッシャーへのレクイエムにも聞こえた作品。
未知との遭遇から抜粋 「未知との遭遇」より
中学生ぐらいでVHSで観たが、あまり覚えていない。ただ、ター⤴ター⤴ター→ター⤵というメロディは印象に残っていた。それを生で聴くことができただけでも良かった。
ヘドウィグのテーマ/ハリーの不思議な世界 「ハリー・ポッターと賢者の石」より
USJでも聞こえることがある曲。イントロを聴くだけでフクロウが思い浮かび、曲がビルドアップしていくと今度はホグワーツが見えてくる。冒険を思わせる曲調だが、インディ・ジョーンズのそれとは違い、どこか幼さという子どもらしさを感じさせる。
レイダース・マーチ 「インディ・ジョーンズ/レイダース 失われたアーク《聖櫃》」より
インディ・ジョーンズといえばこの曲。この曲といえばインディ・ジョーンズ。シンプルなメロディながら、力強さに圧倒される。おそらくこの日、楽団が一番大きい音を出せていたのがこの曲。フィナーレの前に最高に盛り上げてくれた。
王座の間〜エンド・タイトル 「スター・ウォーズ」より
コロナ前にシンフォニーホールで尾高忠明指揮の武満徹とジョン・ウィリアムズ特集を聴いた時は、スター・ウォーズのメイン・タイトルで幕を開けた。今回は対照的にエンド・タイトルでフィナーレ。レイアに勲章を授与されるルーク、ハン・ソロ、チューバッカの絵が浮かび上がってきた。そして Binary Sunset のメロディから盛大なファンファーレにつながる様は、叙事詩の終わりと次なる叙事詩の始まりの予感そのもの。これもかなり音が来ていた。
アンコール:帝国のマーチ
アクの力強さの象徴ともいうべき曲で締めくくり。イントロでダースベイダーが目に浮かび、さらにストームトルーパーの軍団の行進、そしてスターデストロイヤーの艦隊までもが浮かんでくる。ジョーズに次ぐ出来栄えで、満足して家路に着くことができた。
その他の所感
MCの野村雅夫はそれなりに良い仕事をしていたが、「映画のサントラにオーケストラを書けるのはジョン・ウィリアムズぐらい」というのは、さすがに贔屓の引き倒しではなかっただろうか。まあ、その後に「イタリアにエンニオ・モリコーネもいますけど」と付け加えたのは自身がイタリアにルーツを持つからか。他にもダニー・エルフマンやハンス・ジマー、ジェームズ・ホーナーなどもオーケストラで映画音楽を作っているし、日本でも久石譲やすぎやまこういち、植松伸夫、小林啓樹などがいるではないか。ただし、オーケストラ≒クラシック音楽で、現代では失われつつあるものであるというのは、『 素晴らしき映画音楽たち 』でヘイター・ペレイラが指摘していたことでもある、とシネフィルらしいことも言ってみる。まあ、オーケストラはジャズと同じで、決して死なないジャンルであると思う。
映画のサントラには映画そのものよりも有名なものがいくつもある。『 炎のランナー 』のテーマや、日本だと『 ゴジラ 』のテーマは、おそらく映画を観たことがない人でも、聴いたことがある、あるいは聞けば認識できるはず。映画を観るのは一仕事だが、音楽を聴くのはそれほどでもない。映画そのものは消費しづらいという人も、映画サントラなら消費可能かもしれない。そうした人が100人いれば、20人ぐらいは映画を実際に観てくれるかもしれない。
帰宅後、勢いに乗って3月22日の兵庫県立芸術文化センターのジブリコンサートのチケットも購入してしまった。どちらも映画のチケットよりかなり高くつくが、生には生の良さがあると確認できたし、今後も定期的にこうしたコンサートには行ってみたいなと感じた。またジブリコンサートの感想も書いてみたいと思う。